福島差別につながる画像、Japan Todayが使用の経緯を回答。魚に放射能標識、「福島の記事に関連」

「オンライン画像マーケットサイト」に、福島への差別や偏見を助長するイメージ画像が出回っている問題。実際に画像を使用したメディアが新たに取材に応じました。【メディアと差別】【福島差別画像】
Japan Todayの記事。魚に放射能標識を重ねた画像を使用している(現在は削除)
Japan Todayの記事。魚に放射能標識を重ねた画像を使用している(現在は削除)
Keita Aimoto

インターネット上で画像の売買ができる「オンライン画像マーケットサイト」に、福島への差別や偏見を助長するイメージ画像が出回っている問題で、実際に同種の画像をダウンロードして使用していたメディアが新たに取材に応じた。

メディアは、外国人向けに日本のニュースを配信する「Japan Today(ジャパントゥデイ)」。EUが福島などの日本産食品にかけていた輸入規制を撤廃したというニュースに、魚が放射能汚染されているかのようなイメージ画像を使用していた。

ハフポスト日本版の取材に、ジャパントゥデイの担当者は「福島の記事に関連するとのことで使用した」と答えている。

福島差別につながる画像とは?Shutterstockは取材に答えず

オンライン画像マーケットサイトでは、個人のクリエイターらが撮影・作成した画像などを購入することができる。その大半は、メディアの記事、Webサイト、ブログ、ソーシャルメディア広告、プレゼンテーションなどで使用できるため、世界中の企業や個人が利用している。

しかし、記者が2月、米ストックフォト大手「Getty images」の「iStock by Getty images」、同「Shutterstock」の「Shutterstock」、米ソフトウェア大手「Adobe Inc.」の「Adobe Stock」の3サイトで、「Fukushima」や「Fukushima fish」などと検索したところ、海や魚、寿司に放射能標識を重ねたり、放射能標識を重ねた水を海に注いだりするような画像が多数表示された。

これらは、福島の海や水産物、食品が放射能汚染されているようにイメージさせ、差別や偏見を助長する恐れがある。そんな画像がなぜ大手のサイトで売買されているのか。

3サイト側に問い合わせたところ、Adobeは「不適切な画像も意図せず掲載され、遺憾に感じている」、Gettyは「不適切なキャプションやタイトル、検索キーワードを更新し、福島や日本に関する記述を削除した」などと回答し、現在は大半の画像が表示されなくなった。

一方、Shutterstock側は「弊社コンプライアンス部に照会する」と繰り返すのみで、いまだに同種の画像が表示されている。

Shutterstockで「Fukushima fish」と検索したら表示される画像。「Fukushima」や「福島」と検索しても同種画像は表示される(記事配信時点)
Shutterstockで「Fukushima fish」と検索したら表示される画像。「Fukushima」や「福島」と検索しても同種画像は表示される(記事配信時点)
Keita Aimoto

福島差別につながる画像を使用したメディア

また、この3サイトから実際に同種の画像をダウンロードし、記事に使用したメディアが複数あることもこれまでの取材で判明した。

例えば、ニューズウィーク日本版は2023年8月25日、「日本から123トンの魚を輸入しているイタリアが報じた福島のALPS処理水海洋放出について」という記事の中で、放射能標識が重なった水を海に注ぐような画像を使用した(現在は差し替え)。

この画像を記事に使用した経緯について、ニューズウィーク日本版ウェブ編集部は2月24日、取材に「福島の処理水放出を批判し、『汚染水』と呼んだ近隣諸国の報道を、中立的な立場で本文に紹介しており、『近隣諸国の中国・韓国からはこの画像のように見られているようだ』という表現のサムネイル(画像)として効果的であると感じた」と回答。

福島の海や魚介類が「放射能で汚染されて危ない」といったイメージを喚起させる意図はなかったとし、「風評被害につながるリスクを否定することはできない」と画像を変更した。

このほか、日本語版ウェブサイトも展開する米デジタルメディア「WIRED」のスペイン語版や、香港の生活情報サイト「U Lifestyle」などでも、処理水に関する記事の中で同種の画像を使用していた。

Japan Today「福島に関連するため使用した」

今回、新たにハフポストの取材に応じた「Japan Today(ジャパントゥデイ)」は23年8月3日、「EU, Norway, Iceland lift post-Fukushima import curbs on Japanese food」という見出しの記事を配信した際、魚に放射能標識を重ねたような画像を使用した。

東京電力福島第一原発の処理水が海洋放出される約20日前のタイミングで出された記事で、この画像はiStockからダウンロードされていた。

なお、iStockのサイト上で画像の説明欄を確認すると、「写真素材 | 福島市、各放射線に関する警告を伴うシーフードと遠くの海魚のバスケット.核の脅威に対する放射性土壌.比喩。核漏れ、環境被害.白い背景」と記載されていた(現在は削除)。

EUなどが福島県産などの日本産食品の輸入規制を完全に撤廃したという上向きのニュースに、なぜ福島の水産物が汚染されているといったイメージを喚起させる画像を使ったのか。

ハフポストが2月19日から複数回問い合わせた結果、4月1日にようやく回答があった。

まず、記事の内容と真逆の印象を与える画像を使用した経緯について尋ねたが、福島の記事に関連するとのことで使用した」とだけ記述し、具体的な回答を避けた。

そもそも福島の記事に関連していれば、放射能汚染された魚のイメージ画像を使用していいのだろうか。福島の農林水産物については放射性物質の検査が実施されており、その結果も県のウェブサイトで公開されている

一方、福島の魚介類が「放射能で汚染されて危ない」といったイメージを喚起させるという指摘については、「ご指摘の通り、福島の魚介類が『放射能で汚染されて危ない』といったイメージを喚起させる恐れがあると判断する」と答えた。

その上で、誤解が生じる可能性があることを考慮した結果、記事と画像を削除したという。

公正・公平な立場で事実を報道する情報サイトとして、処理水の海洋放出はIAEAなどが安全性を確認しており、独自の見解でその安全性に対して相違する見解を持つものではない」とも記述した。

ハフポストは引き続き、取材に応じていないShutterstock側にも問い合わせている。

インターネット上で画像の売買ができる「オンライン画像マーケットサイト」
インターネット上で画像の売買ができる「オンライン画像マーケットサイト」
NurPhoto via NurPhoto via Getty Images

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