家族から見た私、会社の私、友達から見た私……私たちにはいろんな顔がある。たまに本当の自分がわからなくなりそうなときがある。
「私って何がしたいんだっけ? 私の本音ってどこにあるんだっけ?」
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3月9日(土)、ハフポスト日本版と日本HPは「本音で生きよう」をテーマにトークショーを開催。自身の本音に向き合って生きる4名の女性ゲストが語り合った。
第一部では、シェアリングエコノミーの普及に尽力する石山アンジュさん、株式会社スノーピークCDO山井梨沙さんが「自分らしく生きるためのライフキャリア」をテーマに登壇。
女性のキャリアも多様になってきているいま、仕事はしたいけれど、出世がしたいわけじゃない、人生の選択肢を多く持ちたい、という声もある。
華やかな肩書きに見える二人だが、今のキャリアになるまでには葛藤も抱えていた。石山さんは当初から出世欲はなく、自分がしたいことを実現できるキャリアを考えていたため、大手企業では出世思考の息苦しさも感じていた。山井さんも、今のポジションを目指していたわけではなく、むしろ大きな挫折を味わったと当時を振り返った。
「当初ファッションデザイナーになりたくてブランドで働いていましたが、価値観の違いで辞めました。ここを辞めたら次のキャリアに傷がつくんじゃないかと不安でしたが、家族の『その悩んでいる時間がもったいない』というアドバイスなどもあり、マインドスイッチが変わった。意志さえあればやりたいことはできます。そこで、スノーピークだからこそできる自分がやりたいことを最大限に実行しようと入社しました。私の転機でした」(山井さん)
女性のキャリアを考える上で切り離せないのが、結婚や出産などライフステージの変化だ。
石山さんは「子どもを産んで家族を作りたいけれど法的な結婚に縛られる必要はない」と言う。彼女は、現在60人の人たちと暮らす「拡張家族」を実践している。さまざまな人が集うその場所で、同居人の子供のご飯を作ったり、お迎えに行ったりすることもある。
「自分の子どもじゃなくても愛せる対象は作れるし、コミュニティのなかで子どもを育てていこうと思うとあまり不安はない」(石山さん)
そして、世の中の常識と自分の幸せとのズレについても語った。
「私の両親は離婚していますが、両親からの愛は伝わっていたので、再婚時に家族が増えた時も嬉しかった。外では『アンジュの親って離婚しているんだよね』とネガティブに言われたこともあったけど、世の中の常識と目の前に起きている幸せは違います。私は目の前の幸せを信じて生きてきてよかったと思っています」(石山さん)
自分らしさに目を向ける機会が増えているが、その自分らしさが足枷になってしまうこともある。自分らしさとは、そして本音で生きるとは何なのだろうか。
「自分らしさを考えたり、何者かになろうと思ったりすることはないです。計画はせず、ただ純粋に自分が見たい社会の実現に突っ走っていたら、今のキャリアになりました。自分を見てくれている誰かが次のステップをくれることもある。世の中の流れに身を任せつつも自分の軸を持つことが大事です。
今は不確定要素が多い社会で、お金の価値も変動する。これから集めていく資産は“つながり”。本音を発信することで、共感してくれる人と繋がれる。そこが結果的に自分の居場所にもなる」(石山さん)
「私は“流されながら生きる”が、人生のテーマです(笑)女性だから、経営者だから、デザイナーだから、ということを意識して生きてきたことがない。カテゴライズの中に人間は生きがちだけど、意図的にそういう鎧を外して生活することが、本音で生きるポイントだと思っています」(山井さん)
第二部では、エッセイストの紫原明子さんと、フリーライターの夏生さえりさんが「自分らしく人生をデザインするには?」をテーマに登壇した。
日本HPのアンケート調査では、8割の女性が「結婚かバリキャリか、家庭か仕事かなど、どちらかを選ばなければいけない時代は終わるべきだと思う」と答えた。広がる選択肢に戸惑いや悩み、いきどおりを抱えている人は多い。
特に女性は、ライフスタイルが変化する中で決断に迫られることもあるが、二人が人生で迷った時の判断軸は「ネガティブな選択をしないこと」だと言う。
「本望じゃない選択も、消極的な選択にはせず、積極的な選択にするようにしています。結婚時に住んでいた家から引越しをしたときも、仕方なく引っ越すのではなく、引越し先は古びた家だけどDIYができるから引っ越すんだと考えていました。『自分は逃げた、負けた』という挫折感は影響しやすい。そうならないように自分に優しくありたい」(紫原さん)
