コロナウイルス感染が世界中に拡大する今、人と距離を取るため、仕事はできる限り自宅で行い、公共交通機関を使わず、人混みを避けるよう求められている。
自宅にとどまらなければいけないことは生活に不都合をもたらす一方で、一定の人たちにとって実行不可能なことではない。
しかし、DV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者にとっては、家の中が差し迫った危険な場所になる可能性がある。
DVの被害者にとって、職場がパートナーによる予測不可能な暴力からの一時的な逃げ場になっている場合がある。
「DVの加害者は被害者を周りの人から孤立させ、同僚や友人や家族との関係を断ち切ろうとします」
「仕事に行けず、同僚とつながることができないと、(被害者たちの)立場はますます弱くなります」と、DVを終わらせるためのナショナル・ネットワークのアリソン・ランダル氏は話す。
何百万人もの人たちが自主隔離した中国では、DVの件数が急速に増えたことを活動家たちが伝えている。
中国のフェミニズム運動を取り上げた「Betraying Big Brother」の著者レタ・ホン・フィンチャー氏は、「DVの助けを求める嘆願が急激に増えたことを活動家たちから聞いている」とハフポストUS版に話す。
「街がロックダウンになり、外出できず、自宅にとどまらなければならない中で、DVの被害者は逃げ出すことが急速に難しくなっています」
■ 経済的な理由から逃げられないケースも
ランダル氏は、DV被害者が受ける経済的な影響も心配する。
アメリカでは新型コロナウイルスで失職する人が急増している。
また、有給の病気休暇がない状態で働いている人たちは、体調悪化や自主隔離、職場閉鎖などで仕事を休むと収入の道が閉ざされてしまう。
そうなるとさらに、暴力的なパートナーから逃げるのが難しくなる。
「新型コロナウイルスは、ウイルスそのもののためだけではなく、経済的な理由で、暴力から逃れられない状況を作る可能性があります」とランダル氏は話す。
■災害の後にDVが増える傾向がある
過去の調査から、ハリケーンなどの自然災害の後に、DVの件数が増える傾向があることがわかっている。
加害者が家族にコンタクトを取りやすくなるだけでなく、サポートシステムが混乱しているときには、加害者がサポートシステムなどの目を逃れやすくなるからだ。
例えば2017年にハリケーン・ハービーがテキサス州ヒューストンを襲った際には、DVの報告件数とその内容の重大さがともに増加。DVによる殺人数も急増した。
さらに、ハリケーンで裁判所が破壊されたため、被害者は緊急保護命令を要請できなかった。中には、被害者が加害者と同じ緊急避難所に避難しなければならなかったケースもある。
「暴力的ではなかった人が突然暴力的になる、ということはありませんが、ストレスを感じた時や地域のサポートが少なくなった時にDVが増えることを、私は心配しています」とランダル氏は懸念を伝える。
全米DV反対連合・会長のルース・グレン氏は、他人との距離を保たなければいけないことで、DV被害者が保護施設を敬遠してしまうことを心配する。
特にこれまで暴力を受けた経験がなかった人や保護施設に逃れたことがない人は、施設の衛生環境や知らない人と空間を共有することを心配して、逃れることをためらうかもしれない。
「被害者は安全だけではなく、福祉や健康についても考えた上で決断をする必要がありますから」とグレン氏は述べる。
しかしグレン氏は、保護施設には緊急時の計画や、居住者や駆け込んでくる人たちの安全を守るための決まりがあるため、サポートが必要になればDV保護施設に行くよう求めている。
「保護施設に行く必要があるか迷っている人に、私は安全だと感じられる場所に行くべきだと伝えたいです」
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。
この記事にはDV(ドメスティックバイオレンス)についての記載があります。
子どもの虐待事件には、配偶者へのDVが潜んでいるケースが多数報告されています。DVは殴る蹴るの暴力のことだけではなく、生活費を与えない経済的DVや、相手を支配しようとする精神的DVなど様々です。
もしこうした苦しみや違和感を覚えている場合は、すぐに医療機関や相談機関へアクセスしてください。
必ずあなたと子どもを助けてくれるところがあります。
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