四国を縦断する国道439号。
徳島市から高知県四万十市までの348.9 kmのうち、その大半がすれ違い困難な悪路であることから、「酷道」とも揶揄されている。
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過酷な山中を走る439は、昼間でも通行車両は少なく、ましてや、真っ暗闇と化す夜間に、439を走る車はほとんどいない。
高知県内のとある439。
周囲には人家はない。
街灯もない。
車は一台も通らない。
日が沈む。
夜の帳が降り、暗闇に包まれ始める。
手元さえも見えなくなったころ、国道の上に、無数の黄色く小さいフラッシュライトが
点滅し始める。
無数のヒメボタルたちで、
瞬く間に、国道は、埋め尽くされた。
ヒメボタルは、水辺に生息するゲンジボタルと異なり、陸生のホタルで、森の中に生息する。
発光の感覚は短く、写真を撮ると、光は点となって写る。
ヒメの写真といえば、無数の黄色い小さな点に覆い尽くされた森の幻想的な写真が一般的だ。
だが、ここは違う。
森から溢れてきたヒメたちは、
すぐ横を通る国道にまで降りてくるのだ。
さっきまでの真っ暗闇が嘘のように、
ホタルの点滅で、手元がぼんやりと見えるほどだ。
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ヒメボタルが生息する森は全国にたくさんあるが、
ヒメボタルが乱舞する国道は、そうはないだろう。
もう酷道とは呼ばせない。
ここを、「ホタル国道439号」と名付けようと思う。
なお、ホタル保護の観点から、詳しい撮影場所は控えさせて頂いた。
写真は、いずれも比較明合成と呼ばれる手法で、5〜13枚の写真を合成している。