日産自動車の会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)ら2人が金融商品取引法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕されたことを受けて、西川(さいかわ)広人社長は11月19日夜、横浜市の本社で記者会見を開いた。
西川氏は、ゴーン氏に組織の権力が集中しすぎたことが問題を引き起こしたとの認識を示し、「強い憤りと落胆を覚えている」などと発言。自身の上司に当たる「カリスマ経営者」への怒りをあらわにした。
「憤りと落胆」
「残念という言葉を遥かに超えて、強い憤り、私としては落胆ということを強く覚えております」。西川社長はそう言って悔しさをにじませた。
この会見の数時間前、同社トップのゴーン氏が東京地検特捜部に逮捕された。実際に受け取った報酬よりも少ない金額を有価証券報告書に記載した金融商品取引法違反容疑で、過少申告額は5年で総額50億円に上るという。
ゴーン氏が同社の最高執行責任者に就任したのは1999年。当時、経営不振に陥っていた日産の立て直しのため、資本提携したフランスの自動車メーカー、ルノーから送り込まれた。
ゴーン氏は卓越した経営手腕を発揮し、徹底したリストラ策によって短期間で日産をV字回復させることに成功した。
「カリスマ経営者」として一躍注目を集め、それ以来、20年弱にわたって同社の経営を引っ張ってきた。
権力の集中
だが、そうした「長期政権」が次第にゴーン氏への権力集中を招いた。「長年にわたるゴーン統治の負の側面と言わざるを得ない」と西川氏は指摘した。
ゴーン氏はルノーの最高経営責任者と三菱自動車の会長も兼務している。西川氏は「43%の株を持っているルノーのトップが日産のトップを兼任していることは、あまりにもガバナンス上、1人に権力が集中しすぎる」とも述べた。
西川氏によると、問題の発覚は「内部告発」がきっかけだったという。告発を受けて社内調査を実施。その結果、報酬の過少申告のほか、投資資金や経費を私的な目的で支出させた不正行為も明らかになったという。
日産はこうした情報を東京地検に提供。この日の逮捕へとつながった。
西川氏は22日に取締役会を招集し、ゴーン氏の代表権、会長職を解くことを提案する方針を明らかにした。
その上で、今後の経営のあり方についてこう述べた。「極端に特定の個人に依存した形から抜け出して、よりサステイナブル、維持可能な形を目指す」