「以前勤めていた会社をやめるときに、次の仕事を決めてから辞めなさいと言われ、辞めるために転職活動をしました。これはネガティブな選択をしていると気づき、会社を辞めてから、自分に向き合い、自分が行きたい会社を見つけて就職しました。嫌だから選ぶのではなく、単純に“こうしたいから選ぶ”気持ちに持っていく必要がありますよね」(さえりさん)
そして、自分を追い込んでしまう覚悟をしないことも重要だと言う。
「決断時に大きな覚悟はしないようにしています。大学時代に引きこもりで、がんばらなきゃと思うほどうまくいかず、できない自分が嫌いになった。『今はこうしたいけど、今後どうなるかはわからない』でいい。“嫌になったら辞めてもいいよ”というのは、お守り。自分の逃げ道を作るだけでがんばれることもある」(さえりさん)
「やってみないとわからないけれど、今は選択肢だけはそばにたくさんある状態。だから一回何かのレールに乗って選択肢を減らしつつやってもいい。柔軟に余白を残して決めるのがいいと思います」(紫原さん)
参加者からは「女性が本音で生きるために男性が大事にすべきことは?」という質問も上がった。
さえりさんは「男性が女性を楽にしてくれることもすごくある」と語った。
「私は勝手に、子供が生まれたら仕事を減らして家にいないといけないと思い込んでいた。夫に伝えたら、そんなことないでしょ? と言われ、最初は子育てナメてる! と思ったけれど、『だって俺も子育てするんだから』と言われ、私自身が、ひとりで子育てをしなければと自分に課していたのだと気づきました。夫との会話で自由になる部分があります」(さえりさん)
紫原さんは、男女がよりわかりあうためにコミュニケーションの見直しが必要だとした。
「ちゃんと対話をすること。会話はしているはずなのに、理解できていなかったりする。女性も言葉にしているつもりで言えていなかったり、男性も聴いているつもりで聴いているそぶりだけだったり。男性自身も苦しいと弱音を吐き、大変だったねとお互いに言いあえることで救われることもある。互いに相手の立場を思いやることで、対話が成立するんですよね」(紫原)
最後に会場から「自分らしく生きるとは?」という質問が二人に投げかけられた。
「自分らしさは、自分がどんな欲望を持っているかと直結している。でも自分がしたいことを言いにくい環境です。子供の時からそういう訓練を受けているわけでもないし。大人も知らない間に、子供の好奇心や欲望の目を摘んでしまっている。でも今は、平均的な人が一番生きづらい時代。衝動的に欲望を選び、自分の中で育てていくことが大事ですよね」(紫原)
「自分の好きを認識すること。何かをしたいという強い欲求がなくても、『なんか心地いい』が自分らしさでいい。自分らしさを、自分の外に求めると難しい。周りの人がたくさんしている結婚や出産もそう。自分自身ができる範囲で居心地よく過ごすだけで十分じゃないかな」(さえり)
イベント終了後には、参加者とゲスト、参加者同士の交流会が催された。
「自分がしたいことがまだ見つかっていない。でもそういう本音を言い合う場所があまりない。ゲストの方や来場者の人たちの話が自分の刺激にもなった」
参加女性が教えてくれた。
4人の話に共通していたのは、自分らしさにこだわるのではなく、日常にある心地よさを大切にすること。その本音を共有し合うことで新しい選択肢へと繋がっていく。まずは難しく考えず、自分の本音に素直に向き合ってみてはどうだろうか。
ハフポスト日本版は引き続き #本音で生きよう をテーマに女性をエンパワーメントする取り組みを続けていきます。ツイッターやFacebookなど、SNS上でもご意見を募集しています。ぜひ、ハッシュタグ #本音で生きよう をつけて投稿してください。
(取材・執筆/西本美沙 編集/川口あい 撮影/宮下マキ)
※紫原 明子さんのインタビュー記事『「誰がいちばん幸せそうに見えるかゲーム」は、もうやめよう。紫原明子さんが国際女性デーに伝えたいこと』はこちら
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日本HPとハフィントンポストは共に、今年の3月8日の国際女性デーを契機に、「#本音で生きよう」のメッセージのもと、女性が自分らしく豊かに生きていくためのヒントを、識者や読者の方たちと一緒に考えていきます。
ぜひSNS上で、あなたの「本音」を、ハッシュタグ「#本音で生きよう」をつけて教えてください。
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