テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」が2020年春に社外スタッフ約10人との契約を終了することに対し、民放労連らが撤回を求めている。
同番組では2019年に番組内でのハラスメント事案が明らかになり、テレビ朝日社員が懲戒処分となったばかりだ。
番組へ批判の目が向けられる中で、番組制作を担ってきた外部の制作スタッフの契約が終了となることを受け、新聞労連や民放労連、出版労連などで作る「日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)」は2月13日、「『報ステ』を問う」と題する集会を開いた。
報ステをめぐる近年の動き
2016年3月 古舘伊知郎キャスターが降板。後任は富川悠太アナウンサー
(2018年10月に、元テレ朝アナウンサーの徳永有美さんも加わる)
2019年 番組内でのハラスメント問題が発覚
2019年12月 自民党の世耕弘成参院幹事長の発言の取り上げ方について「誤解を招く表現」があったとし、11日の放送でおわび
2019年12月26日 社外スタッフとの契約終了について、民放労連が撤回を求める委員長談話を出す
2020年春 番組リニューアル?
(MICの説明や、過去の報道などから)
「体制刷新」で契約終了
集会でのMICの説明などによると、2019年12月に番組内でスタッフ全体に向けて「体制刷新」の説明がされた。その「体制刷新」の内容の中に、テレビ朝日社員の人事異動だけでなく、外部スタッフ10人程度の契約終了が含まれていたという。
MICが2020年1月10日に発表した「テレビ朝日『報道ステーション』スタッフ契約打ち切りによる『番組解体』を許さない」では、「雇用不安がジャーナリズムの萎縮に繫がることを危惧」したほか、ハラスメント問題が起きた後に社外スタッフとの契約を終了することに関して「そうした問題が起きた後に、テレビ朝日が取るべき対応は、加害者を厳罰に処したうえで、スタッフたちをしっかり守ることです」と批判した。
「10年以上尽くしてきたのにまるで使い捨てされたよう」
集会では、契約終了を告げられた当事者の声も紹介された。
「少しでも政治や社会や日本がよくなればとの思いで、番組のため10年以上尽くしてきたのにまるで使い捨てされたようで残念です」
「世の中に届けなければならないことは何なのか、時には闘いながら、毎日の放送を出してきました。今回の事態は、そうした現場スタッフの姿勢を否定するものだと受け止めざるを得ません」
ハフポスト日本版の取材でも番組関係者からは、「急に契約終了が告げられたことで、番組に残る人の中にも不安や不信感がある。番組内では早速萎縮が始まっていて、『番組上層部に睨まれたくない』『事を荒立てるのはやめよう』という雰囲気がある。言論機関とは思えない、最悪の環境だ」という声も聞こえてくる。
「スタッフが声を出せる体制を確保することが急務だったはず」
集会では、ハラスメント問題の専門家、弁護士らが発言した。
元TBS社員の杉尾秀哉参院議員は、「テレビ報道で働く全ての人にとって、旧ニュースステーション、報道ステーションは特別な番組です。新たなテレビ報道の地平を切り開いたと言っていいと思います。それを誰が支えてきたのか? 手練れのディレクターが番組を支えているんです。そうした番組の中核部隊であり、『番組のカラー』を決める人たちが切られようとしている」と自身の経験を交えて話した。
文書でコメントを寄せた竹信三恵子・和光大学名誉教授(元朝日新聞記者)は「公正な報道は、権力者に不都合な報道をしても身分を保証されるという基盤があってはじめて成り立つものです。このように契約が終わったからということで打ち切りが可能なら、報道の自由などなくなってしまいます」と批判した。
また、番組でのハラスメント事案にも言及し、「そうした問題があったからこそ、直接雇用と無期雇用の確保によって、スタッフが声を出せる体制を確保することが急務だったはずです」と指摘した。
金平茂紀キャスター「他局のことに口出しするのは異例のことです」
TBS「報道特集」の金平茂紀キャスターもビデオメッセージを寄せた。
「よそのテレビ局で起きていることについて、あれこれ口出しするというのは異例のことです。去年までだったら、『他の局で起きていることだから、黙ってようかな』という風に思っていたかもしれません。ただ、気持ちが変わりました」
「報道ステーションの職場で起きていることは、日本のテレビ局のどこでも起こりうることだなと思っています。それはなぜか。番組づくりや報道に関わっている人たちの中で、それなりの権限を持っている人たちで、恐ろしいほどのスピードで腐敗、劣化、堕落が起きているという風に思っているからです」
集会では、テレビ朝日に対して契約終了を撤回することを求める「集会宣言」を採択した。宣言はテレビ朝日と番組スポンサーに送付するという。
テレビ朝日「指摘はあたらない」
テレビ朝日広報部はハフポスト日本版の2月12日の取材に対し、派遣契約スタッフとの契約を更新しないことを認めた上で、「派遣打ち切り」などの批判には「指摘はあたらない」と主張した。
■テレビ朝日広報部の回答
「報道ステーション」のリニューアルの一環として、派遣契約スタッフの10人程について、それぞれの派遣元の会社に対し、今年3月までの契約期間の満了後、番組としては「契約を更新しない」旨、昨年末にお知らせしました。
これらの方々のほとんどについて、派遣元の会社に、今年4月以降も、当社の別の報道情報番組などの制作に携わっていただけないか提案し、話し合いが進んでいます。このため「派遣打ち切り」などの指摘はあたらないと考えております。