イスラエル軍による攻撃が100日以上続いているパレスチナ・ガザ地区では、妊婦や新生児たちが、過酷な状況での出産を余儀なくされ、命の危機にさらされている。
人道支援団体によると、多くの人であふれている避難所やテントで出産しなければいけない妊婦がいるほか、病院の保育器を利用できない未熟児が死亡し、食糧不足で新生児が栄養失調に陥っている。
改善されない支援状況
国連安全保障理事会は2023年12月にガザ地区への人道支援を拡大する決議案を採択したものの、状況は改善されていないという。
ハフポストUS版が入手した米政府内部文書によると、イスラエルはガザ北部などへの支援物資搬入を禁じており、人道支援専門家は「状況は悪化している」と指摘している。
バイデン政権やオバマ政権で人道問題に携わった米NGO・難民国際協会のジェレミー・コニンダイク代表は「(人道支援は)わずかな改善があったにせよ……現時点で必要とされる規模にはほど遠い。たとえ改善があったとしても、わずかで脆弱であり、イスラエル軍の軍事行動や政治決定によって、台無しにされる可能性もある」と述べている。
出産に耐えられるのだろうか――妊婦が直面する命の危機
女性や女の子たちを中心とした支援活動行うNGO・CAREによると、ガザでは、女性たちが必要不可欠な生殖医療や産科医療を受けられずにいる。
イスラエルの指示によりガザでは多くの人々が南部に避難したが、CAREのヌール・ベイドゥン氏は、「現在、南部の都市ラファでは妊娠中の患者を1日30~40人収容できる病院は1つしか運営されていない」とハフポストUS版に語った。
ベイドゥン氏によると、この病院では毎日約300〜400人の妊婦や産後の女性、新生児が診察を受けている。しかし手術室が1つしかなく、以前は1日2~3件だった帝王切開の件数は1日20件近くになっているという。
イスラエルによる攻撃で、ガザにある病院のうち半数以上が閉鎖されたと見られている。
CAREは国連人道問題調整事務所のデータをもとに、現在パレスチナ自治区には妊娠している女性が約5万5000人と推定。帝王切開を受けなければならない人の多くが麻酔も衛生的な医療器具もない状態で手術を受けなければならない可能性が高く、傷口の感染症につながることも少なくない、と警鐘を鳴らしている。
CARE中東・北アフリカ地域副代表代行のヒバ・ティビ氏は「陣痛中に女性をサポートする医師、助産師、看護師はいません。女性が出産する際には、鎮痛剤も麻酔も衛生資材もありません」と声明で訴えた。
「出産に耐えられるのだろうか。子どもは助かるのだろうか。他の子どもたちはどうなるのだろうか。これらの問いは、ガザの妊婦や若い母親たちが、この100日間、終わりの見えない現実的な危険に直面していることを示しています」
CAREはガザ市のアル・シファ病院の経営者からの情報として、新生児医療と産科医療不足のために、ガザでは流産が300%増加したと報告している。
さらに、生理用品不足で、女性たちは生理中に非衛生的な布や衣類を使用しなければならず、感染症が増加している。
ベイドゥン氏によると、CAREは生理用品や衛生用品、爪切り、ヘアブラシなどの生活必需品を入れた「尊厳キット」を3500個準備しているものの、エジプトの国境を越えてガザで配布できるかどうかは不明だという。
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は1月17日、スイスで開催中のダボス会議で、ガザの状況について「胸をえぐられるようだ」と述べた。
しかし、アメリカの政府高官がハフポストUS版に提供した国務省の文書によれば、イスラエルによって大規模に破壊されたガザ北部の状況は1月16日の時点でも改善されておらず、イスラエル軍が30万人のパレスチナ人が暮らす北部地域への燃料や医薬品などの物資搬入を拒否しているという。
ハフポストUS版はアメリカのイスラエル大使館に、この文書に対するコメントを求めたものの、現時点での回答はない。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。