目黒虐待死に知事「何とかならなかったのか」東京都、児童相談所と警察の連携強化へ

情報共有を拡大するが、全件共有まではしないという
小池百合子都知事
小池百合子都知事
時事通信社

東京都目黒区で3月、虐待されたとみられる船戸結愛ちゃん(5)が死亡した事件

この事件を受け、小池百合子都知事は6月8日の定例会見で、虐待を疑われる児童の情報について、児童相談所と警察との情報共有を広げる考えを表明した。児童相談所の人員も増加する方針。

小池知事は今回の事件について「何とかならなかったのかという思い。児童相談所が関与していながら、このような痛ましい事件が起きたことは、きわめて残念」と述べた。

結愛ちゃんが亡くなった事件は、以前住んでいた香川県から転居した後、品川児相が対応を検討中に起きた。小池知事は「他県から引っ越してきたケースで、ここからの連携がどうだったのかという点も残る。また、品川児相が出かけたが会えなかったというような不幸が重なったことによって尊い命が奪われた」と話した。

虐待の情報、共有範囲を拡大

都と警視庁は2016年10月、児童虐待の情報共有について協定書を交わした。この中では、身体的虐待を受けた子どもを一時保護し、その後に家庭に戻したケースや、児相所長が必要と判断したケースであれば、情報共有すると定めている。

都家庭支援課によると、現在は一時保護の子どもという範囲だが、今後は在宅で指導措置を受けている家庭の子どもを対象にするなどの共有範囲の拡大を警視庁とともに進めていく方針という。協定書以外でも、警察からの虐待通告などはこれまで通り続くという。

一方で、愛知県や茨城県、高知県で行われている虐待情報の全件共有については、今回は検討しないという。

人員は慢性的不足

人員については、慢性的な不足が続いている。

児童福祉法の改定により、児童福祉司の配置標準は人口4万あたり、1人以上配置することを基本とし、全国平均より虐待対応の発生率が高い場合には、業務量(児童虐待相談対応件数)に応じて上乗せをすることになっている。

都は現在、11カ所の児相で273人の福祉司がいるが、経過期間中の「5万人に1人」という配置基準でも、297人が必要で、24人足りていない。

2016年度に都で対応した相談件数は12494件。10年で約4倍に増えている。

3年間で福祉司など専門職員を113人増やした。警察退職者や現役警察官は27人配置し、非常勤の協力弁護士は45人いるという。

竹中雪与家庭支援課長は「異例の増員をしているが、件数が未曽有のように増えていく。人を増やせば解決するわけではなく、育成にも時間がかかる」といい、今回の事件の対応について「転居した場合の情報提供のあり方、児相に否定的な保護者への対応について課題があった。1回目の訪問では会えなかったが、2回目3回目に、どうやって虐待を受ける子どもを現認すればよかったかについて反省点がある」と話した。

ノートの一文が世の中を動かした

事件を受け、検証チームを5月に立ち上げた都は、増員などについての方針は検証中に進めていく予定だった。今回、急転直下で指示を決めたことについて小池知事は「スピード感が必要だった」と説明。

また、結愛ちゃんが亡くなる前に書いた文章に触れ「大学ノートにつづられた一文が、世の中を動かした。彼女の思いが社会に伝わっている瞬間であると思う」と述べた。

今後、人員増などに関わる予算については、通常の査定とは切り離して優先的に措置を取っていく考えという。

今回の問題点は

小池知事は、結愛ちゃんが亡くなったときの児相の対応について次のように説明した。

「他県から、移ってこられた方が、(指導措置を)解除されていたということから、またゼロから東京都で(対応を)スタートしたというのが、今回の現実。他県との情報共有をどうしていくのか、これはむしろALL JAPANで対応していく必要がある。国のほうでも、この点について対応いただければと思っている」

そのうえで、件数的にも児相のみの対応が難しいこともあり、「子どもが自分で相談することはできない。地域や学校で子どもの異変に気が付くなど、周りで見てあげる必要性がある。地道にやるしかないと思っている。態勢を社会全体で作り直していく必要がある」と話した。

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