冬を迎えた北半球の多くの地域で、インフルエンザや新型コロナ、RSウイルスなどの感染症が広がっている。
そんな中、中国では呼吸器疾患の一つ、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症が急増しつつある。
ヒトメタニューモウイルス感染症は、咳や鼻水、喉の痛み、発熱などの症状をともなう。
地元メディアによると、現在中国では14歳以下の子どもたちの間でhMPVの感染が広がっており、インドやマレーシアなどの地域でも、感染例が報告されている。
hMPVは、インフルエンザなどに比べてあまり知られていないものの、何世紀も前から存在が確認され、世界各地で感染例が報告されているウイルスだ。
米疾病予防管理センター(CDC)が公表した最新データを見ると、アメリカでのhMPVの感染者数は12月の休暇シーズン後に若干増加したものの、全体的な感染者数は少なく、例年と比べて大きな変化はない。
ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センターの感染症専門家であるアメシュ・アダラジャ博士によると、hMPVは呼吸器感染症が流行するシーズンに毎年発生している。
hMPVはどのようにして感染するのだろうか。また感染した場合はどうすればいいのだろうか。
hMPV(人間メタニューモウイルス)とは
アダラジャ博士によると、hMPVは一般的な風邪を引き起こすウイルスの一つだ。
風邪をひくと鼻づまりや息切れなどの症状が現れるが、重症化して気管支炎や肺炎などの合併症を発症する場合もある。
初めてhMPVに感染した子どもや、高齢者、免疫系が弱っている人は、重症化しやすいという。
一方で、アダラジャ博士によると、ほとんどの人は5歳までにhMPVに感染して、重症化を避けるための免疫を持っている。
イェール大学医学部の感染症専門家リチャード・マーティネロ博士によると、ヒトメタニューモウイルス感染症の症状はインフルエンザやCOVIDに比べ、通常は軽症だ。
また、他の一般的な呼吸器疾患と非常によく似ており、症状だけで診断するのが難しい場合があるという。
アダラジャ博士は「hMPVには、他の多くの呼吸器系ウイルスと区別できるような特徴的な症状がない」とハフポストUS版の取材に説明した。
感染経路は?
他の多くの呼吸器系ウイルスと同様、hMPVは感染者の咳やくしゃみなどで、空気中に放出される飛沫を介して広がる。
また、マーティネロ博士によると、キッチンカウンターやドアノブなど、ウイルスが付着した物の表面に触れることでも感染する場合がある。hMPVは耐久性があり、物の表面で数時間生存できるという。
感染した場合の潜伏期間(ウイルスが体内に侵入してから症状が現れるまでの期間)は通常3〜6日間だ。
CDCによると、hMPVは一年を通して感染が確認されているものの、冬から春の初めにかけて増加する傾向がある。
アダラジャ博士は「現在、中国でhMPV感染症が増加しているのは、通常の動きであり、アメリカにとっては特に懸念すべきことではないと思われます」と述べた。
感染した場合はどうすればいい?
現在のところ、hMPVに効く薬や予防のためのワクチンはない。
しかしhMPV感染症はほとんどの場合、自宅で安静にしていれば、数日以内に自然に症状は改善する。そのため、ほとんどの医師はhMPVの検査を日常的に行わず、重症の場合にのみウイルス検査を行う。
数日経っても症状が改善しない、もしくは悪化する場合は、医療機関を受診しよう。入院して、酸素吸入や点滴、ステロイドなどを使った治療が必要な場合もある。
それ以外は十分に休養し、脱水症状を防ぐためにたくさんの水分を摂取して、鎮痛剤や咳止めなどの市販薬を服用することが一般的な回復方法だ。
クリーブランドクリニックはhMPVの予防や感染対策として、石鹸を使ってよく手を洗いアルコール消毒をする、マスクを着用する、食べ物や食器を他人とシェアしないなどの方法を奨励している。
ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆しました。