東京電力福島第一原発の処理水を一部メディアが「Fukushima water」と英訳していた問題で、福島県が12月21日、「風評や差別を助長する恐れがあり、誠に遺憾」との見解を示していたことがわかった。県幹部が県議会の常任委員会で発言した。
県が踏み込んだ見解を示したのは初めて。この問題は20日の県議会でも取り上げられたが、県は「国や東電に対応を求めていく」と述べるにとどめ、県議から「いつまで国任せなのか」と批判が上がっていた。
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福島県「県民の努力を踏み躙る行為」
県議会などによると、風評・風化戦略担当理事(原子力損害対策担当理事も兼務)の岸孝志氏が21日、企画環境委員会で、「(一部メディアの「Fukushima water」という表記は)本県への差別や風評を助長する恐れがあり、誠に遺憾だ」と発言した。
また、「県民が一丸となって風評払拭へ頑張ってきた努力を踏みにじる行為だ」と述べ、「今後は報道機関とのコミュニケーションをより密にし、風評や差別を助長する恐れがある報道があれば、正確な情報発信に理解が得られるよう粘り強く丁寧に対応していく」と語ったという。
委員会では、委員から「国と東電だけでなく、自分ごととして意識すべき」「毅然とした態度で臨まなければ、報道機関はまたこの表現を繰り返す」といった意見が出ていた。
ハフポストが繰り返し指摘
12月初旬に北海道函館市で起きたイワシ大量死でも、英大衆紙「デイリー・メール」が処理水を絡めて報道したり、「原因はFukushima waterだ」とする投稿がSNSなどで相次いだりし、問題視されていた。
一方、県はこれまでこの問題について見解を示すことはなかった。
20日の県議会12月定例会で自民党の渡辺康平議員が「新たな差別や偏見を生む報道機関の発信に対し、福島県としてどう対応するのか」と迫ったが、県は「国や東電による丁寧な説明を求めていく」と繰り返し述べるにとどめ、議場が一時騒然となった。