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お笑いコンビ「マシンガンズ」として活躍しながら、ゴミ収集会社で清掃員としても働く滝沢秀一さんの児童書『すごいゴミのはなし ゴミ清掃員、10年間やってみた。』が発売されました。
滝沢さんはおよそ10年ほど前、家族を養うためにお笑い芸人の仕事に加えてゴミ清掃員の仕事をはじめました。
以来、あまり知られていないゴミ回収の裏側や環境問題の啓発などを行っています。
今回の著書では、小学生など若い読者に向けて、清掃員のお仕事の裏側や謎のゴミの回収エピソードなど、大人でも知らないゴミの奥深い世界をコミカルに綴っています。
今回は、特別に第1章「知られざるゴミ清掃員の日び」から、「ゴミ箱からその先、知ってる?」を出張掲載します。
滝沢秀一『すごいゴミのはなし ゴミ清掃員、10年間やってみた。』(学研プラス)
文:滝沢秀一 絵:スケラッコ、萩原まお
ゴミ箱からその先、知ってる?
ところで、みんな清掃員に向かって、「クサッ!」とかいってない? ほんとに?ぼく、小学生に何回もいわれたことあるよ。
めちゃめちゃ悲しいよ。
みんなもぼくの立場になって、知らない人に「クサい!」っていわれたら、悲しい気持ちにならない?
ぼくらはその度に悲しい気持ちになる。
園児には大人気なんだけどね。保育園の前にある集積所のゴミを回収しているときなんて、スーパーヒーローになった気分。
「ギャーーー。」
「こっち向いてぇ。」
「車、動かしてぇー。」
ぼくが手をふる度に幼児は大さわぎ。アイドルにでもなったかのようだ。
いつからきらわれるんだろう。
そうだな、だいたい小学2年生くらいから清掃車のことがきらいになるようだ。
くさいといわずとも、鼻をつまんでわざと清掃員に「くさい」アピールをする。その子は、自分ひとりのやっていることだと思っているようだけど、ぼくは同じことをする小学生を多く見ている。だから、けっこうつらい。
え!? この学校、ほとんどの子どもたちが鼻をつまんでるじゃん!? とこしをぬかしそうになることもあるよ! もちろん、その学校の全員がそんなことをしてくるわけじゃない。それはわかっている。でも、ぎゃくに「ありがとうございます」とか「おつかれさまです」といってくれる子が多い学校とかもあって、この差はなんなんだろうと思う。
ひどいケースでは「くさいのでやめてください!」とおこりながら、うったえかけてくる小学4年生くらいの子がいたよ。
やめてもいいけど、ぎゃくにそれでいいの!?
通学路にゴミがずっとたまりつづけるよ。
やめて帰ったら清掃事務所の人、びっくりするだろうなぁ。
「小学生がやめてくれといったので、やめてきました。住民の意見を大事にするのも清掃員の仕事だと思います」とかいったら、おこるというより、こいつマジでヤバイやつかもと思って、清掃事務所の人もガタガタふるえるだろうな。
その小学4年生の子もまだわからないんだと思う。ぼくらはみんなが出したゴミを回収しているのであって、ゴミを売りにきたわけではないのよ。「清掃車がじゃまだ、くさい」といえるのは、ゴミを出したことのない人だけ。そんな人はいないでしょ?みんなができないことを、ぼくたちが代わりにやっているのよ。
もちろん、気持ちはわからなくもない。ぼくもくさいと思ったことはあるし、今でも思う。でも、ぼくが子どものころ、清掃車が通ったあと、くさいといったら、親にきつくしかられた記おくがある。
「そんなことをいうな。」
今、考えてみれば「ゴミを回収する人がいなければ、街はとんでもなくきたなくなるから、清掃してもらっているのに、そんなことをいうんじゃない」という意味だと思う。
ぼくは親に教えてもらってよかったと思っている。
「くさいのでやめてくれます?」といったこの小学生に、ぼくは「じゃ、なんでくさいと思う?」と話しかけてみた。
びっくりしてたよ、その小学生!
