2021年のアメリカ連邦議事堂の暴動や、新型コロナワクチン反対運動に影響を与えているとされている、陰謀論「Qアノン」。
この陰謀論の背後にいる人物を突き止める手がかりとなる調査結果が、発表された。
ニューヨークタイムズによると、ヨーロッパの言語学専門家たちがコンピューターや機械学習を使い、Qアノンを作ったと見られる人物を突き止めた。
研究者たちがたどりついた2人の人物
陰謀論Qアノンは、2017年10月に「Q」と名乗る人物がインターネット掲示板「4chan」に投稿を始めたことから始まった。
この投稿を元に、「ジョン・F. ケネディー・ジュニアは死んでいない」「ドナルド・トランプ氏は、児童売春組織を運営する『闇の政府』と闘っている」といった、根拠のない陰謀論が広がってきた。
陰謀論の背後にいるQは一体誰なのか。今回調査をしたのは、スイスのスタートアップ「オルフアナリティクス(OrphAnalytics)」のクロード・アラン・ルートゥン氏とライオネル・ポサーズ氏のチーム、そしてフランスのコンピューター言語学者フロリアン・カフィエロ氏とジーン-バティステ・キャンプス氏のチームだ。
2チームの科学者たちは、ソフトウェアやAIを使って、Qの投稿の文字列や、文章の書き方などを分析した。
その結果、Qアノンの背景にいるのは、南アフリカのソフトウェア開発者ポール・ファーバー氏と、現在アリゾナ州で連邦議会選挙に立候補しているロン・ワトキンス氏だと結論づけた。
Qの投稿は、初めは「4chan」で行われていたが、その後、別の掲示板「8chan(現在は8kun)」に移った。
研究者チームは、ファーバー氏がQの投稿を始め、その後はファーバー氏とワトキンス氏の両方になり、8chanに移行した後は最終的にワトキンス氏のみが書き込みをするようになったと考えている。
2チームはそれぞれ別の方法で調査し、両者ともにファーバー氏とワトキンス氏だという結論にたどり着いた。分析結果の正確性は92%以上だとしている。
ファーバー氏とワトキンス氏はどんな人物なのか
ファーバー氏は、2017年に最初にQアノンの信奉者になった1人で、これまでもQの背後にいる人物ではないかと見られてきた。
ファーバー氏はニューヨークタイムズに「Qを作ったのは自分ではない」と否定している。そしてQは大きな影響力があるので「我々は、彼のように語るようになる」と述べている。
ワトキンス氏も、ニューヨークタイムズに「私はQではない」と否定している。
しかし、以前「8kun」の管理者だったワトキンス氏もまた、Qではないかと言われてきた。
Qアノンを追う2021年のHBOのドキュメンタリー『Qアノンの正体 / Q: INTO THE STORM』では、ワトキンス氏が自分がQだとほのめかすような場面もある。
ドキュメンタリーの取材で、ワトキンス氏は「Qと話すことがある」と主張し、不正選挙についての嘘を広めたと明かした。
そして「これは基本的には、3年間の諜報トレーニングです。普通の人にどうやって諜報活動をするのか教えます」と説明した後、「それが、私が以前に匿名でやっていたことです。だけどQとしてはやっていません」と述べた。
「Qとしてはやっていない」というのは、Qだと告白したのも同じと受け止められる。しかしワトキンス氏はその後に「私はQではありません」と取り繕うように否定した。
<「Qとしてはやっていない」と述べるワトキンス氏の動画を紹介したCNNの番組>
調査を実施した研究者たちは「Qの正体を明らかにすることが、陰謀論を信じる人たちを呪縛から解き放つ助けになって欲しい」とニューヨークタイムズに述べている。
Qアノンはアメリカだけではなく世界中に広がっており、陰謀論を信じた人たちが、「新型コロナは嘘」「闇の政府による陰謀だ」と主張して、ワクチン接種やマスク着用を拒否するなどの問題が起きている。
ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆しました。