伝わる英語に必要なのは、たった3語だけ
英語を話そうとすると頭が真っ白になって、言葉が出てこない。そんな経験をしたことのある人は多いのではないでしょうか。
どうしたら、英会話力が上達するのかわからない。英会話教室に通っても挫折するし、と思っている人もいるでしょう。
そんな人のために英会話上達のメソッドを紹介した『have do getで英語は9割伝わります!』を上梓したジュリアーノ熊代(ジュリアーノ クマシロ)さんに、英会話の上達のコツやオンライン英会話の活用術を聞きました。
ポイントは会話の主導権を握ること
━━英会話を身につけたいけれど、上手くいかないという人はとても多いと思います。
そうですね。でも、今でこそ英会話教室を経営し、英会話をマスターするための著書を出版した私ですが、以前はまったく英語が喋れなかったんですよ。
━━そんなジュリアーノさんが英語を話せるきっかけはどんなものだったのでしょうか?
英語が話せないけれど、アメリカに留学したことでしょうか。留学当初は現地に行けば慣れて、リスニングも話すこともできるようになると思っていたんです。それがなかなか慣れなくて。
━━そんな中でも、ジュリアーノさんは英会話をマスターして今に至ります。独自の勉強法や、気をつけていたポイントはあるのでしょうか。
「自分から話を振る」ことを心がけていました。アメリカに行って1週間目、2週間目と過ぎていくなかで、思っていたよりも全然英語が聞き取れず、会話ができませんでした。
そこで、やってみたのが、日本のアニメ、漫画の話を自分から振ってみることでした。Do you like~という中学校で習うフレーズを使い、 Do you like Japanese comicと。
すると、相手の言っている細かいところまでは分からなくても、それまでとは違ってびっくりするほど内容が理解できるようになりました。漫画やアニメのタイトルは日本語と変わらない単語で耳に飛び込んできますから。
私が Do you like Japanese comic?と聞くと、ある女性が左手薬指の指輪を見せながら、「Do you know YuYu Hakusyo? Kurama is my husband」と言うんです。それを聞いて「あー!わかる!」って。
━━アニメや漫画に限らず、自分にも分かるジャンルの話であれば単語を聞き取れそうですね。
そうすることで、自分は英語でコミュニケーションが取れるんだという成功体験を積み重ねていけます。英会話とメンタルは、あまり関係性はないと思われるかもしれませんが、大きく関係していると感じています。成功体験を重ねることで「できるんだ」と思えるので「できない」と思い込んでいるときより、うまくいくんです。
━━成功体験の大切さはとてもよくわかりましたが、英会話が苦手な人には自分から話しかけること自体がハードルになるようにも思います。
私も経験者なので、「自分から話しかけるハードルの高さ」はよく分かります。それでも自分から話を振って会話の主導権を握った方が、相手の答えの想像がつくので、会話が発展しやすくなります。
つまり、急に質問されて、聞き取れなくてパニックになるようなことも減らせます。また仮に相手の質問を聞き取れたとしても、自分の守備範囲外な内容だと、話を盛り上げるのは難しいですよね。だからこそ、自分から話しかけて会話の主導権を握るシチュエーションを作る方が会話を楽に進められることができるんです。
さらにレベルアップするための方法としては、次の日にこれを使おうという単語やフレーズを決めておくようにしていました。
例えば、現在完了といった文法だったり、“Thank you”レベルの簡単なフレーズだったり何でもいいのですが、意識して使ってみるんです。言ってみて、もし相手が「うん?」と不可解そうな表情をしたら「このタイミングで、この単語、フレーズを使うのは変なんだな」とわかりますよね。たとえ変なタイミングで単語を使ってコミュニケーションが上手くいかなかったとしても、それも経験値になります。
━━成功体験を重ねることも必要だけれど、上手くいかない経験もまた必要だということなのでしょうか?
