ハフポストも、おうちでLGBTQ“パレード”を開催。100万視聴超えに、ライブ配信の裏方だった私も驚いた。

東京レインボープライドのオンラインイベントを盛り上げようと、ハフポストも番組を制作。みんなでパレードを続けたら、初めての景色が見えた。

2020年4月26日。この日は本来であれば、日本最大級のLGBTQイベント「東京レインボープライド(TRP)」が代々木公園で開催される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響でリアルイベントは中止に。オンラインで開催されることになりました。 

そこでハフポスト日本版は、“パレード”を一緒に盛り上げようと、昨年からTRPに協賛し、企業としてLGBTQの権利獲得を目指して活動するセールスフォースと一緒にライブ番組を配信。配信2日目で100万視聴を超えました。

もちろんリアルな場にしかない魅力はあります。それでも、こうしたつらい状況の中、様々な立場の4人のゲストがオンラインで集まり、たくさんの視聴者のみなさんと一緒に「私たちにできること」を話し合うことができました。

私自身も今回の企画を通して、LGBTQが直面する困難などを改めて考え、さらに企業がアクションをすることの大切さを学びました。その気づきをシェアしたいと思います。

HUFFPOST JAPAN

出演者

松岡宗嗣さん(一般社団法人fair代表理事) 

辻愛沙子さん(arca CEO)

岡林薫さん(Salesforce LGBTQコミュニティ「Outforce」リーダー)

白水大三郎さん(Salesforce LGBTQコミュニティ「Outforce」メンバー)

セールスフォースの社内コミュニティ「Outforce」は、LGBTQの平等や権利獲得を目指して社員400人で活動するグループです。社内向けには、理解を深めアライを増やすイベントを開催。社外でもNPOやNGOへのボランティアを通して、LGBTQが生きやすい社会づくりを目指した取り組みをしています。

世界で行われる「プライド」って?その起源は...

番組が目指すのは、「性的マイノリティの存在を祝福する」というレインボープライドの目的を果たしつつ、誰もが自分らしく生きられる社会にするために「個人」や「企業」は何ができるのか、みんなで話し合うきっかけを作ること。

まずは“パレード”初参加のみなさんにも「プライド」について知ってもらうべく、松岡さんから世界と日本のプライドを紹介してもらいました。

世界で行われる「プライド・パレード」のきっかけになったとも言われるのは、1969年にニューヨークのゲイバーで起きた事件。警察による執拗な嫌がらせが横行する中、同性愛者やトランスジェンダーの当事者が反抗して起きた暴動で、「ストーンウォール事件」と呼ばれています。

その翌年から、ニューヨークではLGBTQの存在を誇り、祝福するデモ行進「プライド・パレード」がスタート。日本でも1994年に初開催されました。途中、開催できなかった年があったり、名称を変えたりしながらも規模を年々拡大し、昨年は総動員数20万人超、パレードへの参加者は1万人という、非常に大きなイベントになったのです。 

東京はもちろん、世界のプライドに参加経験のある松岡さんは、「参加者の笑顔やレインボーカラーがあふれる、華やかさが特徴の一つ」と振り返ります。

LGBTQを「知る」

続くコーナーでは、「そもそもLGBTQって?」という基本的な知識について、松岡さんから説明がありました。

「性的指向」(Sexual Orientation)と「性自認」(Gender Identity)の頭文字をとった「SOGI(ソジ)」という言葉も、LGBTQを理解する上で、ぜひ知っておきたい言葉です。

オンラインの特徴を生かし、番組では画面に資料をたくさん映し出しました。こうして数字でみると、ぐっと身近に感じます。「ただ、何人以上いたら支援が必要という話ではなく、たとえ一人であったとしても、平等に生きられる社会を作っていくことが大切だと思います」と松岡さん。

