働き方やライフスタイルの多様化に伴い、働き手が組織に求める環境や働きがいなども多様化が進んでいる。
就活が「売り手市場」と言われる現代、働き手の確保や離職率を下げる取り組みは組織にとって欠かせない経営戦略だが、働き手と組織が向き合うことは、人と人が向き合う行為でもあるため、複雑でもある。
しかし、骨の折れる「働きやすさ・働きがいの向上」を通じて働き手のウェルビーイングを高めることは、組織への帰属意識を高め、組織が目指すビジョンへの大きな前進にもつながる。
そうした中、朝日新聞社とパーソルグループのミイダスは2月下旬に「はたらく人ファースト」な働き方の推進を目指す「はたらく人ファーストアワード2024」授賞式を共催。ハフポスト日本版の泉谷由梨子編集長も、審査員として登壇した。
受賞企業のユニークな取り組みや、去年に引き続きゲストとして駆けつけたお笑いコンビ「チョコレートプラネット」のトークセッションなど、1部（2部制）の様子を紹介する。
2040年には1200万人分の労働力が不足する？
2回目の開催となる今回のアワードでは、賛同企業数が昨年の約3倍の3627社、応募企業数が1009社から1727社まで増え、その規模は飛躍的に大きくなっている。
ミイダス代表取締役社長・後藤喜悦（きえつ）さんは「企業と従業員の成長にとって、働きがいの向上は不可欠な要素です。多様化する働きがいへの答えは1つではなく、これを分解して打ち手を考えるコストは小さくありません。本アワードは『働きがいと企業成長を大切にしたい』『企業と働き手を支援したい』という思いから立ち上げられ、エントリー費用も一切かかりません。今年も多くの企業の、独自の理念に根ざした素晴らしい取り組みを知り、深く感銘を受けております」と本アワードに託した思いを語った。
朝日新聞社の渡部秀一さんは「2040年には少子高齢化と人口減少により、生産年齢人口が現在の8割まで減少し、約1200万人分の労働力が不足するとも言われています。しかし、AIの進展により新たなサービスが次々と生まれる可能性など、未来には希望もあります。AIとの共存をどう図るかが問われている時代ですが、最終的に未来を切り開くのは、現場で働く方々の声と実践です。働きやすい環境を整え、それぞれの働きがいを尊重することが、持続可能で生産性の高い社会を築く鍵となるでしょう」と話し、日本における働きがい向上の意義を説明。さらに「本アワードは単なる表彰にとどまらず、受賞企業のベストプラクティスを広く共有し、新たな気づきを促し、さらなる実践へとつなげる場でありたいと考えています」とコメントした。
チョコプラが「成功」のために大切にしていること
アワードには、お笑いコンビ「チョコレートプラネット」の松尾駿さんと長田庄平さんも駆けつけ、働くことをテーマにしたトークセッションを通じて盛り上げた。
前回のアワードでの「芸人以外だったらどんな仕事をしたいですか？」という質問の回答にちなんで、松尾さんは寿司職人、長田さんはデザイナーをそれぞれイメージした衣装で登壇した。
トークセッション内の「コンビを組んで約20年、お互いの大切にしていることは何ですか？」という質問に対し、松尾さんは「『ゴシップを仕入れること』ですね。いつも車を運転してくれるので、車内で話すネタをストックしています。特にゴシップを仕入れておくと会話が弾むんです（笑）。常に何を話そうかなって考えて暮らしていますね」と回答。この回答に対し、長田さんは「いつも勝手に乗ってくるんですよね。結局、途中通勤が一緒みたいなことが多いですね」と話し、コンビの仲の良さを垣間見るエピソードで会場を和ませた。
また「お笑いの道で、お2人にとって『これをしとけば絶対成功する』というものはありますか？」という質問に対し、長田さんは「成功するまでやること、『自分は成功した』と思うことですね。成功の定義は人それぞれなので、テレビに出て、大きなお金を稼がなくても、自分たちのネタをやれているならば、それはその人にとって成功かもしれません」と回答し、社会軸ではなく、自分軸の成功を持つことの重要性に光を当てた。一方、松尾さんは「とにかく大きい声出しておけば何とかなります。なんか上手くいった雰囲気になるんですよね。それでも滑った時はもっと大きな声で！」と大声で回答し、長田さんと対照的なトーンの回答で会場に大きな笑いを起こした。
