トランプ勝利にはもの凄く驚かされた。
さらには選挙の4日前、各種データの分析をもとに「神風でも吹かないかぎり、第45代アメリカ大統領はヒラリーだ!」という文章を、ある種の確信をもって一歩踏み込んだ形で書いていた自分としてはショックですらあった。
「どうしてこんなことが起こるのだ?」と...。
けれども結果がでてしまったからにはその事実をきちんと受け止めるしかない。
潔く、自分の分析やらものの見方の甘さを認めます。
じゃ、どうしてトランプ勝利なんてことになってしまったのか?
アメリカの新聞・テレビ等の各メディア(たぶん日本のメディアも...)は、今回の結果を受けて「選挙の最終盤にFBIが発表したヒラリーのメール問題」を一因にあげている。
きっとそれも影響したのだろう。でもそれにしたところで数あるファクターのうちの一つでしかなく、それがヒラリー敗因の決定打になったとも思えない。
先の文章にも書いたように、アメリカのメディア(特にテレビメディア)がトランプ勝利に果たした役割(トランプは見事にテレビ報道を利用した)は少なくないと思うけれど、それ自体は選挙戦が始まったときからずっと続いていた訳だから、これ自体が最後の逆転に大きな影響を与えたともいえないだろう。
トランプが勝った、というかトランプを勝たしたのは、
やはりトランプが作り上げた世界(現実的な言葉でいえば彼のいうところの「政策」やら「政治姿勢」やら「理念」なんかになるのだろうけど)、そのトランプ・ワールドに入った人たちの団結力が想像以上に強かったということなのだと思う(これについては前回の文章でも触れたけれど)。
彼らは間違いなく8日の投票日にきちんと投票にいっているだろう。
その意味では、ヒラリー支持派(多くはトランプ嫌悪派)は、最後にきて隙ができたのかもしれない。
数えられないほどのトランプの醜聞により、ヒラリーはそれなりのリードを保っているように見えたし、
実際それを肌で感じていたはずだから。
ただ、映画監督のマイケル・ムーアは、そのことをだいぶ前から懸念して以下のように熱心に語っていた。
「トランプを大統領にしたくなければ、あなた自身が自分の住む地域の選挙対策本部長になったつもりで、自分はもとより知り合いを引き連れて確実に投票にいきなない。でないと本番で必ず負ける」
はからずもマイケル・ムーアのいっていた通りになってしまった訳だ。
これからアメリカっていう国はどうなってしまうのだろう。
随分前にも書いたけれど、選挙戦の間にトランプが叫んでいた、彼のいうところの「選挙公約(らしきもの)」がすぐにそのまま現実のものになるとは考えにくいけれど、今回の大統領選を通してアメリカ社会に広がった「分断」は相当厄介だ。
さらにはモラルの低下、人種や民族や性別の違いによる差別、溢れる銃...考えただけでぞっとする。
平気でウソを言っても、大声でまくし立てれば何でも通ってしまうような社会(それが「強いアメリカ」?)になってしまうのでは...と心配になる。
いま、アメリカ国内からカナダに移住を希望する人が急増しているらしい。
(飯村和彦)
(2016年11月9日「TVディレクター 飯村和彦 kazuhiko iimura BLOG」より転載)