アメリカ・フロリダ州南部のマナティーベイで7月24日、海水温が38.44℃を記録した。
これは、エバーグレーズ国立公園が設置した水温計測ブイによる数値で、他の計測地点でも37.3℃や36.8℃を記録した。
米国海洋大気庁(NOAA)の科学者ジェフ・マスターズ氏は、この水温について「お風呂の温度だ」とコメントしている。
世界記録を超える海水温
2020年の研究によると、これまでに観測された世界最高の海水温はクウェート湾の37.6 °Cだ。
今回計測された水温はそれよりも高いものの、マスターズ氏によると、マナティーベイは陸地に近く、水中の沈殿物などが測定値に影響を与えている可能性があるため、クウェート湾の水温とは単純な比較はできないという。
地元テレビ局WFLAの気象予報士ジェフ・ベラデリ氏も「水は濁っていて、沈殿物で汚染されています。水の表面が暗い方が、より多くの熱を吸収します」とCNBCに語っている。
海の生態系への悪影響
堆積物に加え、水温の上昇の原因になっているのが、猛暑による気温の上昇や雨や風の不足、強い日差しなどだ。
フロリダを含めたアメリカの南西部では猛暑が続いており、水温の上昇が海洋生物や海の生態系を脅かしている。
NOAAによると、サンゴの中には短期間であれば40℃で耐えられるものもあるものの、通常は23〜29℃の温度が最適とされる。
NPO団体「サンゴ修復基金(CRF)」は、 急速に上昇する水温により、フロリダのサンゴは、深刻な危機に直面していると警鐘を鳴らしている。
CRFのメンバーが10年以上修復に取り組んでいるソンブレロリーフを7月20日に訪れたところ、100%のサンゴが死滅していたという。
ただし、CRFは水温が比較的低い場所では劇的なサンゴの減少は発生していないとして、残るサンゴの保存活動に取り組んでいる。
フロリダ水族館館長で研修主幹のケリ・オニール氏は、サンゴの白化現象や死滅について「熱帯雨林のすべての樹木が枯れてしまうようなものだ」とCNNに語っている。
「これは熱帯雨林の樹木消失の水中版です。熱帯雨林に頼って生きている動物たちはどこに住めばいいのでしょうか?サンゴは同じように、なくてはならない役割を果たしています」
マイアミ大学ローゼンスティール海洋大気地球科学研究所のブライアン・マクノルディ氏によると、フロリダ州マイアミでは43日連続で熱指数(体感温度の指標)が37℃を超えた。これはこれまでより11日長い記録だという。
マクノルディ氏は「この熱波を『前例のない』と表現するのは、控えめすぎる」と述べている。