人口がどんどん減っていく日本では、労働力不足、消費不足は明白な課題だ。特に地方では、より深刻だ。2014年、民間の有識者による日本創成会議が、「2040年までには896の自体が消滅する」というレポートを出したことで、一気に人口問題に対する不安が広がり、安倍晋三政権が慌てるように、「地方創生」をスローガンに掲げた。
それから5年。多くの地方自治体で、移住計画プロジェクトや地方への企業誘致などが盛んに行われている。
インターネットがあれば、どこでも働けるし、都心にいる必要がない。だから地方への移住は進むー。
そんな風に単純に思われていた時代もあった。だが、どうもうまくいっていない。
ーなぜ移住者は増えないのか?
ーなぜ移住者が定着しないのか?
ーどうやったら地方創生がより進むのか?
そうした課題に、今、″関係人口”という視点でアプローチが始まっている。
総務省によると、関係人口とは、【移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々との多様に関わる人々】。
つまり、その地域にルーツがあったり、過去に住んだことがあったり、現地のおいしい特産品や、ユニークな起業家を支援したり。
地方に生活拠点を移す”移住”でもなく、一時的に訪れる”観光”でもない、より広い「地方との関わり方」を指す。
長崎県五島市は、そうした”関係人口”からのアプローチで新たなプロジェクトを開始。地域課題解決型リモートワーク・プロジェクトと題した「五島ワーケーション・チャレンジ 2020 winter」を開催。参加者約50名を、2020年1月16日(木)から2月16日(日)までの1ヵ月間、冬の五島列島に誘致する。(※募集は2019年11月24日(日)まで)
ハフポストは社会の問題を指摘するだけでなく、その解決策も探るメディアだ。「メディアスポンサー」としてこのプロジェクトを支援し、現地に行って取材をする。それをもとに、関係人口について多角的に報じて、読者と考えていく。読者の方にも応募していただき、ぜひ感想を寄せて欲しい。
今回の「五島ワーケーション・チャレンジ 2020 winter」の舞台となる五島市。国境離島であるにもかかわらず、20代、30代の若い世代を中心に年間の移住者が200人を超え、移住の定着率は84%(過去5年間)に達成しているという。観光客も増えつづけ、2018年1月~12月に五島市を訪れた観光客は、過去最高の24万人になった。
「五島ワーケーション・チャレンジ」は、五島列島のひとつ「福江島」で主に行われる。人口は約3万4000人。五島列島南西部に位置する五島市最大の島だ。
美しい砂浜があり、2018年には世界遺産に登録された潜伏キリシタン関連遺産が注目された。
観光業が閑散期となる冬の時期にあえて来てもらい、都市部からの参加者と地域の人たちが楽しみながら地域課題に取り組めるイベントなどを実施する予定だという。あえて「注目されないシーズン」に来て、地域の”本当の課題”に触れてもらう狙いもあるそうだ。
参加者は、五島にIターンしたオーナーが経営する「SERENDIP HOTEL GOTO(セレンディップ ホテル ゴトウ)」に滞在。日中は、ホテルの1階にある、高速Wi-Fiやオフィス機器が完備されたワークスペースで仕事をし、朝と夜は自由に過ごす。またUIターン者以外の地域の人たちと交流を深めてもらう意向で、滞在費には1日につき1,000円分のタクシーチケットが含まれている。
うろうろするだけで、地域の人たちと出会える。何気ない会話がきっかけで、自分の得意分野を地元に伝える即席の「ワークショップ」を開いてしまった人も、過去にはいるという。そんな風に一度交流してしまえば、離れたあとも、つながっていられる。「関係人口」が増えていく。
今回の企画運営を行っている一般社団法人「みつめる旅」の理事・鈴木円香さんは、こうした偶発性を楽しむ姿勢を「エンジョイ・ハプンスタンス」という言葉で表現している。グローバル化が進み、いままで考えられなかったようなテクノロジーが広まる時代。こうした予期せぬ出来事をうまく受け入れていく人が楽しめるのかもしれない。
地方との新たな関わり方、”関係人口”。移住しなくても、別の場所に居ても、自分のちょっとしたスキルが、地方創生に役立つかもしれない。日本は、先進国の中でもさまざまなチャレンジが求められる「課題先進国」。今後の地方課題解決の一手となるのかー。
「五島ワーケーション・チャレンジ 2020 winter」の申し込みはこちら。