着るだけで「ボウサイ」に 災害時に応急処置ができるTシャツ「First Aid Shirt」

「日常的に使っているものが防災の一部になれば、社会全体の防災力は、今よりも確実に上がるはずです」

 予期せず発生する地震や台風などの自然災害。2011年の東日本大震災を機に防災意識が高まったといわれるが、時が経つとともに薄れていくのは否めない。「大切なことだと分かっているけど出来ていない」というのが現状ではないだろうか。

「First Aid Shirt」。飽きのこないユニセックスなデザインが特徴だ(写真提供/yamory)
「First Aid Shirt」。飽きのこないユニセックスなデザインが特徴だ(写真提供/yamory)
Asahi

 そんな中、いつでも「ボウサイ」ができるようにと作られたのが「First Aid Shirt」だ。Tシャツを着ているだけで、災害時にはケガの応急処置をすることができる。「yamory(ヤモリ)」の名前で防災事業を手がける(株)R-pro(愛知県名古屋市)が開発した。増産のための開発費やブランドサイト制作のプロモーションを行う資金調達のために、2月26日までクラウドファンディングを実施している。

 「災害に備えて救急キットを持ち歩くのがいちばんでしょうが、なかなかできることではありません。そこで、緊急時に必要な包帯を普段身に付けているTシャツに縫い付けることを考えました」

 こう話すのは、yamoryでイベント企画や商品開発を担当するボウサイディレクター、本多由季さん(28)。First Aid Shirtも彼女のアイデアによるものだ。

yamoryのボウサイディレクター、本多由季さん
yamoryのボウサイディレクター、本多由季さん
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 本多さんが防災について考えるきっかけになったのは、東日本大震災だった。2011年3月11日、旅行先のフランスで見ていたテレビで発生を知った。フランス語はまったくわからなかったが、日本が大変な状況に陥っていることは理解できた。不安な気持ちのまま帰国すると、名古屋の街は震災前と何ら変わらない日常があった。

「震災ボランティアをやろうと思ったのですが、どうしてよいのかもわからず、結局やれずじまいでした。南海トラフ地震も起こるといわれている中で、何か人の役に立つことができないかと考えるようになりました」

 大学卒業後、R-proへ入社してyamoryへ配属。見知らぬ人たち同士で避難所の運営を体験するイベント「SAKAE CAMP」(2013年2月、14年2月)や、初めて出会った人たちと情報収集してミッションをクリアしながらゴールをめざす避難訓練プログラム「[ ] to HOME」(14年3月、15年2月)などに携わり、防災の重要性を訴えてきた。

 2015年には日本赤十字社とともに、学生時代に考えた防災ボードゲーム「いえまですごろく」を共同開発。地震発生後に起こりうる危険やシチュエーションを疑似体験し、防災の知識について学べると注目を集め、数多くのメディアでも採り上げられた。

「すべて共通しているのは、楽しみながら防災意識を高めるということです。ボウサイとカタカナ表記にしているのも、堅苦しくないようにするためです」

Tシャツの裏側に縫い付けてある黄色い糸を切って引き抜く
Tシャツの裏側に縫い付けてある黄色い糸を切って引き抜く
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 First Aid Shirtは、包帯を縫い付けている糸を、あるポイントで切って、引き抜くと、簡単に分離できる。包帯の長さはMサイズが2メートル10センチ。Lサイズは2メートル25センチと、包帯として使うには十分だ。

 救急用具としての機能性はもちろんだが、同じくらいこだわったのは、デザイン。いつも身に付けたくなるような、人に勧めたくなるようなデザインでなければ、多くの人に使ってもらえないからだ。

豊富なカラーバリエーションを用意している(写真提供/yamory)
豊富なカラーバリエーションを用意している(写真提供/yamory)
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 Tシャツのカラーバリエーションは、ホワイトとレッド、ネイビー、ライトブルーの4種類。包帯も白と赤、黒の3色あり、それらを組み合わせた全12種類を用意。たしかに、年齢や性別を問わず、幅広い層に支持されそうなデザインに仕上がっている。

「日常的に使っているものが防災の一部になれば、社会全体の防災力は、今よりも確実に上がるはずです。このFirst Aid Shirtのプロジェクトが実現したら、それを皮切りに、三角巾を縫いつけたアイテムやアウターなどTシャツ以外の商品の開発もしていきたいと思っています」

 クラウドファンディングは2月26日まで。プロジェクトの詳細は、https://a-port.asahi.com/projects/firstaidshirt/

(永谷正樹)

     ◇

 「あなたの日常に防災をプラスする」をテーマに、A-portとWonderFLYが協力してアイデア防災グッズ8件のクラウドファンディングを実施中。A-portの特設ページは、https://a-port.asahi.com/partners/wonderfly/

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