ハフポスト・グローバルサミット報告 ハフィントンポストは「世界規模でアップデート」する

私たちは2020年までに、既存の15カ国を含む50カ国にハフポストをつくり、数千万人の新規読者を獲得したいと考えています。

マドリード -- オラ!私は今、ハフポスト・グローバルサミット真っ最中のマドリードでこの記事を書いています。

ここには、世界中から編集やビジネスのシニアスタッフが集まっています。ハフポストを待ち受けているワクワクするような道のりや、私たちの国際的な拡大に関する次の展開を話し合う、生産的で活気に満ちた数日間です。

ハフポストのメンバー全員が、サミット開始までに揃いました。サミットはスペインのメディア会社PRISAの代表ファン・ルイス・セブリアンとホセ・ルイス・サインツの主催で行われています。PRISAはEL Huffington Post(ハフィントンポストスペイン版)の運営パートナー、エル・パイスを経営している会社です。

わずか数年で、ハフポストは長い道のりを歩んできました。発表する言語は1言語から10言語に増加、アメリカを拠点としていたものが、15のマーケットで世界に向けて発信するメディア会社となり、2020年までに50カ国・地域という私たちの目標からほぼ3分の1のところまで到達しました。

各国からの読者は今やアメリカの読者数を超え、52%はアメリカ国外からアクセスしていただいております。これらは、私たちが最初の国際版であるハフポスト・カナダ版を2011年に立ち上げたときには余りにも野心的過ぎるように思えた目標でした。

私たちは上記のような世界的成長を「情報を発信し、 刺激をもたらし、エンターテイメントを提供して人を力づける」という、ハフポストの核をなすDNAに忠実であり続けることによって実現してきました。新しい市場ごとに最適なハフポストを作ることで、これを達成してきたのです。ハフポストの情報網が世界規模におよぶことで、私たちは「世界中に対話を生む」というユニークな能力を得ることができました。オバマ大統領のインタビュー、ISISの母親たちについてのハフポスト・ハイラインの印象的な記事、先のワールドカップやギリシャの選挙戦での報道などは、ハフポスト・ニュースルームの活動のほんの一例です。

パリで最近起きた痛ましいあの事件で、私たちは期せずして、ハフポスト全15カ国版で翻訳・掲載されました。各国版のニュースルーム間でリアルタイムの共同作業を行えるという実力を示すことになりました。150以上のニュースが翻訳または翻案され、多くの動画が編集者によって作られました。

事件の目撃者情報や、悲劇が起きたその後に人々がどう対処しているかを語るパリ市民の言葉はもちろん、私たちはハフポスト・フランス版のエディトリアルディレクター、アン・シンクレアの責任編集によりパリ現地の声を特集しました。彼女の記事は、全15カ国版で翻訳・掲載されました。

またハフポストでは意見を共有するために、イタリア版エディトリアルディレクターのルチア・アヌンツィアータ、グローバル・エディトリアルディレクターのハワード・ファインマンなど世界各国からの声を紹介しました。彼らによるこの政治的・文化的事件についての大局的見地に立った解説もまた、各国版で翻訳されつつあります。

ハフポストが世界的に取り組んでいる「What's Working」という企画は、「ある事件に際して人々がどのように立ち上がったか」「大小を問わず、挑戦に取り組むためにどう工夫をしたか」など、それまで余り報道がされていないストーリーに焦点を当てるという意図を持つものです。

本企画の一部として、理不尽な悲劇の余波の中で生まれた立ち直る力と思いやり、すなわち、襲撃のあいだ保護が必要な人をかくまうパリ市民についての報道(#PorteOuverte)や、親が子供の「感情を引き出す」手助けをする心あたたまる光景に光を当てました。

各国版がそれぞれ独自にWhat's Workingを制作していますが、ハフポスト・インド版は女性の権利職業教育に関する記事を紹介し、ギリシャ版は緊縮経済政治不安に直面するギリシャ人が、それらを素晴らしい方法で耐え抜いてきたことを伝えようと力を注いでいます(ハフポスト・ギリシャ版は1周年を迎えたばかりで既に2回の選挙と国民投票を報道しました!)。

また、ハフポスト・ドイツ版はシリア難民の受け入れについて議論する場となりました。ほかにも、ドイツ版編集者の1人は文章と動画でリアルタイムのストーリーを伝えながらセルビア国境を歩いて渡ったりもしたのです。

ハフポスト・イギリス版は、私たちがライフスタイルと健康のコンテンツを世界的に拡大する中で、主導的な役割を担ってきました。メンタルヘルスの問題やテクノロジーからの断絶という問題について特集し、最近では「モダンな男たちを作る」という特集を連載中です。この特集は、それぞれのテーマを一つに繋いだものになっています。

イギリス版はまた、3つの「彼方」シリーズを通じて、大きな出来事を報道する独自の方法を培ってきました。「信仰の彼方」、「投票の彼方」、「爆撃の彼方」の3つの「彼方」シリーズは、動画などのマルチメディア展開やインフォグラフィックスなどを使用することで、より奥行きのある報道を実現しました。ただもちろん、ハフポストDNAのもう一方では、シリアスでない報道も心がけていました。そう、1億500万回に及ぶ視聴回数を獲得した、ハフポスト・イギリス版のフェイスブックページで今年一番人気だった動画は、「人間の使用人を訓練する猫たち」であったように。

