香港政府が象牙取引終了を決意 実現に向けた法案が可決

残る課題は?
Bobby Yip / Reuters

香港の立法会で2018年1月31日、域内での象牙取引を終了させるための法案が可決されました。2021年までに象牙の国内取引を禁止することや違反した場合の罰則を強化することが盛り込まれています。年間2万頭ともいわれるアフリカゾウが密猟の犠牲になる中、象牙の違法取引撲滅に向けた前進と言えます。中国への違法輸出が続く日本でも、象牙をめぐる政策の改善が求められます。

香港で象牙取引禁止となる法案が可決

2018年1月31日、香港の立法会(議会)で域内の象牙取引を終了させるための法案が可決されました。 香港は、域内の消費以上に象牙の違法取引の「中継地」として注目されてきた場所の一つです。 なぜなら、ゾウの密猟が多発しているアフリカから、最大の最終消費地である中国本土に向けた密輸ルート上で、罰則の緩さなどから犯罪ネットワークが目をつけ利用していると考えられてきたためです。 2017年7月には香港で、過去30年で最大級の約7.2トンもの象牙が押収される事件も摘発されました。 こうした背景を踏まえて、香港政府は域内での象牙取引を禁止する方針を示していましたが、政策を実行させるための手立てが決まっていませんでした。 今回確定した法案は、その状況を大きく進展させるものであり、香港を含めた中国国内の象牙取引終了に向けた政策が、本格的に動き始めたことになります。

残る課題

法案では、2021年末には象牙の域内での取引を禁止することや、違反した場合の罰則を強化することが盛り込まれています。 こうした香港の決断は象牙の違法取引撲滅へ向け大きく前進したものと言えますが、まだまだ課題も残ります。 ひとつには、香港域内での象牙取引が2021年末までは継続されること。 中国本土では、2017年12月末をもって国内の象牙取引が禁止とりましたが、香港で認められているこの時間的な猶予は、中国本土から香港の消費地に向けた象牙の違法流出につながる怖れがあります。 実際これまで、香港は中国本土へ向けた象牙の経由地として大きな問題を抱えていましたが、これからはその逆の課題にも対処しなければなりません。 これまで以上に厳しい監視と取り締まりが必要となり、中国当局との連携も重要となります。 そのほかには、違法取引を引き起こす根本原因である、「象牙の需要」につても削減していく、といった取り組みも必要です。 中国では、国内の象牙取引禁止措置について認識していないことや、禁止措置を知った上でも象牙購入の意思を示した国民が一定数いたことが、WWFとトラフィックが中国で行なった意識調査から明らかになっています。

隣国である日本への懸念

こうした懸念は、日本でも今、広がっています。 2017年11月末、東京港で中国籍の男性が中国向けのコンテナ船に乗り込む際、およそ7㎏におよぶ象牙を所持していたため、密輸出未遂の容疑で逮捕される事件が発生しました。 さらに、この事件では、日本の象牙販売業者がこの密輸出に関与していた疑いで逮捕されています。 2011年~2016年の6年間に日本から違法に輸出された象牙が、押収が報告されただけでも2.4トン以上。 日本政府は、日本国内の象牙市場が今起きているアフリカゾウの密猟には直接関与していない、という認識を示していますが、違法な輸出の温床となりかねない現在の日本の状況は今後、国際的な象牙の問題の中で見過ごせない大きな問題となる可能性があります。 東京港での違法事例の他にも、過去に押収された日本由来の象牙のうち95%は中国向けのものであったという事実も確認されており、日本が抱える問題の深刻さを示しています。 中国は象牙の違法取引撲滅に向け、国内の象牙取引を終了させる政策を実行させています。 香港も課題は残るものの政策転換の意思を示し、域内での取引停止という目標を法制度で定めました。 日本には、過去に合法的に輸入した象牙の在庫が多数ありますが、これを違法に流出させて、各国の努力を阻害し、象牙の闇市場(ブラックマーケット)を拡大させる要因を生み出す事態は、断固として防がなくてはなりません。 象牙の在庫を多数抱える日本の国際的な責任は重いものです。 今後どのような政策をもって違法な象牙取引の撲滅に取り組むのか。国内の象牙取引をどう厳格に管理していくのか、その姿勢が問われています。

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