GMとVentec Life Systemsが組み立てた人工呼吸器が4月16日夜に病院向けに出荷され、週末にかけさらに多くの施設に届けられる見込みだ。米政府が注文した3万台の初回出荷となる。
イリノイ州のシカゴやオリンピア・フィールズにある病院への納入は、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック渦中の1カ月弱前に、何千台もの病院向け人工呼吸器の製造を開始した両社にとってマイルストーンだ。
GMとVentec Life Systemsは人工呼吸器のような呼吸治療製品の製造を増強しようと、3月20日にパートナーシップを発表した。両社は当初、VOCSNと呼ばれるVentecの救命救急用の人工呼吸器の製造にフォーカスしていた。VOCSNは人工呼吸器、酸素濃縮器、咳アシスト、吸引、吸入器として使える多機能のハイエンドデバイスだ。2017年にFDAの承認を得た時のVOCSNは700以上の部品でできていた。
GMは必要な材料が調達可能かどうか、インディアナ州ココモの工場に新たなクリーンルームや生産ラインを建設すればどうなるかを調べた。そしてGMはおおよそ7億5000万ドル(約806億円)かかると見積もった。ここにはエンジンプラントの改造、人工呼吸器を製造するための材料の購入、生産を増強するために必要な作業員1000人の賃金が含まれる、と情報筋は話した。見積もった額のうち25万ドル(約2700万円)はVentec拠出分だ。
トランプ政権は価格に難色を示し、政府との契約は宙に浮いた。トランプ大統領がTwitterを使ってGMとCEOのMary Barra(メアリー・バーラ)氏を批判したが、GMとVentecはなんとか前進させようとした。 そしてトランプはGMに人工呼吸器を製造し、政府との契約を優先するよう大統領令に署名した。GMが人工呼吸器を製造する計画を発表して数時間後のことだ。
攻防にもかかわらず、GMは8月末までに人工呼吸器3万台を製造するという、4億9000万ドル(約530億円)の政府との契約にこぎ着けた。契約では、GMはVOCSN V+Proと呼ばれる400のパーツを使うシンプルバージョンの救命救急人工呼吸器を製造している。より高価で複雑なマシーンは多機能性を備えていた。
GMによると、人工呼吸器製造をスピードアップするために、政府は契約で人工呼吸器としての機能だけを搭載するVOCSNだけを求めている。
製造は今週1シフト制で始まり、加速している。GMの広報担当によると、数週間内に第2シフト、第3シフトを加える計画だ。3シフト制になると従業員1000人超が必要となる。
これまでに10台の人工呼吸器がオリンピア・フィールズにある聖フランシス病院に納入された。もう10台が17日にシカゴのワス・メモリアル病院に納入される見込みだ。3回目の出荷となる34台は18日にゲーリー/シカゴ国際空港にある米緊急事態管理庁に届けられ、そこから最も必要とされているところへ輸送されるとのことだ。
テストが広範に実施されるにつれCOVID-19感染者の数は急激に増えていて、人工呼吸器のニーズは切迫している。症状が軽い人もいれば、重篤な呼吸困難症状で病院に運ばれる人もいる。人工呼吸器の不足により、Ford(フォード)やVolkswagen(フォルクスワーゲン)などの自動車メーカーは人工呼吸器製造を模索することとなった。FordとGE HealthcareはAiron Corpから人工呼吸器デザインのライセンスを取得し、ミシガン工場で7月までに5万台を製造する計画だ。
自動車メーカーはまた、ヘルスケアワーカー用のフェイスマスク、フェイスシールド、電動ファン付き呼吸用保護具も製造している。
2020年4月20日TechCrunch Japan「(GMが米政府と契約した人工呼吸器の初回製造ぶんを出荷)」より転載)
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