そうです。上手くいかなくても「実際に英語を使っている」ことになりますから。実際に使った経験が大事なのです。ある日、私は「お願いをする言い方(フレーズ)を使ってみよう」と決めて、学校の先生と話すときに使ってみたんです。すると先生は「うん?」と不審そうな顔をしました。それで初めて、このお願いの仕方は多分無礼なんだと気づきました。
でも先生は、私が日本人で、アメリカにきて日が浅いことはわかってくれていたので、無礼なお願いの仕方をしてしまっても、無礼な言い方を意図して話しているのではないんだとわかってくれました。
日常の中でたくさんの英単語に触れている
━━ご著書の中で「日本人は世界一英語に向いている」とお書きになられていて、正直、驚きました。ジュリアーノさんはどうしてそう思われるのですか?
最大の根拠は語彙力です。誰から習うわけでもなく、ナチュラルに、非常に多くの英単語を日常生活で使っています。ただ日常生活にある英単語が当たり前過ぎて、そこに意識が向いていないので気づかないんです。
━━それは、いわゆる「カタカナ英語」ですね?
カタカナ英語というと、和製英語で英語圏の国では通じないものが多いと思われがちです。でも、通じない和製英語はそのうちの0.1%以下。
しかも現代では、SNSを見るだけでもたくさんの英単語に触れる事ができるんですよ。いま、私のFacebookをパッと見たところ、いくつもカタカナ英語が出てきています。例えば…「パーソナリティ」。日本語だとどういう意味でしょう?
━━「人格」ですか?
その通りです。パーソナリティなんて、本来ハードル高めの単語です。では次に出てきたのが「トライ」ですね。トライは日本語でどんな意味でしょう。
━━挑戦する、ですね。
そうです。このようにSNSにはハードルの少し高い単語から低いものまで英単語があふれていますから、その日本語訳を考えなから見ているだけでも、さらに語彙力アップしますよ。
英文法で挫折しないためのコツとは?
━━英会話上達には語彙だけではなく、文法も理解する必要が生じ、挫折をしてしまう人も多いと思います。文法もある程度身につけてからオンライン英会話などを利用するのと、思い切ってオンライン英会話を始めるのとどちらがいいのでしょう。
実際にオンライン英会話のレッスンを始めてしまった方がいいと思います。というのもひとりで黙々と文法を勉強し続けても、「オンライン英会話をはじめてもいい」という基準がわかりませんよね。それ以上に、大人が一人、自宅で受験生のような勉強をして楽しいと思えないでしょうから。
ただ、文法が日本人が英会話をマスターするうえで厄介なのは事実です。
だからといって文法だけを勉強しているのでは学生時代と同じになってしまいますし、オンライン英会話で実践練習をしているだけというのも、あえて言うなら野球部で普段の部活の練習をしないで、試合だけ出ているようなもので、実力は伸びていきません。
━━では、どうしたらいいのでしょう?
