中国の通信機器最大手「ファーウェイ(華為技術)」は8月9日、広東省で開かれたイベントで、独自に開発したOS「鸿蒙(ホンモン)」を発表した。英語名は「Harmony(ハーモニー)」。
このOSはいったいどのようなものなのか。ファーウェイの発表や、現地メディアの報道などから探る。
■プランBとして開発
そもそも、ファーウェイの販売するスマホには、日本人にも馴染みの深いGoogle製のOS「アンドロイド」が使われている。
ここに暗雲がたちこめたのは2019年5月。トランプ政権がファーウェイに対する事実上の輸出規制を発表。Googleもソフトの提供などのビジネスを中止するとした。
もともと、アンドロイドは設計図が公開された「オープンソース」のOS。しかしファーウェイは、アンドロイド自体を使い続けることはできるものの、OSのアップデートや一部のアプリの使用に支障が出る可能性があった。
アメリカ次第で、アンドロイドが安定的に使い続けられなくなるかもしれない。複数の現地メディアによると、ファーウェイはアンドロイドを優先しつつも、使えなくなった際の「プランB」として自前のOSの開発を急いでいた。
それが「鸿蒙」だ。
■天地が分かれる前の時代
「鸿蒙」とは、中国の神話にある、天地が分かれる前の混沌とした時代のこと。中国語では「hongmeng(ホンモン)」だが発音しにくく、英語名は「Harmony」とされた。
余談だが、Harmonyは中国語で「和谐(hexie)」と書く。これは政府当局による削除や粛清などを意味する隠語でもある。
存在自体は報道ベースで語られてきたが、正式に発表したのは8月9日が初めて。発表したファーウェイの余承東(リチャード・ユー)消費者グループCEOによると、もともとはモノとインターネットをつなぐIoT向けに開発されたという。
スマートテレビや車、それにウェアラブルデバイスなどに搭載されるが、スマホに導入することもできるという。
余CEOは発表の場で「鸿蒙はすでにアンドロイドよりも性能も安全性も高い」とした。
ファーウェイ製スマホのOSを、いつ「鸿蒙」に切り替えるかについては、「いつだって出来ます。ただ現状の使用環境を考えた場合、アンドロイドを優先します。使えなくなったら、いつでも切り替えられますが」と自信たっぷりだった。
■実は未熟児?
一方で、現地メディアの「網易」は、鸿蒙を「未熟児」と評している。本来は2020年春に発表する予定だったのが、トランプ政権の圧力などで開発を早めたという。
また、内部の人間の話として「まだあのOSは未熟児だ。この時期に多くを発表したのは博打ではないか」とする談話を紹介している。
「網易」はそうした事情がありながらも、人材や開発費用を大量につぎ込んだことなどから「準備はすでに十分だ」としている。
「鸿蒙」を搭載した初の製品は、8月10日発売のファーウェイ製スマートテレビ「栄耀(Honor)」だ。スマホへの搭載は、アメリカの出方次第になると見られる。