29.ホープ・ヒックス・ホワイトハウス広報部長(28)
前任のアンソニー・スカラムッチ氏が突如解任された後、暫定的に広報部長を務めてきたが、ホワイトハウスは9月12日、広報部長就任を正式に発表した。
トランプ政権発足後、3人目のホワイトハウス広報部長である。
サラ・ハッカビー・サンダース大統領報道官とともに女性同士が二人三脚で、ホワイトハウスにおけるトランプ政権のコミュニケーション戦略を指揮することになった。
トランプ政権では、初代広報部長のマイク・ダブキ氏が、3月6日の就任から3カ月後の5月末に辞任している。
トランプ大統領の娘夫婦であるイヴァンカ・トランプ大統領補佐官とジャレッド・クシュナー大統領上級顧問夫妻と懇意であった前任のスカラムッチ氏は、7月下旬に広報部長に就任した。
ところが、同氏の起用に反発したラインス・プリーバス大統領首席補佐官が7月28日に事実上更迭。
代わりに、ホワイトハウスの規律と秩序を重視するジョン・ケリー国土安全保障長官が横滑りの形で大統領首席補佐官に就任すると、スカラムッチ氏の更迭を求めるケリー氏の進言をトランプ大統領が受け入れ、スカラムッチ氏は在職わずか10日間で広報部長を解任された(2017年7月25日「トランプ政権『閣僚・重要ポスト人名録』(16)スカラムッチ、サンダース」、2017年8月2日「『辞任』『解任』続出で迷走するホワイトハウスの『課題』」などを参照)。
ヒックス氏は、トランプ政権発足後から彼女のために特別に新設されたポストである戦略コミュニケーション担当部長を務めていたが、スカラムッチ氏の突然の解任を受け、8月中旬から暫定的に広報部長を務めていた。
大学卒業後にニューヨークのPR企業に就職したが、その際に顧客であったイヴァンカ氏の知己を得る。そして2014年8月から、トランプ氏が大統領に就任するまで会長兼社長を務めていた不動産開発、投資、不動産資産管理を主要事業とする「トランプ・オーガニゼーション」に勤務し始め、イヴァンカ氏のファッション事業の展開を支援していた。
そのまま従業員として仕えていたところ、2015年1月、トランプ氏が自らの報道担当を務めるよう直接要請。そして実際に同年6月、トランプ氏がトランプタワーで2016年大統領選挙への出馬を表明した後、報道官、広報部長などの立場からトランプ選対本部の中枢で選挙キャンペーンを支えてきた、いわば側近中の側近である。
こうした経緯もあるために、トランプ一族との関係は非常に強固である。ただし、トランプ氏の選挙キャンペーンに参画する以前に他の政治活動やボランティア活動に関与したことが一切なく、政治とはまったく無縁であったため、政治的キャリアには乏しい。
テキサス州ダラスのサザンメソジスト大学卒業。コネティカット州グリニッチ出身。1988年10月21日生。
足立正彦 住友商事グローバルリサーチ シニアアナリスト。1965年生れ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より現職。米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当する。
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(2017年9月21日フォーサイトより転載)