芸能人を含むフリーランスへのハラスメント、実態解明へ。アンケート調査をネットで実施中

フリーランス協会の平田麻莉さんは、「フリーランスで働く人を守る法律も何もない」と訴え、アンケート調査への協力を呼びかけました。
プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会

日本俳優連合(理事長・西田敏行)やフリーランス協会などの3団体が、国内で働くフリーランスや芸能関係者のハラスメント被害の実態を調査している。

対象は、日本国内で働いた経験のあるフリーランスの人(芸能事務所に所属している個人事業主を含む)で、8月26日までインターネット上でアンケートを受け付けている。 

8月19日にはアンケート調査の中間報告が公表され、これまでに回答した828人のうち約61%がパワハラ被害、約35%がセクハラ被害を受けていることがわかった。

 

芸能人含むフリーランスへのハラスメント、実態を明らかに

このアンケート調査は、約2600人の俳優や声優が加入する日本俳優連合、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)内で組織されるフリーランス連絡会、フリーランスとして働く人を支援する一般社団法人・プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が共同で実施している。

調査の背景には、2019年5月29日に成立した労働施策総合推進法などの改正案、いわゆる「パワハラ防止法」がある。

改正法案では、パワーハラスメントを初めて定義。企業には、労働者へのハラスメント防止措置を講じることが義務づけられる。

しかし、ハラスメントの被害を受けるのは企業に属する労働者に限った話ではない。衆参両院の付帯決議では、労働法に適用されない就活生やフリーランスへのハラスメントについても、防止策を講じるよう政府に求めることが盛り込まれた。

具体的な防止策は、9月以降に厚生労働省の労働政策審議会で検討される予定だ。

日本俳優連合などの3団体は、アンケート調査を行うことでこれまで不明瞭だったフリーランスへのハラスメントの実態を把握し、適切な防止策が定められるように求めていくという。調査結果は、参考資料として厚労省の同審議会に提出される。 

(左から)フリーランス出版関係者の労働組合「出版ネッツ」の杉村和美さん、プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会の平田麻莉さん、日本俳優連合の森崎めぐみさん
(左から)フリーランス出版関係者の労働組合「出版ネッツ」の杉村和美さん、プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会の平田麻莉さん、日本俳優連合の森崎めぐみさん
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中間報告の内容は?

8月8日時点で、アンケートには828件の回答が集まった。

性別比は男性29.1%、女性69.6%、その他1.3%。もっとも回答者数が多い職種は「俳優(20.8%)」で、次に「編集者、ライター、ジャーナリスト、翻訳者、通訳、校正者(14.4%)」、「声優(13.4%)」とつづく。

ハラスメントの被害状況については、「パワーハラスメントを受けたことがある」と答えた人は60.8%におよび、さらに35.4%が「セクシュアルハラスメントを受けたことがある」と回答した。

俳優や編集者、声優、デザイナー、演奏者など多様な職種から回答が集まっている。一方で、吉本興業の闇営業問題で揺れるお笑い界からの回答はなく、芸人の回答者は「0人」に留まっている。また、モデルの回答者数も少ない。
俳優や編集者、声優、デザイナー、演奏者など多様な職種から回答が集まっている。一方で、吉本興業の闇営業問題で揺れるお笑い界からの回答はなく、芸人の回答者は「0人」に留まっている。また、モデルの回答者数も少ない。
プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会

ハラスメントの内容は「脅迫・名誉棄損・侮辱・酷い暴言などの精神的な攻撃」がもっとも多いという。

他にも、業務上遂行ができないことの強制や過大な要求、経済的な嫌がらせ、仲間はずれ、プライベートの詮索、容姿や年齢へのからかい、身体への接触、暴行など、被害状況は多岐にわたっている。

さらに、「レイプされた(4.5%)」、「性器や自慰行為を見せられた(3.3%)」といった性犯罪にあたるような深刻な被害報告も寄せられたという。

ハラスメントの内容
ハラスメントの内容
プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会

特徴的なのが、ハラスメントを受けた人の4割が、被害にあったことを家族や友人、職場の関係者に相談していないという点だ。

相談ができない理由として、「相談しても解決しないと思った(60%)」「人間関係や仕事に支障が出るかもしれないから(52%)」「仕事がなくなる・キャストから外されるなど不利益を被る恐れがあると思った(43%)」などの回答が集まった。

プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会

フリーランス協会の平田麻莉さんは、ハラスメント被害を受けた人が「泣き寝入り」してしまう理由について、「企業が設けているハラスメントの相談窓口や行政の窓口は『労働者』を対象としており、フリーランスの人が門前払いになってしまうことが往々にしてある」と説明。

ハラスメント防止法ではフリーランスとして働く人は対象外とされるが、アンケートの中間結果では、「防止措置の対象にしてほしい」と答えた人は98.8%にものぼったという。

ハリウッドから始まった「#MeToo」ムーブメントを契機として、日本国内でも芸能関係者からの性被害・ハラスメント告発が相次ぎ、ハラスメントへの問題意識は高まった。

最近では、反社会勢力への闇営業の問題で謹慎中の芸人・宮迫博之さん、田村亮さんが吉本興業社長の「連帯責任で全員クビにするから」発言を告白。「パワハラではないか」と同社に批判が集まり、また、書面で契約書を交わさない体制も問題視された。

平田さんは、「相談窓口も少なく、フリーランスで働く人を守る法律も何もない状態で、弁護士に相談してもとれる措置がないというのが大きな問題です」と訴え、アンケート調査への協力を呼びかけた。

アンケートは8月26日まで実施し、9月10日に厚生労働省に提出される。

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