警察による黒人への暴力が続くアメリカ。今度はジョージア州アトランタで、黒人男性が保安官代理によって暴力を振るわれる事件が起きた。
被害にあったのは、26歳のロデリック・ウォーカー氏だ。乗っていた車を保安官代理によって停止させられた後、何度も殴打された。
この事件を捜査していたクレイトン郡の保安官事務所は9月13日、ウォーカー氏に対する過剰な武力行使により、保安官代理を解雇したと発表した。
運転していないのにID提示を求められた
ウォーカー氏が殴打される事件が起きたのは、9月11日だ。
現場で撮影された動画には、2人の白人保安官代理がウォーカー氏を地面に押さえつけ、1人がウォーカー氏の頭を激しく殴る様子がうつっている。動画はソーシャルメディアなどで拡散され、怒りが広がっている。
ウォーカー氏の弁護士シーン・ウィリアムズ氏は記者会見で、ウォーカー氏が流血して何度か意識を失ったと説明した。
ウィリアムズ弁護士によると、ウォーカー氏はレンタカーを返却した後、友人の運転する車で自宅に戻る途中だった。
車にはウォーカー氏のガールフレンドと4人の子どもうちの1人が同乗していた。車は、テールライトの故障で保安官代理に停止させられたという。
ツイート「ジョージア州の警察が運転手を停車させ、IDを持っていなかったという理由で乗客に、しかも子どもの目の前で暴力をふるっている」
「一体なぜ、テールライトの故障で殴られなければいけないのでしょう。彼はチョークホールドをかけられて、死にかけるほどひどく殴られました。動画と事件の証拠は、ウォーカー氏が何一つ悪いことをしていないということをはっきりと示しています」とウィリアムズ弁護士は訴える。
ウィリアムズ弁護士はアトランタのテレビ局WSB-TVに、保安官代理は車両を停止させた後に、ウォーカー氏にIDを見せるように求めたと説明している。
ウォーカー氏が自分は運転していないのでIDは持っていないと述べ、なぜID提示を求めるのか。 私は運転していないし、何一つ悪いことはしていない」と聞くと、保安官代理は怒り始めたという。
動画には、殴られるウォーカー氏をみて車の中から「パパ!」と泣き叫ぶ子どもの声や、保安官が「奴が手を噛んだ」と叫ぶ声、さらに横に立っている女性が泣きながら「彼を離してください!息ができないと言っています」と何度も訴える声も記録されている。
逮捕されるべきは保安官だと弁護士らは訴えている
ウォーカー氏は暴行と公務執行妨害の罪で逮捕され、収監された。
弁護士が公開した写真には、刑務所にいるウォーカー氏の左目が大きく腫れた姿がうつっている。
ウォーカー氏はその他の複数件の重罪判決の執行猶予期間であったこととから、保釈は拒否された。
逮捕した際に、保安官代理がウォーカー氏が執行猶予期間中であることを知っていたかどうかは明らかになっていない。保安官事務所が現在この事件について捜査しており、捜査結果はクレイトン郡の地区検察局に送られる審査される。
ウォーカー氏の弁護士は記者会見で「なぜ攻撃された彼が、刑務所に入れられなければいけないのでしょう? 刑務所に入れられるべきは、ウォーカー氏を攻撃した保安官代理です」と述べ、ウォーカー氏の釈放と保安官代理の逮捕を求めた。
また、この出来事は黒人がいかに法執行機関によって不平等に扱われているかを示しており、逮捕はウォーカー氏の法律上、憲法上の権利を侵害していると訴えている。
「ロデリック・ウォーカー氏はクレイトン郡保安官代理による違法な逮捕で、刑務所に入れられています。彼がこの事件でやったこと、もしくは過去の出来事には関係ありません」
「彼の法律上、憲法上の権利を侵害するこの違法逮捕がなければ、彼は刑務所にはいません」
ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆しました。