在宅勤務や、外出自粛により自宅でコーヒーを楽しむ人が増えています。でも、豆や道具の選び方など、知っているようで知らないことも多いですよね。
そこで、日本人で唯一のワールド・バリスタ・チャンピオンである井崎英典さんに、美味しいコーヒーを自宅で飲む方法やアイテムなどいくつかの相談を投げかけてみました。
世界一美味しいコーヒーを淹れるには、こだわり抜いた道具と知識・修練が必要? いいえ、そんなことはありません。
“苦い”か“酸っぱい”か。ざっくり好みを知ればOK
―コーヒー豆を買うとき、「酸味が好きかどうか」「焙煎は深煎り? 浅煎り?」と聞かれることが多いです。でも、自分の好みの味が正直わからなくて焦ってしまいます。どうしたらわかるようになりますか?
自分の好みを把握することは、「美味しいコーヒー」に向けてのスタート地点になります。「自分好みの味を知らない」状態であっても、 “酸味”と“苦み”どちらが好きかで大まかな方向性がわかります。
好みを知る方法としては、お店で「一番深いのはなんですか?」と聞いて、試してみます。自分には少し深すぎると感じたら「もう少し浅いのはありますか?」と聞いてみる。そうやって探っていくのが一番簡単ですね。「自分では苦いのが好きだと思っていたけど、実は酸味が好きだった」みたいなことも実際よくあるんですよ。
―それならできそうです。実は、フレーバーもよくわからなくて…。
プロの現場では「ジャスミンの香り」みたいな共通言語でコミュニケーションをとる必要がありますが、それを商品の説明としてそのまま使うことには問題があると思っています。
たとえば、「ピーチみたいな味」というフレーバーがあります。オーストラリアのピーチは酸っぱいけど、日本の白桃はめちゃくちゃ甘いですよね。「ピーチの味」で想像する味は人それぞれ。わからなくて当然です。
まずはシンプルに「苦いのが好きなら深煎り、酸っぱいのが好きなら浅煎り」。この二軸を知っておけば大丈夫です。
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―豆の保存はどうしたらいいですか?
パッケージのまま、冷凍庫保存がベストです。コーヒー豆は焙煎すると二酸化炭素を徐々に出していくので、二酸化炭素のコーティングがかかった状態でパッキングされています。これにはコーヒーの酸化を防ぐ効果があります。
キャニスターに詰め替える方もいますが、酸素に触れることで劇的に酸化が進むのでおすすめできません。
1~2週間で飲み切れるくらいの量を買ってパッケージのまま冷凍し、使ったらまた口を閉じて冷凍庫にしまうのがいいですね。豆を挽く際に解凍する必要もありません。ただ、コーヒー豆ってまわりの香りを吸着するんです。冷凍庫がとんでもなく臭い人は注意してください(笑)。
―そうなんですね。他にも間違いやすいことはありますか?
僕のおすすめのお湯とコーヒー豆の比率は、お湯の重さ100gに対し豆の重さ6~8g。豆の重さは焙煎方法によって変わります。軽量スプーンを使う人が多いんですが、スケールで計るほうが正確で、味が安定します。acaiaの「PEARL」というコーヒースケールは、デザイン性も抜群で、計測も正確なのでおすすめです。
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最も投資すべき道具はグラインダー
―重さを正確に計ることのほかに、重要なポイントはありますか?
カリタの「NEXT G」のような、良いグラインダーで豆を挽くことが最も重要です。コーヒーの抽出は、淹れ方より粒度で決まります。「コーヒーを美味しく淹れる方法を教えてください」という質問をよくいただきますが、答えは淹れ方ではなく「良いグラインダーを買いましょう」になってしまうくらい。
たとえば、僕がおもちゃみたいなグラインダーを使ってがんばって淹れるより、ふつうの人が高性能グラインダーを使ってざっくり淹れたコーヒーのほうが美味しくなるんです。だから一番投資するべきなのがグラインダーで、コーヒーメーカーはミル付きでなくていいし、高いものでなくてもいいんですね。
もし、良いグラインダーが入手できないのであれば、豆にこだわらずにお店で挽いてもらって少量ずつ買うという手もあります。
―重さと粒度に気をつければ、自宅コーヒーの味がぐっと変わりそうです。お湯の温度はどうですか?
プロは1℃単位で設定できる電気ケトルを使いますが、時間がかかったり沸かせる量が少なかったりするので、家庭向きではないと思います。僕が自宅でで使っているのはティファールの「アプレシア エージー・プラス コントロール」。コーヒーに合った95℃のお湯がすぐに用意できて、キープもできるのでとても楽です。
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疲れているときに美味しいコーヒーを楽しむには
―抑えるべきところがわかってきました。逆にサボってもいいところはありますか? ハンドドリップの時間の管理はどうでしょう。
時間はそれほど神経質にならなくてもいいと思います。1投目のあと1分くらい蒸らすべきなのに、「あ、三分くらい経ってた…」みたいなこともたまにあります。
人間がやることはできるだけ楽にして、便利なスケールやグラインダーに頼るとコーヒーの味が安定して美味しくなるのではないでしょうか。
―なるほど。では、とても疲れているけど美味しいコーヒーが飲みたいときはどうしたらいいですか? フレンチプレスはどうでしょう。
フレンチプレスは楽に美味しく淹れられますが、片付けが面倒ですよね。疲れている時はハンドドリップも面倒だろうから、お湯に浸すだけのコーヒーバックを買っておくのがいいと思います。老舗からサードウェーブまでいろんなところから出ています。
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世界一美味しいコーヒーは、人それぞれ
―井崎さんが思う美味しいコーヒーとは?
インスタントのコーヒーでも、缶コーヒーでも、カフェに行ってバリスタと話すでも...。美味しいと感じて、生活や休憩時間が潤うのであれば、それがその人にとっての「美味しいコーヒー」だと思います。
自分の好きな味を見つけてコーヒーを楽しむも良し、気の知れた人とリラックスした時間を過ごすお供にするも良し。そうした時間の過ごし方や人との触れ合いが平和につながると思ってます。
まとめ
抑えるべきポイントと、自分のペースで楽しめばいいことを伺って、「世界一美味しいコーヒー」を無理なく見つけることができそうです。
もっと詳しく知りたい!という方は、井崎さんの著書もおすすめです。
(執筆:樋口かおる 編集:川越 麻未)
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