この記事は2021年10月21日に掲載した記事です
生理用品を買うことができず、日常生活に支障をきたし、精神的にも追い詰められてしまっている人がいる...。それが近年問題になっている生理の貧困です。
どうしてそんなことが起きてしまうのか?どんな対策が必要なのか?生理用品マイスターとして活動している佐々木絵美さんに聞きました。
いくら無償配布をしても足りない現状
ーー佐々木さんは生理用品の無料配布活動を行っているんですよね?
私は生理用品マイスターという肩書きで活動していますが、一般社団法人JOYの代表として「生理用品無料配布プロジェクト」を北海道で行っています。
そもそもはNHKの番組で生理の貧困を知り、私は雑貨店を営んでいたので店舗で生理用品の無料配布をしようと思ったんです。その旨をTwitterに投稿したところ、生理用品の寄付がたくさん集まりました。
そこで無料配布を始めたのですが、店舗が2階にあって靴をぬがなくてはいけない場所にあるせいで取りに来にくかったのか、または雑貨店に行って何も買わないで大丈夫なのかと思った人もいたのかもしれませんが、なかなか取りに来る人はいませんでした。
そこで、お店で買わなくてもいいし、生理用品を取りに来た人の顔もわからない状況で配布できるようにと考えて、店舗までの階段の途中に置くようにしました。それでも数人取りに来る程度...。一方で、ありがたいことに寄付で届く生理用品はどんどん増えていきました。それらを必要としている人の元に上手く届けられていない状況だったんです。
そこで、私1人がボランティアで無料配布活動を行うのは限界があると感じて、一般社団法人化し、市議や町議の方にサポートしてもらい、公共施設などのトイレの個室に設置してもらうようにしました。
ーーなぜ個室に?トイレの入り口などではなく。
トイレの入り口だと生理用品を手にした時に「あ、あの人、ナプキンもらいに来たんだ。生理用品買えないんだ」って目で見られるのが嫌だなと感じさせてしまいます。それでは、本当に困っている人の元に渡らなくなってしまいますから。
ーー他にはどんな場所で配布を?
一般社団法人化してからは、教育委員会に掛け合って、市内の中学校、高校のトイレに無償提供の生理用品を置かせてもらっています。
また書店なら、中高生も来やすいということで函館蔦屋書店さんに月3〜4回、1回につき80〜100パック届けています。合計月に約400パックですね。女性トイレの全個室に清掃のタイミングで補充してもらっています。
また、40世帯が入居している母子ホームにも生理用品をお届けしているんです。ただ、本当は1世帯当たり月に5パックくらいは配布したいと思っているんですが、お届けできる数にどうしても限界が生じてしまう。
だから今は、2パックを2ヶ月に1回届けることしかできていない状況です。他にも、何らかの事情があって家に帰ることができない子どもたちのための自立援
助ホームに設置しています。そこにはなくなり次第随時持っていくことにしていて、月に1回か1.5ヶ月に1回、段ボールに1箱持って行っています。さらに、その時にホームにいる子どもの年齢や体型を把握した上で生理用品を持って行っています。だから毎回持っていくものが違うんですよね。
ーーたくさんの数ですね。それだけ生理用品がなくて困っている人が多いということですね。
これでも足りないくらいです。
中高生が、深刻な問題を抱えている
ーー先ほどから中高生という言葉がよく出てきますが、生理の貧困は中高生世代で深刻だということなのでしょうか?
そうですね。経済的な問題で生理用品を買えない大人はもちろんいます。でも生理用品の無料配布の活動の中で聞く「生理用品が欲しい」という相談の声は圧倒的に中高生が多いんです。
ーーそれはどうしてでしょう?
