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2024年からは、ハフポスト日本版に日頃から親しんでくださる読者・ユーザーの皆さんとつながり、日頃感じていること、様々なご意見や今後の発信への要望をお聞きしたい。そんな思いから、ハフポスト日本版では「ハフポストファンコミュニティ」のメンバーの募集を開始しました。
登録していただいた方の中から、希望される方には、今注目すべき最新の社会課題・トレンドを知る「ハフポスト・ミーティング」や、「メンバー限定取材会」、スポンサード企業提供の「商品モニター・体験会」など、各種のクローズドな会にご参加いただく機会の提供を予定しています。

1月29日(水)に開催された第4回「ハフポスト・ミーティング」では、シリーズ報道『被害者と遺族の「本当」』をもとに、ハフポスト日本版の佐藤雄記者が被害者遺族の人権と報道について、取材報告をしました。後半では参加者からの意見も交え、語り合いました。
「抜き抜かれ」や被害者遺族への差別を目の当たりにして
佐藤記者はシリーズ報道「被害者と遺族の『本当』」を通し、目指しているのは「被害者や遺族も生きやすい社会」だと説明。企画のきっかけについて、一言では表せないのですが…と前置きした上で、「前職での京都アニメーション放火殺人事件の取材が大きかった」と明かしました。
京アニ事件では改めて、実名報道や遺族取材の是非が問われました。そもそもなぜ、取材や報道を拒む遺族が多いのでしょうか。
佐藤記者は、遺族取材や実名報道によって「本人にも非がある」と偏見の目に晒されて差別されたり、誹謗中傷の対象になったりすることが少なくないと指摘。「遺族が営むお店に人が来なくなり、廃業せざるを得なかったり、職場や学校を辞めざるを得なかったりというケースも少なくありません」と説明しました。
また、佐藤記者は自身が被害者となった別の事件について触れ、10代の頃にメディアスクラムに遭った経験を明かしました。その上で、「被害者は報道によってどのような被害を受け、何を望んでいるのか」という当事者の声を踏まえた検証がされてこなかったという実情、報道のあり方への大きな課題を感じていると説明しました。
遺族が望まない取材や実名報道がなくならない大きな理由のひとつは、新聞社やテレビ局の間で行われている「抜き抜かれ」の報道合戦です。
佐藤記者は2019〜2021年、前職の新聞記者時代に京都アニメーション放火殺人事件の取材を担当しました。当時の報道の実態について「実名報道や遺族取材に理解を示し、報道の力を信じて取材を受けてくれた遺族の方々が、勝手に住所を載せられたり、24時間365時間、アポなしで記者が取材に押しかけたり、数多くの報道被害に遭っていた」、「すでに原稿を書くには十分な取材を受けてもらった関係者から『もう取材は勘弁してほしい』と弁護士づてに連絡があったにも関わらず、新聞社の上層部が記者を無理やり取材に行かせようとするという状況が、まだまだ多くあった」と振り返りました。

司会を務めた相本啓太記者も、自身が新聞社で事件・事故を担当していた時のことについて、「心を無にして、上司に言われるがまま不適切な取材に赴いていたことがあります」と、自省を込めて振り返りました。
批判が集まったことなどを受け、日本新聞協会は2022年に「実名報道に関する考え方」を公表しています。この声明では「インターネットの普及や、それに伴う誹謗中傷により、遺族が匿名を希望するケースが増えている」と明言した上で「個人が尊重され、『実名で語ることができる社会』を理想にしたい」「是正に役立つ報道に努めています」と記していますが、被害者遺族が直面する誹謗中傷などの問題の改善策は具体的には示されていないといいます。
また、その他の課題として佐藤記者は「第三者による検証がされず、市民にも知られてこなかったことがあると思います」と見解を述べ、被害者遺族の報道について、人権を踏まえた研究が進んでおらず、業界内の人権意識にも課題があることについて言及。この連載を通じて、遺族取材に反対する遺族、現場の記者、精神科医、弁護士など、さまざまな立場の人の意見を反映した、遺族への取材や報道に関する「報道ガイドライン」の策定を目指すと話しました。
最後に「遺族の方々の中には、共感したニュースや記事があっても、個人を特定されるなどの二次被害のリスクがあり、SNSなどでシェアできない方々が多くいらっしゃいます。今日来てくださった皆さんをはじめ、共感していただけたら情報を拡散したり、声を上げたりといったアクションを起こしていただけたら嬉しいです」と話し、取材報告を締め括りました。
机上の空論すら話せない今を、報道はどう変えていくのか
イベント後半のフリートークでは、高校生や広告代理店勤務の会社員、元報道記者など、さまざまなバックグラウンドを持つ読者同士が言葉を交わしました。

参加者からは「知り合いの記者が、今日お話にあったような『抜き抜かれ』などが原因で、一番つらかった取材は被害者遺族への取材だったと話していたのを思い出しました」「相本さんの書かれた記事のように、まずはマスコミが報道のよくない点を認めるところから、議論を進めていくことが求められると感じました」など、多角的な感想や意見が共有されました。
海外の大学でジャーナリズムを専攻していたという参加者は「そもそもジャーナリズムを専門に学べる大学がほとんどないことも課題だと感じます。海外でも学問と社会の間に溝はまだまだありますが『理想』の解像度を上げるための机上の空論すらなかなか話せません。今回のような議論に参加し、正直『懐かしい』と思ってしまった自分がいます」と気持ちを吐露しました。
また、日本国内に国家人権機関が存在しないことも話題に上がり「生存者バイアスで心を殺して頑張る人が出世しやすい現状にメスを入れるには、第三者が入る仕組みづくりが必要だろうなと思います」「被害を受けた際の相談先がないが故に『結局誰に言えばいいの?』とあやふやなまま傷だけが残るので、ガイドラインは必須だと思います」と同企画に期待の声を送ってくださる参加者もいました。
フリートークの最後に、佐藤記者は「私自身、被害後に少しずつ前を向けるようになったのは、僕を被害者というステレオタイプに当てはめようとしなかった友人の存在があったからです。 昨日何を食べたとか、仕事の愚痴を聞くのと同じように、被害者として感じている痛みに耳を傾けてくれました。この企画の裏テーマとして、この友人のような人を増やしたいという思いもあります。皆さんの周りに被害者の方がいたら、今の話を思い出してもらえたら嬉しいです」と話しました。
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第5回となるハフポストミーティングを、春ごろに開催予定です。
テーマや開催日時については、今後ハフポスト日本版やSNSで公開予定です。
参加者の皆さんと、「ハフポスト日本版のコンテンツに求めること」などについても、意見交換したいと考えています。
【「ハフポストファンコミュニティ」のメンバー登録をされる方はこちら⬇︎】
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ハフポストファンコミュニティのメンバー登録をしていただいた方に、第5回以降の「ハフポスト・ファンミーティング」の参加募集の案内を後日お送りいたします。
皆さまからの「ハフポストファンコミュニティ」のメンバー登録をお待ちしています!