NHKの大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』の喫煙シーンが議論を呼んでいる。
公益社団法人「受動喫煙撲滅機構」は、NHKに2月18日付で抗議した申し入れ書の内容を、公式サイトで公開した。
『いだてん』は、明治時代から昭和30年代が舞台。日本で初めてオリンピックに参加し金栗四三が、後半は日本に初めてオリンピックを招致した田畑政治を通して、日本のスポーツ史をダイナミックに描く。
しかし、時代考証の結果として、ドラマ中に喫煙シーンが多くみられることに撲滅機構は抗議した。「受動喫煙シーンがしばしば見受けられ、みな観るたびに閉口し、悲しんでいます」とした上で、「受動喫煙のシーンは、今後絶対に出さないでください」とNHKに訴えた。
近年のテレビ・映画では、過去の時代の再現でも職業・身体・民族等への差別的な言葉を使用していないことを例に挙げ、喫煙シーンがなくてもドラマは成立すると主張。「時代に逆行し受動喫煙被害の容認を助長する」と断じた。
ネット上では今回の申し入れに対して「そろそろ映画、ドラマ、アニメなどから不適切な喫煙シーンを排除してもいい頃だ」と賛同する声もある一方で「歴史をねじまげることになる」「時代背景の描写に必要な描写を、時代劇から削ってはならない」と反発する声も挙がっている。
撲滅機構がNHKあてに送った申し入れ書の全文は以下の通り。
■『いだてん』受動喫煙のシーンに関する申し入れ
謹啓 雨水の候 ご清栄のこととお慶び申し上げます。
当機構は、「 公益社団法人 受動喫煙撲滅機構 」と申します。団体名称にあらわした活動を行っている組織です。
貴局の大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』は、当機構職員や会員の多くが楽しみに視聴しております。
しかし、同作品には、受動喫煙シーンがしばしば見受けられ、みな観るたびに閉口し、悲しんでいます。
近年のテレビ・映画などにおいては、過去の時代の再現においても、当時では日常的であったが、現代では、職業・身体・民族等への差別などと受けとられる語句・表現は、使用されなくなり、別の表現に置き換えられるようになっています(例:「目が不自由」「ホームレス」など、当時はなかった表現にまで)。これは過去作品の再放送においてもその場面の音声を削除するなど、かなり徹底された自主規制がなされております。
さて、受動喫煙は過年にはどこででも行なわれていたところですが(例:民放『徹子の部屋』等では’80年頃までは灰皿が置かれ、出演者が対談中に喫煙していました)、今は国会で受動喫煙防止法が成立したように、喫煙はしても、人にタバコの煙を吸わせてはいけないということが、世界中の常識です。
そんな中、わざわざ受動喫煙のシーンを、公共の放送、未成年者も視聴する番組において、放映するのはなぜでしょうか。こうしたことは、受動喫煙を世間に容認させることにもなります。未成年者や禁煙治療中の人たちへ悪影響を与え、何よりも出演者・スタッフの受動喫煙被害が紛れもなく行なわれているのです。
もし、“時代を表すため”という理由でしたら、前述の差別表現や、当時は多くあった街のゴミ・犬の糞・立小便、はてはハラスメントまで表現しなくては、釣り合いが取れません。しかし、それらの表現がなくても、ドラマは成立するはずです。
貴局のドラマ『バカボンのパパよりバカなパパ』においては、ヘビースモーカーであった主人公の漫画家や、編集部、バーの場面においても、喫煙シーンは全くありませんでした。(参考:別紙「一般社団法人 日本禁煙学会」による同作品の表彰)。
全国の受動喫煙被害を撲滅する活動を行う当機構におきましては、時代に逆行し受動喫煙被害の容認を助長する恐れのある貴局同作品の表現は看過するわけにはいきませんので、以下に要望を提示させていただきます。
要望
一、『いだてん』において、受動喫煙のシーンは、今後絶対に出さないでください。
二、『いだてん』で、受動喫煙場面が放映されたことについて、番組テロップなどで謝罪をしてください。
※ご回答は本文書到着した後、1週間以内にお願いします。
※ご回答内容は、公開の予定です。
公益社団法人 受動喫煙撲滅機構 理事長 田中 潤
編集局 内藤 謙一