人種差別的な黒人の描き方が批判され、アメリカの動画配信サービスHBO Maxで配信が一時的に停止されていた映画『風と共に去りぬ』。
同映画の配信が、2週間ぶりに再開した。
USAトゥデイによると、再配信にあたって映画への批判や歴史的背景を説明する2つの動画が追加された。
1つ目は、映画の冒頭に加えられた4分26秒の動画で、黒人の映画学者で映画専門チャンネル「ターナー・クラシック・ムービーズ(TCM)」でホストを務めるジャクリーン・スチュワート氏が、映画について説明する。
『風と共に去りぬ』は長年人気を保ち続けてきた一方で、制作発表当時から黒人や奴隷制の描かれ方に対しての懸念や抗議が続いてきた、とスチュワート氏は述べる。
そういった懸念に対し、プロデューサーのデヴィッド O・セルズニック氏は、映画を慎重に描くと約束していたという。しかし、「映画は奴隷制の非道さを伝えることなく、南北戦争前のアメリカ南部を、優雅で美しい世界として描きました」とスチュワート氏は批判している。
また、白人に献身的につくす黒人や愚かな黒人といった、古い偏見に沿った黒人像が描かれており、「郷愁というレンズを通して世界を描こうとしたこの映画は、奴隷制の恐ろしさや人種不平等の歴史を否定している」ともスチュアート氏は述べる。
映画での描かれ方に加えて、黒人俳優たちの受けた人種差別や不平等についてもスチュワート氏は触れている。
黒人を差別する「ジム・クロウ法」により、黒人の俳優たちはアトランタで開催されたプレミア試写会に参加できず、アカデミー賞で助演女優賞を受賞したハティ・マクダニエル氏は、授賞式で白人の共演者と同じ席に座れなかった。
スチュワート氏は「『風と共に去りぬ』は不愉快さや痛みを感じさせる映画だ」と指摘する一方で「それでもハリウッドのクラシック映画をオリジナルの状態で見て、それについて議論することは大切だ」と述べている。
もう一つの動画は、2019年のTCMクラシックフィルムフェスティバルで開催されたトークイベントだ。
歴史家で作家のドナルド・ボーグル氏が司会を務める約1時間のディスカッションで「『風と共に去りぬ』の複雑なレガシー」について議論している。
『風と共に去りぬ』はアカデミー賞を9部門で獲得し長年愛されてきた一方で、奴隷制や南北戦争時代のアメリカ南部を美化するような表現が非難されてきた。
アメリカでジョージ・フロイドさんが白人警察官に首を押さえつけられて亡くなった後に人種差別抗議が世界的に広がり、HBOは6月10日に「『風と共に去りぬ』が民族的、人種的な偏見が描かれており、説明や批判を明記せずに配信するのは、無責任だと感じる」として、配信の一次停止を発表していた。