「女性選手は男性より責任が少なくスキルも低い」。主張した米サッカー連盟の会長、批判を受けて辞任へ

性差別的な主張が、選手やファン、スポンサーから非難されていました。

女性選手の報酬が少ないのは、男性選手より責任が少なく、スキルも低いからだ ―― こう主張して批判を受けていたUSサッカー連盟(USSF)のカルロス・コルデイロ会長が、辞任を表明した。

USSFのコルデイロ会長はTwitterで、主張について謝罪し、会長の座を退くとつづった。

「私のたった一つの任務は、連盟のために最善を尽くすこと。そして今求められているのは、新しい方向性を示すことです」

「今週私たちが提出した裁判文書に書かれていた表現は、特に女性代表チームの選手たちに、大きな侮辱と痛みを与えました。彼女たちはもっとふさわしい待遇を受けるに値します」

It has been an incredible privilege to serve as the President of U.S. Soccer.

My one and only mission has always been to do what is best for our Federation.

After discussions with the Board of Directors, I have decided to step down, effective immediately. My full statement: pic.twitter.com/4B7siuIqcL

— Carlos Cordeiro (@CACSoccer) March 13, 2020

後任には、副会長のシンディ・パーロー・コーン氏が着く。

■「男性選手にはより大きな責任が求められている」と主張した

近年ジェンダー間の賃金格差に注目が集まっている、アメリカのスポーツ界。

2019年3月には、28人の女性サッカー選手が平等な報酬を求めて、USSFを訴えた。

今回問題になったのは、USSFが3月9日に提出した裁判書類に書かれていた主張だ。

AP通信によると、USSFは男性選手と女性選手の報酬に大きな差がある理由を「女性選手と比べて、男性の代表チームの選手にはより大きな責任が求められている」そして「スピードや力の面においても、男性チームの選手は女性チームの選手よりさらに高いレベルのスキルが求められている」からだと説明した。

そのほかにも、男性代表チームは比較的「敵対的」なファンがいる環境でプレーするのに対し、女性代表はより「友好的」なファンがいる環境で試合をすることなどを、報酬格差の理由として挙げている。 

■「石器時代のような議論」 各所から反発が起きた

こういったUSSFの主張を、原告の広報モリー・レビンソン氏は「石器時代のような議論」と厳しく批判。スポンサーやサポーターたちからも、強い反発が起きた。

NPRによると、最大のスポンサーの一つであるコカ・コーラのケイト・ハートマン氏は「不適切な発言は到底容認できず、心底がっかりしています」と、USSFの姿勢を非難した。

「コカ・コーラ社は、アメリカ国内だけではなく世界中でのジェンダー平等、公正、女性のエンパワーメントを強く支持します。そして、それをパートナーにも求めます」

また、ファンの団体「アメリカン・アウトロー」も、「アメリカだけでなく世界中のいかなる国でも、このような視点でスポーツが運営されるべきではない」と、USSFへの反発をツイートしている。

女性代表チームキャプテンのメーガン・ラピノー選手も、「こういった主張は、長い間彼らが心の中で思ってきたことなんだろう、と私たちは感じています。しかし、あからさまな女性蔑視、性差別が主張として実際に私たちに向けられるのを目にするのは、残念なことです」と、USSFへの怒りを語った

Unity. 4 stars only. Who's with us? pic.twitter.com/AYv2YlcSl7

— USWNT Players (@USWNTPlayers) March 12, 2020

(ツイート説明:3月11日に開催されたシービリーブスカップで、女性代表チームの選手たちは、USSFに抗議してユニフォームを裏返しに着た。裏返しに着ることで、USSFのロゴは見えにくくなるが、W杯の勝利数を表した4つ星は見える) 

相次ぐ反発を受けて、コルデイロ会長は11日に謝罪声明を発表する事態に追い込まれていた。

■「 私たちは平等に支払われたい。ただそれだけ」

アメリカの女性代表チームは、世界ランク1位を誇る強豪チームだ。ワールドカップで4回優勝し、オリンピックでは4つの金メダルと1つの銀メダルを獲得している。  

一方、男性代表チームは国際試合でのタイトルはとったことがないが、報酬は女性選手よりはるかに多いと原告の弁護士は指摘する。

この報酬格差は、同一賃金法と公民権法に反するとして、28人の女性代表チームの選手ら国際女性デーに当たる2019年3月8日にUSSFを訴えた。裁判では、平等な賃金と6600万ドルを超える賠償金の支払いを求めている。

ラピノー選手は2019年8月のabcのインタビューで次のように語っている。

「私たちは試合に出場する。試合に勝っても、負けても、引き分けであっても、私たちは平等に支払われたい。ただそれだけ」

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