家庭環境や親子関係が大きく影響しているからだと思います。例えば、経済的な問題はなくても、生理に関してだけネグレクトをされているという子が一定数います。親が、我が子が子どもから大人になる現実を認めたくない、「けがらわしい」と思ってしまう大人もいるようです。だから生理用品を買ってもらえない。
他にも、中高生は家で親が使っている生理用品を使う場合が多いのですが、中には素材が合わずに肌荒れを起こしてしまったり、生理不順などが原因の過多月経で親のナプキンでは漏れてしまい、学校に行けなくなったりしてしまう子もいます。親に違うナプキンを買って欲しいと言っても親は買ってくれず、でも子どもの力ではどうにもできない、そうして生理の貧困に陥ってしまいます。
高校生になると、お小遣い制で「その中から生理用品を買うように」と親から言われている子も多いです。生理が軽ければかかるお金を抑えることもできますが、生理が重いと夜用やショーツタイプの生理用品を買う必要に迫られます。それではお小遣いでは足りませんし、「じゃあアルバイトを」といっても、このコロナ禍でシフトに入れず困っている子が多いんです。
ーー海外、例えばスコットランドでは生理用品が無償になっていたり、他にも課税率が下げられている国もあります。しかし、日本では生理用品は軽減税率の対象にすらなっていません。
一応、日本でも2021年の3月に国が「生理の貧困」に対応した女性用品の提供などに46億円を計上することを決定はしています。その予算を各自治体が使って生理の貧困対策に取り組んでいます。
函館市だと「つながり事業サポート」と言って生理用品の購入配布をするサポート事業が始まりました。でも結局、自治体の多くで行われているのは、相談窓口の増設です。また自治体によって形式は様々ですが、無料配布している生理用品を受け取るには申請手続きをしたカードや携帯画面を持って、自治体の窓口や支援センターに行かないといけないというのが現状です。
ーーそれでは、利用したくても利用しづらいという人たちが出てきてしまいますよね。特に中高生にとってはハードルが高いでしょう。
本当は海外のように生理用品を無償化や軽減税率の対象にしてくれればいいのだけれど...今の状況を見ていると何も変わらないのかな、と、感じてしまいます。
困っている人が無償配布の生理用品を取りに行きやすい方法、場所、周りの目を気にせずにサポートを受けられるようにするには何が必要なのかを、私たちのような団体が少しずつ発信していくしかないのかもしれません。継続的にやっていくしかないのかなと。しかも、生理用品を無償で渡すだけではなくて、その背景にある生理の貧困になってしまった原因を解決して、安心して生活できる基礎を作っていかなくてはいけないと思っています。
生理用品マイスター佐々木さんがおすすめする商品8選
普通のナプキンと合わせて使うことで吸収力のアップが見込めるので、経血の多い人、ナプキンを変えにくい環境下にある人は心強い一品。
1つ1つの包装がコンパクトで片手の中におさまるサイズのため、トイレに行く際にも周りの目が気になりにくくなっています。トイレにそのまま流せるのも便利なポイントです。
茶色のパッケージが最大の特徴。生理用品というとピンクや花柄のものが多く、ジェンダー的な観点から違和感を抱いている人も増えてきています。
でもこの茶色のパッケージ・小包装なら、生理用品のオプションを広げてくれます。パッケージだけではなく、羽の部分が他の商品と比べて細めになっているのもポイント。昔のサニタリーショーツはショーツをくるっと包むようにして外側に羽の部分を貼り付けるタイプが主流でしたが、今のサニタリーショーツは二重構造になっていて羽が中にしまえるようになっています。外から羽が見えないというメリットがある一方、羽が大きいと中にしまいにくいという面があるんです。この商品は羽が細めなので気になりにくいでしょう。
活性炭消臭シート(消臭材) が使われていて、匂いが気にならないという謳い文句だったので「本当か?」と思って実際に使ってみました。
すると、月経時に下着を脱いだ時に感じる特有のムワッと感が軽減されていて、匂いを嗅いでみたところ、経血の匂いはするけれど、他の商品の使用時よりも少ないと感じました。生理時の匂いが気になる人は一度使ってみてはいかがでしょうか。
月経量が大量、粘度が高い、急にドバッと出るなどの症状を伴う過多月経に悩む人に向け作られた商品です。夜用ナプキン5枚分の吸収力 (※大王製紙「新・素肌感29cm」との比較 2016年3月時点)があると謳われています。
一般的な多い日用や夜用に比べて高額ですが、どうしても経血が漏れると困る日や特に経血が多い日はこのクリニクスを使い、その他の日はそれぞれの経血量にあったナプキンを使うなど、クリニクスと他の生理用品を上手に組み合わせて使ってみてください。
スポーツをする人を想定して作られていることもあり、粘着面の粘着力が強く、ズレたりヨレにくい構造になっています。
薄型なのでスポーツをする人だけでなく、動きの多い仕事をしている人にもおすすめです。この後でご紹介するショーツと一緒に使うことでよりズレやヨレの防止が強化されます。
前述の「ソフィSPORT」のシリーズから出ているサニタリーショーツです。スポーツをする人を想定し、通気性のいいメッシュ加工が施されています。
スポーツをしても生理用品がズレにくい、漏れにくい、蒸れにくく作られているため、ちょっと値段は張りますが1枚持っていれば「ソフィSPORT」以外のナプキンでもズレや漏れを軽減してくれて便利です。真っ黒でボクサーパンツに似たデザイン性も私は気に入っています。
日本ではプラスチックのアプリケーションが付いているタイプのタンポンが多いですが、このエルディにはプラスチック部分がついていません。そのためエルディは経血を吸収すると横に広がるのです(プラスチックが付いているタンポンは縦に伸びます)。
横に広がることで、お風呂の栓のような機能を果たすので、漏れにくくなります。そして何と言っても、サイズがコンパクト。災害対策の非常袋に1つ入れておくのもおすすめです。コスパの良さもおすすめポイントと言えるでしょう。
まるでオムツのような形状で、ギャザー部分もしっかりしているなど、経血をしっかり吸収して漏らさない工夫が施されています。すっぽりとお尻を包むので、うしろ漏れが不安な人は一度試してみてはいかがでしょうか。他にも経血が多い人、障害などがあって長時間ナプキンなどを替えることができない人、夜寝る間に使用するのがおすすめです。
最近ではどんどん新しい商品が発売されています。いつも使っている生理用品を使い続けている人も、いろんな商品を見てみて自分にぴったりのものを見つけてください。
※記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部がハフポスト日本版に還元されることがあります。