2018年本屋大賞、辻村深月さんの『かがみの孤城』に決定 「かつて子どもだったすべての人へ」

「今自分に居場所がないと感じている人、味方がいないと感じている人」に読んで欲しいと語りました。
時事通信社

【2018年本屋大賞】辻村深月氏『かがみの孤城』に決定

 全国の書店員が"今いちばん売りたい本"を決める『2018年本屋大賞』(本屋大賞実行委員会主催)発表会が10日、都内で行われ、辻村深月氏の『かがみの孤城』(ポプラ社)が大賞に選ばれた。

 辻村氏は、1980年2月29日生まれ。千葉大学教育学部卒業。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で「第31回メフィスト賞」を受賞しデビュー。『ツナグ』(新潮社)で「第32回吉川英治文学新人賞」を、『鍵のない夢を見る』(文藝春秋)で「第147回直木三十五賞」を受賞。ほかの著書に『凍りのくじら』『本日は大安なり』『ハケンアニメ!』などがある。

 発表会に登壇した辻村氏は「もっと緊張するかなと思ったのですが、顔見知りの書店員さんや普段お仕事で関わっている皆さんがいてくれて、温かいアットホームな気持ちでここに立つことができてうれしいです」と喜びのコメント。

 受賞作について「かつて子どもだったすべての人へ向けて書いた作品です。主人公は中学1年生のこころという女の子で、あることが原因で学校に行けなくなってしまいます。その子が、ある日家の中にいると部屋の中の鏡が光って、その向こうにお城があって、そこで自分と似た境遇の子どもたちと冒険をする話です」と紹介。

 当初は『かがみの城』というタイトルを想定していたが、担当編集者が提案した「敵に囲まれて身動きがとれなくなっている城」という意味の"孤城"をつけたという。「身動きがとれなくて部屋に閉じこもることは、子どもでも大人でもあることです。その誰かに対して、外に出ているのが怖いのならこちらから迎えに行くという気持ちで、鏡を入り口に冒険に出かけてもらうことにしました」と説明した。

 「大人や子どもに限らず、今自分に居場所がないと感じている人、味方がいないと感じている人にページを開いてもらって、こころたちと冒険に行ってほしい」と願いを込めた辻村氏。大賞作が映像化されていることについては「クライマックスのシーンはアニメーションのように思っていたので、アニメ化してもらえたらうれしいなと思います」と話していた。

 同賞は今年で15回目。過去の大賞作品は、三浦しをん氏の『舟を編む』、伊坂幸太郎氏の『ゴールデンスランバー』、百田尚樹氏の『海賊とよばれた男』、宮下奈都氏の『羊と鋼の森』など、多数映像化されてきた。

 同賞は、2016年12月1日~2017年11月30日に刊行された日本の小説を対象に実施され、ノミネート作が決まる1次投票には、全国504書店より665人が参加。ノミネート作品をすべて読んだうえで全作品に感想コメントを書き、ベスト3に順位をつける2次投票には、311書店より374人が参加した。

 プレゼンターとして、昨年大賞を受賞した恩田陸氏が登場し、辻村氏を祝福した。また、「Yahoo!ニュース」と本屋大賞が連携し、ノンフィクション作品を対象とした部門賞の新設が決定。2018年度内に受賞作品を発表予定としている。

■2018年本屋大賞 順位一覧

大賞:『かがみの孤城』辻村深月(ポプラ社)

2位:『盤上の向日葵』柚月裕子(中央公論新社)

3位:『屍人荘の殺人』今村昌弘(東京創元社)

4位:『たゆたえども沈まず』原田マハ(幻冬舎)

5位:『AX アックス』伊坂幸太郎(KADOKAWA)

6位:『騙し絵の牙』塩田武士(KADOKAWA)

7位:『星の子』今村夏子(朝日新聞出版)

8位:『崩れる脳を抱きしめて』知念実希人(実業之日本社)

9位:『百貨の魔法』村山早紀(ポプラ社)

10位:『キラキラ共和国』小川糸(幻冬舎)

■歴代大賞作品(書名、著者、出版社)

第1回:『博士の愛した数式』小川洋子(新潮社)

第2回:『夜のピクニック』恩田陸(新潮社)

第3回:『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』リリー・フランキー(扶桑社)

第4回:『一瞬の風になれ』佐藤多佳子(講談社)

第5回:『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎(新潮社)

第6回:『告白』湊かなえ(双葉社)

第7回:『天地明察』冲方丁(角川書店)

第8回:『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉(小学館)

第9回:『舟を編む』三浦しをん(光文社)

第10回:『海賊とよばれた男』百田尚樹(講談社)

第11回:『村上海賊の娘』和田竜(新潮社)

第12回:『鹿の王』上橋菜穂子(KADOKAWA 角川書店)

第13回:『羊と鋼の森』宮下奈都(文藝春秋)

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