トークセッションの最後に、長田さんは「本アワードに選ばれることは名誉なことなので、企業の皆さまは誇りに感じていただけたら嬉しいなと思います」と賛辞を送り、松尾さんは「去年に比べて（参画企業が）3倍も増えたということで、来年は30倍に！みんなで頑張っていきましょう！せーの、エイエイオー！」と会場の士気を高めた。
ユニークな取り組みが続々。ゴールドを受賞した3社
第2回「はたらく人ファーストアワード」受賞企業は以下。ゴールドを受賞した3団体と、審査員のコメントを抜粋して紹介する。
株式会社フロンティアエデュケーショナルパートナー（埼玉県）
「教育の平準基準に沿ってではなく、本質的に一人ひとりの素質に寄り添った教育を目指されています。御社の『目指せ塾のディズニーランド』というビジョンのとおり、生徒がワクワクやドキドキを持って勉強できる環境を従業員の皆様の声を聞きながら作られている点が、特に素晴らしいと感じました。仕事への考え方や姿勢を見直す『ジョブ・クラフティング』の視点から業務の意味を再構築し、やりがいの創出により働き手の意欲を向上させ、それにより生徒や親からの評価も得られるという好循環も素晴らしいです」（fermata CE0・杉本亜美奈さん）
ネクスキャット株式会社（東京都）
御社は制約上限を超えたリミットレスな働き方を組織改革を軸に体現されていることに強く共感しました。5つの自由（場所・環境・距離感・時間・キャリアプラン）をベースにフルリモートでも日本以外でも円滑に仕事をしている点、情報共有を属人化させずどこにいてもスムーズに仕事を進められる文化が根付いていると感じました。本当に強い組織は『何をやるか』よりも『誰とやるか』を大切にして、社員一人ひとりが安心して力を発揮できるような環境を整えてらっしゃいます。自由と責任を見事に両立されている御社の取り組みは、これからの時代のモデルケースになると思います」（morich 代表取締役・森本千賀子さん）
医療法人社団洛和会（京都府）
「『優しい社会を創造する』というパーパスが素晴らしいと感じました。月に1回のオムツ定期便や孫の誕生時に取れる休暇制度『まごたん』などの特徴的な施策も充実しており、これによって働き手が『この会社に長くいてよかったな』と思えるような独創性があると感じました。また、働き手からの『働きがいはあるけど忙しくて大変』という声を受けて、DX推進に力を入れている点も高く評価させていただきました。働き方改革の進む現代ではありますが、新しいことをすることには少なからずリスクがあり、結果的に横並びになってしまうことも少なくありません。そうした中で働き手の声を聞いて『どんな取り組みが大切なんだろう』と考え、一緒に働き方を作っていく取り組みが素晴らしいと感じました」（コクヨ株式会社 働き方改革PJアドバイザー、SSIN代表、MCEI 理事・坂本崇博さん）
受賞結果を振り返り、ミイダスの後藤さんは「今後も、本アワードを通じて、皆さまの素晴らしい取り組みを発信し続けるとともに、地元地域におけるブランドの確立と浸透に貢献したいと考えています。はたらく人ファーストな企業としてのブランディングをすることで、（各企業の）良い人材の採用力が高まるなど、企業の成長に貢献できるように努めてまいります」と話し、イベントを締め括った。
▼はたらく人ファーストアワード受賞結果はこちら
【Silver 8社】
株式会社風間商事（埼玉県）
株式会社田名部組（青森県）
株式会社ノーブデンス（大阪府）
株式会社キースト（静岡県）
古郡建設株式会社（埼玉県）
株式会社川上測量コンサルタント（福井県）
株式会社山口建設コンサルタント（山口県）
社会福祉法人睦会（青森県）
【Bronze 9社】
・コンパス株式会社（東京都）
・株式会社ぽらりす（東京都）
・株式会社フトゥーロ（東京都）
・株式会社FROM CENTER（埼玉県）
・株式会社つくーる（石川県）
・株式会社ジェミニ設計（和歌山県）
・株式会社スプラウトインベストメント（神奈川県）
・医療法人社団緩和ケアクリニック・恵庭（北海道）
・株式会社東京ベイ潮見ホテルマネジメント（東京都）