夏の風物詩である花火。6月に入り、コンビニ店やスーパーでも専用コーナーを見かけるようになった。
一方で、花火をしている際に子どもたちがやけどをする事故が相次いでいる。
花火の事故は過去5年間で60件あり、なかには子どものスカートに火花が着火した危険なケースもあった。
花火で遊ぶ際には何に気をつけなければならないのか。関係機関の実験とともに振り返る。
被害者は半数以上が1〜3歳
国民生活センターによると、花火で遊んでいる最中にやけどを負った事故は、2018〜22年度の5年間で60件あった。
そのうち、着衣などに着火した危険なケースも2件あった。
被害者は、1〜3歳の幼児が34件(57%)と半数以上を占めた。
東京消防庁管内でも17〜21年、花火の事故で救急搬送されたケースは22件あり、そのうち14件(64%)が1〜3歳児だったという。
やけどの原因は?1〜3歳は……
60件のうち、やけどの原因は「花火の炎や火の粉、火花」が35件(58%)と最も多く、「燃えかす」が13件(22%)、「ろうそくなど」が4件(7%)だった。
やけどを負った体の部位は、「手・手指」が29件(49%)と最多で、「足・足指」が17件(28%)、「顔面」が5件(8%)などと続いた。
やけどを負った51件(85%)が医療機関にかかっており、34件(57%)が「要通院」となった。
なお、やけどの理由は、「当たった、足に落ちた」が38件(64%)、「触った、握った」が17件(28%)。
1〜3歳児だけでみてみると、「触った、握った」が41%(14件)と、全体に比べて高い割合となった。
「花火をつかんだ」「火花がスカートに」
主な事故事例は次のとおり。
「手持ちの花火が着火した瞬間に驚き、花火を振り回して左腕に花火が張り付いた」(3歳9か月の女児)
「手持ちの吹き出すような花火の火をつかんだ」(1歳6か月の女児)
「花火がサンダルの上に落ちた」(2歳11か月の女児)
「保護者が目を離している隙に、火の粉が左足の靴に移って燃えた」(3歳2か月の女児)
「花火を振り回したところ、直後に風で火花がスカートに飛んで着火し、燃え上がった。火が消えなかったので、服を脱がせた」(6歳8か月の女児)
「線香花火の落ちた球を右手の指で触れた」(7歳2か月の男児)
「花火を捨てる前に先端を握ってしまった」(2歳10か月の男児)
「手持ちの花火が終わって下に落ちていたものを触った」(1歳6か月の男児)
リスクの高い行動は?関係機関が実験
では、どのような状況の時にけがをしやすいのか。
相次ぐ花火の事故を受け、国民生活センターが実験を行っている。
まず、2歳児相当(身長約90センチ)のダミー人形に先端から火が出る「吹出花火」を持たせ、そよ風程度の風を当てると、火花が下半身に降りかかる様子がみられた。
さらに、花火を持った手を約45度あげたところ、腹部などにも火花が散った。
着衣に着火する危険性もある。
しゃがんだダミー人形のスカートの上に花火の燃えかすが落ちると、火が上がった。
花火が消えた後の燃えかすであっても、落下や消火された後しばらくはやけどを負うほどの高温になる。
燃えかすをコンクリートに落下させて温度を計ったところ、「吹出花火」では70度を下回る温度になるまで約40秒かかったという。
気をつけたい4つのポイント
国民生活センターは主に4つの注意点について呼びかけている。
①3歳以下の子どもに花火を持たせることは避ける
②肌の露出が多い服装や履物、裾の広がった服装で花火をしない
③花火で遊ぶ前には消火用の水を用意する
④花火が消えたらすぐに水につける
消火用の水を用意することに加え、水道や水道につながったホースの近くで花火を行うことも重要だ。着衣に着火した場合に、水をかけて消火できる。
また、花火が消えた後も燃えかすの温度は70度を下回るまで時間がかかるため、落下した燃えかすには触らないようにしなければならない。
センターは「向かい風を受けるなど花火の風下に立つと、自分の花火だけでなく他人の花火の火花が接触する可能性がある。花火の風下には立たせないようにしましょう」としている。