この美談は、作り話だったと判明した。ニュージャージー州バーリントン郡の検察官は2018年11月15日、共謀して美談を仕立て上げ、寄付サイトを通じて多くの人から金をだまし取った疑いで、3人を起訴したと発表した。
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ホームレスのためにクラウドファンディングで約36万ドル(約4000万円)を集めた女性が話題になっている。有り金をはたいて助けてくれたことへの、恩返しだという。
女性は、アメリカ東部のニュージャージー州に住むケイト・マックルーさん(27)。ことのいきさつを、マックルーさんは寄付サイトで次のように説明している。
ある日の午後11時ごろ、高速道路でフィラデルフィアへ向かう途中、ガソリンが足りないことに気づき、心臓が飛び出そうになった。行けるところまで行って停車し、近くのガソリンスタンドまで歩くことにした。
ホームレスのジョニー・ボビット・Jr(34)さんに声をかけられたのは、その時だった。ボビットさんは、鍵をかけて車で待っているようにと、言ってくれたという。
しばらくして、ボビットさんはガソリン入りの赤い缶を持って戻ってきた。最後の所持金20ドル(約2000円)を、マックルーさんが安全に帰宅するために、使ってくれたのだ。
マックルーさんは持ち合わせがなかったが、お金が払えないことを伝えても、ボビットさんからは何も求められなかった。必ず返しに来ると約束をして、ありがたい申し出を受け取った。
翌日、ボビットさんにガソリン代を返しに行った。ジャケットに手袋、帽子、それに暖かい靴下を持って。
その後も、繰り返しボビットさんを訪ねたマックルーさんは、ボビットさんが元海兵隊員で、救急隊員でもあったことを知った。
ボビットさんのホームレス生活は1年以上に及んでいた。地元メディアの「フィラデルフィア・インクワイアラー」によると、ボビットさんを知る友人のひとりは、ボビットさんは才能ある救急隊員だったと話した。別の友人は、ホビットさんの不運は、ドラッグが原因だと説明したという。
ボビットさんの優しさと、仲間に親切にする態度に胸を打たれたマックルーさんは、ボーイフレンドのマーク・ダミーコさんとともに11月10日、ボビットさん支援のためのクラウドファンディングサイトを開設。10万ドル(約1000万円)を目標に、寄付を募り始めた。ホビットさんが仕事を得るために必要な期間の、家賃や車の費用に充てようと考えたのだ。
「ジョニーは仕事を見つけたいと強く希望しています。もし、毎晩休める場所があれば、元の生活に戻れるのではないかと思います」
「フィラデルフィアは既に寒いですが、冬になったらどうなるか想像できません。この人が家に住めるように助けてください」
そう、マックルーさんが訴えると、この話はネットやメディアで大きく話題になり、11月26日には約36万ドル(約4000万円)にも及んだ。寄付した人は約1万3000人を越えている。
マックルーさんは24日、「手を差し伸べてくれてありがとう」と感謝を述べ、ボビットさんや弁護士、ファイナンシャルアドバイザーと、これからのことを相談していると報告した。
ボビットさんは今回のことが現状を打破し、人生を変えるきっかけになったと考えている。寄付金の一部は、これまで支えてくれた団体などに寄付する予定だ。