エジプトで、約4300万年前に絶滅した4本足のクジラの化石が見つかった。このクジラは、陸と水中の両方で暮らしていた水陸両生のクジラだという。
発見した研究者らはこのクジラにエジプトの死神にちなんだ名前を付けたが、なぜなのか。
謎に包まれた水陸両生のクジラ
水陸両生のクジラは「プロトケティッド(protocetid)」と呼ばれ、始新世に生息していたと考えられている。
今回化石が発見されたのはこれまで知られていなかった種で、8月25日に学術誌「Proceedings of the Royal Society B」で発表された。
水陸両生のプロトケティッドは、クジラの進化の歴史の中でも特にユニークな生き物であり、その多くが今でも謎に包まれている。
しかし研究者たちは、今回みつかった新たな化石がこの謎を解き、クジラが陸上で生きていた時代から、完全に水中に移行する過程を知るヒントになるのでは、と考えている。
研究者の1人、ロバート・W. ボゼネッカー氏は「知られている全てのプロトケティッドのクジラは、発達した前肢と後肢を持っています。これは、体の重さを陸上で支えるためです。しかし体重はかなり重かったはずなので、不器用に体を支えていたと考えられています。アザラシや、アシカのような感じだと考えてみてください」とはハフポストUS版の取材で述べた。
今回発見されたクジラが、他のプロトケティッドのクジラたちと異なるのは、ジャッカルのような鋭い歯を持っている点だ。
エジプトのマンソウラ大学で化石を分析した研究者たちは、発見したクジラを、ジャッカルの頭をもつエジプトの死者の守護神「アヌビス」にちなんで「フィオミケトゥス・アヌビス(Phiomicetus anubis )」と名付けた。
研究者の1人、アブドゥラー・ゴーハル氏は「このクジラは、恐ろしく力強い顎によって様々な獲物を引きちぎることができ、周りの多くの動物にとって死神のような存在だったのでは」とインサイダーに語っている。
獲物を食いちぎる歯を備えた肉食クジラ、と説明すると恐ろしく聞こえるが、研究によれば大人のフィオミケトゥス・アヌビスは体長10フィート(約3メートル)、重さは1300ポンド(約590キログラム)ほどと、中型のプロトケティッドだったと考えられている。
化石は、エジプト西部の砂漠にあるファイユームでみつかった。ここはかつて海だった場所で、1900年代前半に、ドイツの古生物学者のエバーハルト・フラース氏がこの地域で初めてプロトケティッドの化石を発見して以降、多くの人たちがこのクジラの化石を発見している。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。