LGBTQの当事者が就職活動時に直面する問題も多くあります。辻さんは「無意識の差別、偏見、ステレオタイプがまだまだ存在する。こうした問題を企業も個人も、一人ひとりが認識し、変えていくアクションを起こすことが必要だと改めて感じました」と話します。

こうした状況を変えていくためにも、LGBTQの“仲間”であり、一緒にアクションをする「アライ」の存在を広めていくことが大切です。アライとは、英語の「Alliance」(アライアンス:同盟、連合などの意)と語源を同じくする言葉。松岡さんは「“少数派”であるマイノリティにとって、仲間が増え、共に声を上げることはとても大切」と話します。「さらにアライは、LGBTQだけでなく人種や国籍、言語など、様々な“違い”に対して使える概念ではないかと思います」。

続くコーナーでは、アライとして活動する白水さんが、そのきっかけを話してくれました。

「セールスフォースに入社して、初めてゲイの友達ができました。彼と話す中で、自分の心に無意識の“壁”があることに気付いた。アライになることは、その壁を取り除くこと。自分が変わるためのアクションなのかなと思っています」。

白水さんは「誰もが、いつでもアライになれる」と話し、同社が掲げる「アライへのステップ」を紹介。

「まずは興味を持って、尋ねてみること。バイアスを通して見たり聞いたりしまうことはどうしてもあるけれど、それを自分で素直に受け入れ、どうしてだろう?“普通”ってなんだろう?と、疑問を持つことが大切なのかなと思います」。

尋ね、共感し、得た気づきを自分の周りに向けて発信すること。それが、アライを増やし、LGBTQが「見えていない」状況を解消することにもつながっていきます。松岡さんは「傷つける発言をしてしまった時に、指摘してもらえたり、ちゃんと謝れたりする信頼関係があることの方が大切。一人ひとりの関係性においては、LGBTQかどうかではなく、人と人の関係だということを忘れないで欲しいです」と話しました。 

視聴者から寄せられた「アライへの一歩、LGBTQを理解するためにおすすめの本は?」という質問には、ゲストからたくさんの漫画や映画が紹介されました。こちらにまとめているので、ぜひチェックしてみてください。

社会を変えるために、ビジネスからできること

最後のコーナーは、セールスフォースの取り組みから、「社会を変えるため、企業ができること」について。同社は社内、そして社会での「平等」を実現するために、Outforceを初めとする社員グループがイベントを開催したり、社外のコミュニティに向けてボランティア活動を行うなど、様々な取り組みをしています。企業がそうした姿勢を示すことは、従業員の働きがい、誇りにもつながっていると言います。

岡林さんが紹介したのは、同社がインディアナ州からのビジネスボイコットを宣言した事例。

同州では、信教の自由を理由に、事業者が同性愛者へのサービス提供を拒否することを求めた法案が2015年に可決。その際、同社の創業者マーク・ベニオフ氏は「可決するのであれば、この州におけるビジネスから撤退します」と宣言しました。他の企業も賛同し、結果的に法案採決が中止されることになりました。 

「個人で進めていくアクションと並行して、企業が持つインパクトも社会を変える上では非常に大切。同時に、こうした取り組みをするトップを見ていると、従業員は安心して働くことができると思います」と話します。

辻さんはビジネスに携わる立場から、「企業として、経済合理性という視点で倫理と利益を天秤にかけることも多いが、その2つは相反するものではなくて両立できるものなんだと、セールスフォースさんの事例を見ていて思いました。企業はリソースも豊富で、大きなインパクトを与えることができる。個人やNPO、NGOと手を組んで、社会を変えていく責任がある」とまとめました。

◇◇◇

新型コロナウイルスと闘う今、社会は様々な側面で「変化」の時を迎えています。全ての人が自分らしく生きられる社会って、何だろう? そのためには、何ができる?

関心を持ったその瞬間が、アライへの一歩。みなさんも、社会をより良い方向に変えていくためのアクションについて、ぜひ発信してみてください。

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