現在ハフポスト・カナダ版は同国内でトップのニュースサイトです。選挙の夜には、カナダ版トップページととフェイスブックで同時にライブストリーム(動画中継)を使った選挙報道を流すという、クリエイティブで新しい手法が試行されました。トロントにいるハフポストのスタッフは、カナダの選挙とトルドー候補の勝利が世界にもたらす意味について、政治部の編集者ライアン・マロニーが撮影した動画などを使用しつつ国際的に報道を推進しました。そしてつい先週、ハフポスト・カナダ版はアルティ・パテル記者のメンタルヘルス特集で2015年カナダ・オンライン出版賞を受賞したのです。

ハフポスト・スペイン版はスペイン国内の報道だけでなく、ハッシュタグ#Mieuropaを使ってヨーロッパのあらゆる報道の中心となっています。この報道の一部には、スペイン版エディトリアルディレクターのモントセラート・ドミンゲズによる欧州議会のマルティン・シュルツ議長に対する特別インタビューも含まれています。

「リーダー達に適切な責任追求を行う」というメディアの役割を実現した例として私が気に入っているのは、ハフポスト・イタリア版の報道です。春の選挙期間中、マフィアとの繋がりが疑われている全政治家の名前をハフポストが公表したことで、有権者は候補者の「クリーンリスト」の中から、投票すべき人を選べたのです。また過去には、国内外で社会問題に取り組む機関とのパートナーシップ・ネットワークを作り出した功績も、イタリア版は有しています。

今年、ハフポスト・マグレブ版はマグレブ地方の辺境地域に暮らす女性たちの生活に注目した素晴らしい特集を立ち上げ、ハフポスト・アラブ版はアラブ世界の報道で、他メディアでは殆ど知ることができないストーリーにスポットライトを当ててきました。その中には、テロリスト襲撃後の廃墟の中で演奏するイラク人チェリストについての物語や、シリアの難民キャンプの壁に素晴らしい絵を描いたアーティストの話など、多くの興味深い内容が含まれています。

ハフポスト・ブラジル版はフェイスブック用の動画制作や、特に力を入れている女性の権利と人権といったテーマの報道において、既にパイオニア的な地位を築きました(彼らはまた、過去3ヶ月で読者数も倍増させています)。ハフポスト・オーストラリア版(ハフポストのインターナショナルファミリーの末っ子)は動画優先という方針を掲げて8月に設立され(オーストラリア版ハフポスト制作の「もしカニエ・ウェストが大統領だったら」や「銃乱射と縁無く育った世代」、「コーヒーアート」といった動画をチェックしてみてください)、すでに40万回の動画視聴回数を誇る市場のリーダーとなっています。ハフポスト独自の朝のプレイリスト、ハフポスト・ライズは先週アメリカで立ち上げられましたが、各国版の特集ビデオをそのミッションの核としています。

ハフポストの継続的拡大は、ハフポストの現地版がない場所のメジャーなプラットフォーム、例えば中国のWeChatなどにも読者を持つことを意味しています。私たちはアメリカで得た情報を海外へ輸出し、また各国版の最も良い仕事を母国版に持ち帰るという好循環の中にあります。ハフポストのグローバルネットワークは、私たちが読者に情報を伝える新しい方法、そして新しいビジネスを築く方法といった事柄に関する研究施設となっているのです。例えば日本や韓国は携帯電話の普及が世界で最も進んでいる国ですが、韓国版ではハフポストへのアクセスの実に90%が携帯電話となっています。そして同様に、携帯からのアクセスが72%を誇る日本版は、アメリカ国外で最大のハフポスト読者数を築きました。

私たちの国際的拡大の次の展開は「ハフポスト・グローバル・ベンチャーズ」と銘打って行われます。これは私たちが地球規模で拡大し、また新しい国で現地版を立ち上げるという目的のため、一枚岩的なアプローチを超えて動く方策です。一流のメディア企業とのパートナーシップを通じて、グローバル・ベンチャーズはハフポストの核となる要素を統合した、より軽いモデルを提示していきます。これによって、さらに早く、幅広くハフポストを拡大し、より多くの人に確実にニュースを届けられるようになることでしょう。

アメリカでハフポストのエンジニアチームを指揮するサム・ナポリターノはグローバル・サミットにおいて、ハフポストが来年予定している、グローバル展開を念頭に行う技術インフラストラクチャー拡大について話しました。この拡大計画には、各国版ハフポストと素早くコンテンツを共有できるようにするため、私たちのコンテント・マネージメント・システム(CMS)と分析ツール、そして、アプリが含まれると彼は述べました。

さらに、ビジネスという文脈で言えば、ハフポストのグローバルな広告インフラストラクチャーがいかに巧妙かつ洗練されているかを見ることができるのは素晴らしいことでした。私たちは各マーケットでハフポスト・パートナー・スタジオを用いた現地広告を作り上げることに成功し、ハフポストというブランドを世界中の読者に届けることが可能となりました。

私たちは2020年までに、既存の15カ国を含む50カ国にハフポストをつくり、数千万人の新規読者を獲得したいと考えています。私は、その目標を達成するため、必要な人材が必要な場所に既に揃っていることを確信しています。サミットでは、私たちは世界支配に向けて正しい道を歩んでいるぞ、と皆で冗談を言っていましたが、それはもちろんボンド映画の悪役のような邪悪な世界支配ではなく、もっとポジティブな支配と言えるでしょう。アメリカで皆が夢中になっているテイラー・スウィフトや、ギリシャヨーグルトのような。

ビバ、ハフポスト!

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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