「パラレルキャリア」。
この言葉を皆さん知っているだろうか?
「副業」や「複業」といえば身近に感じてもらえるかもしれない。
先行きのみえない時代、これまでのような一社での働き方に不安を覚える人も多いことだろう。
そこで今回、『スタンフォード式 世界一やさしいパラレルキャリアの育て方』の著者で、「これからの時代、パラレルキャリアのスキルが必要」と語る、江端浩人氏に話を聞いた。
パラレルキャリアで人生の豊かさが変わる
━━これからの時代、おすすめの働き方はありますか?
江端浩人さん(以下、江端):副業解禁になってくるというのもありますが、健康寿命も延びて、そのうえ、今回のコロナ禍によってリモートワークが普及しました。通勤時間がなくなり、余剰の時間も生まれた人も多いのではないでしょうか。
これまでよりも時間がある生活を送る中で、自分の会社での仕事以外に何かをする選択肢が増えてきています。そうした現状で、私がおすすめしたいのが「パラレルキャリアを育てること」なのです。
━━パラレルキャリアを育てると、どんなメリットがあるのでしょうか?
江端:私は仕事、そして人生そのもの、二つのメリットがあると考えています。
仕事にはライスワーク(生活するための仕事)、生きがいのためにするライフワークがあります。ライスワークで疲弊している人は、パラレルキャリアでライフワークをすることで幸福度があがるのではないでしょうか。そのうえ収入も得られれば、なおハッピーですよね。
幸福度と言えば、副業は会社の仕事と異なり、誰かに「あれをやれ」「これをやれ」と命令されることはありません。自分で、選択、決定ができます。ある調査によるとこの自己決定権が、年収や学歴などより、幸福度を測る非常に大きなウェイトになるとわかっています。
パラレルキャリアを行うことで自分のしていることを自分で決定していると実感し、人生の豊かさも変わってくるでしょう。
最近では、「プロボノ」といった言葉も出てきて、本業でしていることを社会貢献活動に使うことによって 自分にできることの幅をひろげていく人も出てきているんですよ。
パラレルキャリア、何から始めたらいい?
━━パラレルキャリアを育てるにはどうすればいいのですか?
江端:今までは、「絵や写真が得意な人が、マネタイズしようとしても、それらのスキルを求めている人とマッチングするのが難しい状況でした。しかし、現在は本書に書いたようにそういった人たちがマッチングできるプラットフォームがたくさん出てきています。ITの進化、サービスの進化によって、自分の得意なこと、したいことがパラレルキャリアとしてできる環境が整ってきているんです。
自分で選択したマッチングサービスに、趣味や得意なことを登録し依頼する人も自分で選んで依頼する、双方自己選択で成り立っている。
そういったサービスが出てきたことで、気軽にパラレルキャリアができるようになってきました。
━━とはいえ、自分にはパラレルキャリアになるような得意なことなんてないと躊躇してしまう人もいると思いますが?
江端:とにかく、いろいろなことをやってみることが重要です。やっていないのに、得意か、得意じゃないかなんてわからないじゃないですか。
私も文章や読書感想文が苦手でした。でも、あるときある方に「これからはブログの時代が来るから、だまされたと思って半年毎日ブログを書いてみてください」といわれたんです。そうしたら、そのブログを見て、私が文章を書けると思った日経の方から「連載しませんか」という声がかかった経験があります。そして今も執筆や講演をしているわけですけど、みなさんも自分では全然得意じゃないと思っていた分野が人から評価されて、得意じゃなくても、お金になるということもあるかもしれません。
3ヶ月ごとに違う趣味を持とう
━━いろいろなことをやってみても、それにニーズがなければ意味がないのではないでしょうか?ニーズがある副業、お金になる副業をするには、どうすればいいでしょうか。
江端:得意だけれど、お金にならないというのは、そのスキルが他の人と差別化されていないからです。文章を書くのにも、体験記が得意、インタビューが得意など様々。写真でも風景は苦手だけれどプロフィール写真が得意です、ということもあるでしょう。得意分野を特定していくとぴったりマッチする人がでてくるはずです。
だからこそ、私はいろいろなことを試すというのを習慣化していくことが重要だと思っていまして、3ヶ月ごとに違う趣味を持つことを推奨しています。
いろいろな趣味を3ヶ月、または新しいツールにチャレンジして3ヶ月くらい続けて自分にできるか、できないかを見極めることでマネタイズにつながります。できれば、ある程度幅を持った、違う趣味、ツールがおすすめですね。
実は、私もいろいろチャレンジしていて、今はYouTubeに挑戦しています。YouTuberの人は、どんな苦労があるのかなどが体感できますし、なぜ若い人たちがYouTubeを見ているのか、どうしたら見てもらえるのかといったことも自分事化できます。大学の教授の仕事の幅を広げるためにYouTubeにチャレンジしているんです。
最初はだまされても仕方ない⁉️
━━信頼する仲間を得て、パラレルキャリアのビジネスを拡大する方法を教えてください。
江端:残念ながら、1回で成功することはないと思います。最初はだまされても仕方がないと思って、やってみたらいいのではないでしょうか。時にはうまくいかないことや、だまされるようなことも出てきてしまうと思うんです。でも、そういうものだと思って、やってみることも、ある意味大事でしょう。
━━信頼以外に、仲間の仕事の出来、不出来は関係ないですか?
江端:タスクとしてアウトソーシングできるような「これだけお願いする」ような仕事のレベルに関しては割り切ってしまってもいいと思います。
ただし、一緒に事業をやっていこうという場合には、例えば相手のレスポンスとか情報の取り扱いなどには気をつけたいところですね。時には仲間が事業の話を他人に話して、自分が計画していた事業を他の人がやっているなんてことも起こりますから。そう考えると、信頼は大事なんですが……。
とはいえ、だまされないように気を遣ってばかりいると新しいことができなくなってしまうので、私はある程度だまされてもいいやと割り切って開き直っています。
ジョブシェアリングをしないと世の中が回っていかない
━━日本の企業での現在の働き方は100%変わると思いますか?
江端:100%ひっくりかえることはないと思うのですが、日本の会社のカルチャーに違和感を抱いている人は外で違う働き方をするオプションがすごく増えてきたとは思います。そして実際にそういう人が増えてきているんじゃないでしょうか、特に若い人は。
━━江端さんがパラレルキャリアを薦める理由を教えてください。
江端:パラレルキャリアはこれから、私は必然になると思っているからです。冒頭で申し上げたとおり、人生長くなって、余剰の時間ができ、使えるツールもできてきた。ひとつのことをずっとするというのも、もちろん素晴らしいですし、最初のうちは何か一つを極めることも大切なのかもしれません。
ただこれからは、一生同じことをする、一生同じ会社にいるという世の中ではなくなってくるとも思います。特に日本はこれから労働人口がすごく少なくなってくるでしょう。ですから、ジョブシェアリングのようなことをしないと世の中が回って行かないと思うんです。だからこそ、日本の社会でもパラレルキャリアは必要なスキルになっていくと感じています。スキルを身につけることによって自分が世の中に貢献できることができたとき、きっともあなたの幸福度が上がるはずです。
「【スタンフォード式】世界一やさしいパラレルキャリアの育て方」(スタパラ)出版記念イベントも開催されます。
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