そりゃそうだよね。文句をいってそれでおしまいと思っていた小学生は、まさかゴミ清掃員に話しかけられると思っていないもんだから、おどろいて、ふるえてにげていった。たしかに40代の大人から急に「なんでくさいと思う?」って話しかけられたら、びっくりするだろうな。
でもぼくは、答えをその子に教えてあげたかった。
みんなはわかる?ゴミがいったいどうしてにおうのか。
ほとんどのにおいは、水分についてきているから、というのがその答えだ。
とくに、生ゴミの水分。生ゴミの水分がなくなれば、ゴミというのはほとんどにおいがしない。じつは、これは大人でも知らない人が多い。そして、生ゴミというのは8割が水分だ。
各家庭が生ゴミを最後にギュッとしぼれば、みんながいやがる清掃車はいなくなる。もしお父さん、お母さんが水びたしのまま、生ゴミをすてていたら「そのせいで清掃車がくさくなるんだよ」と教えてあげてほしい。
各家庭のゴミは、清掃車の中でギュッと小さくかためられ、しぼりきれていなかった生ゴミのしるが集まる。このしるを、ぼくらは「ゴミじる」とよんでいるが、このしるが少しでも制服につくと、その日は1日、とんでもなくくさい目にあう。
清掃工場の焼却炉でゴミを高温で燃やしているけれども、そもそもが火だ。火は水が大敵。ゴミがぬれているとやはり燃えにくい。燃えにくければ、よく燃えるようにエネルギーを投入するのだが、エネルギーももちろん無料ではない。みんながはらっている税金が使われる。
つまり、各家庭で生ゴミの水分をひとつかみギュッとしぼってくれれば、むだな税金を使わなくてすむ。清掃車には900個のゴミ袋が入るといったけど、900個どれも水切りをしていないゴミと、全部水切りをしているゴミとでは、ゴミじるの量が全然ちがうことは、みんなもイメージできるよね?ちなみに、世の中にはヤバい人がいて、残ったみそしるをそのまま可燃ゴミの袋に入れている、なんてこともある。
それに、水にぬれたゴミを燃やすには、かわいているゴミよりも長く燃やさなければならないので、二酸化炭素がより多く排出される。
この二酸化炭素が地球を温めてしまい、地球温暖化として問題になっている。環境問題は、どこか遠くの世界で議論されていて、自分たちとは無関係のように思うかもしれないけれど、じつはそれぞれの家庭とつながっていて、できることはたくさんあるんだよね。
みんなにもできて、清掃員がすごく助かることを、もうひとつ教えよう。それはね……(続く)
『すごいゴミのはなし ゴミ清掃員、10年間やってみた。』は、全国の書店やAmazonで発売中です。本書では、まだまだ奥深いゴミの世界を知ることができます。
<内容>
土の入った電子レンジ、大量の人形やキノコ料理!? だれが、なぜすてたのか……ゴミの世界はおくぶかい。現役ゴミ清掃員で、お笑い芸人でもある滝沢さんが「ゴミ」の回収エピソードや、いま起きている問題を、現場から楽しく分かりやすく紹介。「ゴミこぼれ話」やゴミ清掃車の図解、4コマにクイズなど、コラムも充実……! イラストや図、写真も豊富に入っています。無関係な人などいない、身近な「ゴミ」のウラを知るうちに、これからの社会のあるべき未来がみえてくる。全小学生必読の一冊!
<滝沢秀一>
1976年、東京都生まれ。1998年にお笑いコンビ「マシンガンズ」結成。2012年、お笑い芸人の仕事を続けながらゴミ収集会社に就職。その後、ゴミ清掃員の経験を活かして「ごみ研究家」としてテレビ出演や講演会、出張授業などを行い、多数の著書を出版。食品ロスを減らすための『えがお食堂』や、オンラインコミュニティ『滝沢ごみクラブ』も手掛ける。2020年、環境省により「サステナビリティ広報大使」に任命。著書に『このゴミは収集できません』(白夜書房)、『ゴミ清掃員の日常』(講談社)、『ごみ育 日本一楽しいごみ分別の本』(太田出版)など。
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※この記事は、BuzzFeed Japanで掲載した記事を再編集したものです。