毎年末恒例の「世界幸福度調査」(米国の世論調査会社ギャラップ・インターナショナルとWINによる共同調査)の結果が発表されました。順位は以下のとおり。
1位 フィジー(92)
2位 コロンビア(87)
3位 フィリピン(84)
4位 メキシコ(82)
5位 ベトナム(77)
6位 カザフスタン(74)
6位 パプアニューギニア(74)
8位 インドネシア(68)
9位 インド(64)
9位 アルゼンチン(64)
9位 オランダ(64)
カッコ内の数字は純粋幸福度(「幸福を感じている人の比率」-「不幸を感じている人の比率」)です。調査は5段階評価で、「5 とても幸せ 4 幸せ 3 幸せでも不幸でもない 2 不幸 1 とても不幸」としており、「5か4を選択した人の割合」から「2か1を選択した人の割合」を差し引いたものが純粋幸福度。
調査対象国は55カ国で、純粋幸福度の平均値は48ポイント。前回は59ポイントだったので、世界の幸福度は20%弱も下がってしまったということでしょうか。
今回の調査で唯一90ポイント以上を獲得した「フィジー」は、前年も1位、その前が2位、その前は1位。直近の4年間で3回も1位を獲得している幸福先進国です。
しかもフィジーの幸福度は世界平均が20%近くも下がっている状況の中、前回の89ポイントから92ポイントへと高めています。
リゾートや空港などに着いた際、フィジー人は音楽で出迎えてくれます
さて、気になる日本を含む主要国の結果はどうだったでしょうか。
18位 日本(54) ※昨年は25位
25位 アメリカ、ロシア(50)
35位 フランス(43)
37位 イギリス、イタリア、韓国(42)
41位 ドイツ(38)
日本は前回の55ポイントから1ポイント下げるも、下げ率が他国に比べて低く、18位と善戦。他の経済先進国のランキングは真ん中から下位あたりと、幸福途上国という結果に。
ちなみに、ワースト3は、以下のとおり。
53位 ウクライナ(8)
54位 イラク(7)
55位 イラン(5)
観光立国フィジーにはオーストラリアやニュージーランドから数多くの観光客がバカンス目的で訪れています
世界三大幸福論の1つを書いたアラン(フランスの哲学者)はこう言っています。
「幸せであることは、他人に対する義務である」
なぜなら、不幸せ、退屈、憂鬱といったよどんだ空気を浄化する必要があるからだとアランは説明しています。普段は、時間を守らなかったり、約束をすっぽかしたりと「テキトー」なフィジー人ですが、幸せである義務に関していえば、世界でいちばん真面目に果たしていることになります。
また、ある研究によれば、幸福度の高い上位10%の人たちの共通点はたったひとつだけ。
それは、「社会との結びつきが強いこと」です。
私はフィジーに移住して11年目になりますが、フィジー人は「つながり」が非常に強い人たちだと感じています。つながりを強化しているのは、フィジー人の「依存力」(甘え上手)なのかもしれません。
日本人は概して、「人様に迷惑をかけてはいけない」という精神が強いと思います。
依頼をするのが苦手。なるべく自分の力で解決しようとします。
一方フィジー人は、人を頼ることが自然です。
先日も、我が家の隣に引っ越してきたばかりのフィジー人(50代の夫婦)から電話がかかってきて、「雨が降ったら、ウチの洗濯物を取り込んでおいてもらえる?」と依頼がありました。
日本人の場合だと、「引っ越してきたばかりで、まだ挨拶程度しか交わしていない相手に、そんな依頼は図々しくてできない」となるのではないでしょうか。
フィジー人は依存し合うことによって、つながりを強化しています。
人は弱いのです。だからつながるのです。
日本人ももう少し、「人様に迷惑をかけてはいけない」という制約を外したほうがいいのかもしれません。
誰かから依頼を受けるということは、自分の存在価値を確認できる機会でもありますし、依頼を受けると、お互い様ということで、次にこちらからも依頼しやすくなります。
社会活動家の湯浅誠さんは言います。
「貧困とは、お金だけでなく、頼れる人間関係もなく、精神的にも疲弊し、自信を失い、自分の尊厳を守れなくなってしまう状態」
フィジー人は経済的には満たされていませんが、人間関係は豊かです。
貧乏だけど貧困ではない。
脚本家の倉本聡さんの言葉を借りれば「貧幸」。
貧しくても幸せなのです。
今年7月から「成田・フィジー間」の直行便が9年ぶりに復活します。
これを機にフィジーを訪問し、フィジー人たちが持つ「幸福の価値観」を体験・インストールしてみてもいいかもしれませんね。