日本に来て、住むことになったのは兵庫県姫路市。
姫路市といえば、世界に誇る姫路城が街の中心に圧倒的存在として君臨する街である。
僕がこの城下に加わったのは今からちょうど30年前の事だ。
姫路城から車で20分ほどの距離にある僕が通っていた小学校は、全校生徒で700人は
超えていてと思うが、入学した当時、外国人は僕以外にはいなかった。
700人の日本人の生徒に対して、僕1人がアフリカ系の生徒。つまり1人だけみんなと違う
黒い肌をしていた。
幼稚園から小学校にあがると、はじめて見るエイリアン(異邦者)を見るために幾度となく人だかりが
できた。
随分と賑やかな孤独を味わった。
そんな僕を支え守ってくれたのもまた、保育園からの日本人の友人たちであった。
ある時、国語の授業で暑かった絵本の主人公に、僕はとてもシンパシーを感じた。
その主人公の名前は
スイミーだ
スイミーは黒い小魚で、行動を共にしていた仲間たちとはぐれ、新たな群に加わった
赤いたくさんの小魚の群の中、スイミーはそこの唯一の黒い小魚だった。
この物語と、主人公によって僕は励まされていた。
それでは、小さな小魚とアフリカ少年がいかに心を通わせたかを
清らかな海を想像しながらお楽しみください。