オンライン英会話など実践的な学習と、それを復習するなかで文法も覚えていくという両輪を、イヤにならないペースで続けていきましょう。継続することが何より大事です。
教室に通ったり、オンライン英会話をはじめたりすると、当初は気合いが入って「1日3時間は勉強するぞ!」と意気込む人もいます。でも、仕事などの都合で3時間勉強できない日が出てきてしまうのは当然のこと。「私は意志の弱い人間だ」「ダメな人間だ」なんて思ってしまい、最初の「英会話を習得したい」という気持ちを失ってしまっては逆効果です。だからこそ、嫌にならないペースが大事なんです。
━━オンライン英会話と両輪で自己学習するのに適したテキストはありますか。
拙著のなかでも紹介していますが
この3冊を紹介しています。それぞれの本の有効的な学習法は拙著で解説していますので、参考にしてみてください。
━━今回のジュリアーノさんの本の中には、簡単だけれど着実に英会話力をアップするメソッドがいろいろ出てきますが、「これだけ押さえておけば」というポイントを教えてください。
そうですね、では本の中でも紹介している、アメリカに行ったばかりでどうしていいかわからなくなっていた私を救ってくれた3つのコツをお伝えします。
1つ目は、「Nice to meet you. My name is~」 で自分から会話を始める。
2つ目は、1の後につかさず「Do you like~」と続け、自分で話題を決める。
これで、英会話の先生にいきなり質問されて聞き取れず、会話の雲行きが怪しくなることはなくなるはずです。
そして3つ目は、会話の最後で相手と友達になって会話を自然に終える。拙著の中では「Facebook?」「Twitter?」と尋ねることを勧めていますが、先生を相手にFacebookやTwitterのアカウントは聞きにくいでしょう。そんな場合は 「Nice to meet you」や「Thank you」と一言添えるだけでも大丈夫です。
━━では英会話教室に通うのではなく、オンラインでレッスンを受けるメリットはなんでしょうか。
コロナ禍でも安心してレッスンが受けられるのももちろんですが、なんといっても、その利便性がメリットではないでしょうか。利便性が高ければ続けやすくなり、英会話力アップにつながります。
━━そんなオンライン英会話をどのように活用すれば、習得に結びつくのでしょうか?
話したいことを決める、というのがポイントですね。今日のレッスンではこの話がしたいと決めておく。何も決めずにレッスンに挑んでしまうと、オンライン英会話のサービスによっては毎回違う先生で、自己紹介から始まって、「あなたのレベルではこれをやりましょう」と似たようなレッスンが続いてしまうことがあります。
それでは、なかなか英会話は上達しません。それを避けるためにも、話したいことを決めておくことが必要です。今日は何を教えてくれるんですか?という受け身の姿勢ではなく、これを話すぞという積極性がすごく大事だと私は思います。
中には「何を話したいと言われても話題がない…困ったな」と思う人もいるかもしれません。そんなときはレッスン前に、例えば Yahoo! JAPAN などのトップページやSNSを見て、気になるトピックを見つけるだけでいいんですよ。
━━ここまで英会話マスターの近道、オンライン英会話教室の活用法をお聞きしてきましたが、経済的な負担も小さくないですし、一歩が踏み出せない人に一言お願いします。
英語や英会話に興味がある人はきっと夢や憧れを持っていると思います。「英語が喋れたらかっこいいな」とか「いつか憧れている国に行って現地の人とコミュニケーションがとりたい」など。でも、ハードルの高さを感じてしまっているわけですよね。 「きっと難しい」とか、「自分にできるわけない」とか。
近年はちょっと英会話のお試しのレッスンを受けてみたいなと思ったら、その30分後くらいには実際にレッスンが受けられるようになりました。
しかもオンライン英会話の講師は外国にいるケースが多いので「そちらの国は雨ですか?」「そちらは夜ですか?」なんて話ができる。自分の部屋にいながら外国の空気を感じるのはなかなか楽しいですよ。一歩目を踏み出すのは少し勇気がいるかもしれませんが、特別な準備はいりません。私だって一歩目は「Do you like Japanese comic?」だったんです。ぜひチャレンジしてみてください!
英会話講師。ヤマトイングリッシュ代表。日本人の父とブラジル人の母をもつ。生まれも育ちも日本(東京都日野市生まれ、和歌山県育ち)のため、もともと英語は全く話せなかった。赤点レベルの英語力で、17歳で単身10か月の米留学へ。絶望的に通じない日々に挫折を味わうが、あの手この手で伝わる英会話を模索。帰国後、英検1級、TESOL(英語教授法)の課程を修了し、1000人以上の生徒に英会話を直接教える中で独自のメソッド「ヤマトイングリッシュ」を確立。特技は空手(三段)と居合道(二段)。趣味はプラモデル製作。2020セミナーコンテスト東京大会優勝、全国大会3位。NHKや日本テレビなど、様々なメディアで翻訳や通訳、出演などで活躍中。
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