良質な脂肪をとれば太らない。その理由とは......

大切なのはカロリーの「量」ではなく「質」。
bottle of avocado essential oil with fresh avocado fruit closeup
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tashka2000 via Getty Images

「この食事プランには、ナッツやシード、ココナッツ油にアボカド、それに卵やバターまで含まれていますね。私は脂肪を摂るのが怖いんです。これでは体重が増えてしまわないでしょうか?」。ある患者さんが最近私に訴えてきた言葉だ。

共感できる人は大勢いるだろう。実は私も、育ち盛りの頃には脂肪恐怖症だった。「あらゆるカロリーは同じ」という神話を信じ、とにかく脂肪を摂れば太ると思っていた。

カロリーだけで言えば、それは間違いではない。1グラムあたり脂肪は9カロリーある。炭水化物やたんぱく質は4カロリーだ。だから脂肪の摂取を抑えればカロリー摂取も減り、体重も落ちる。シンプルだ。

しかしこの説は、多くの理由から誤りだ。「全てのカロリーは体重や代謝に同じ影響を与える」と根強く信じられているが、この考えがこそ私たちを太らせ、不健康にしている。

研究室で真空の状態にして燃やすのであれば、カロリーはすべて同じカロリーだ。しかし、人の体は研究室ではない。私たちの体は複雑に絡み合い影響しあう有機体で、何千もの仕事を同時にこなす。

食べ物は体のあらゆるものをコントロールしている。まず、病気を起こしたり抑えたりする遺伝子の発現に関わっている。言い換えれば、人を健康にする遺伝子や病気にする遺伝子のスイッチを、食べ物が動かしているのだ。また、脂肪を蓄えたり、燃やしたりするよう遺伝子に指令を出している。それにホルモンや脳内の化学反応、免疫系、腸内の微生物にも影響を及ぼしている。

しかし、私たちの社会はカロリーの質ではなく量を重視している。たとえば最近アメリカでは、メニューの全ての料理にカロリーを表示するよう義務付けられた。でもこれは、正しく食べ物を選ぶのを難しくする間違った方針だ。例えばシナボンのシナモンロール1個分のカロリーとアボカド1個のカロリーは、ホルモンや代謝、さらには食欲への影響という点で全く異なる。しかし残念ながら、カロリー量重視の古い考え方が未だに主流なのだ。

食べ物は人の代謝に様々な影響を及ぼす。ちょっと口にしただけでも効果がすぐに現れる力の源だ。次の食事を変えることから、健康な生活をスタートできる。

脂肪を摂ると、より多くのカロリーが消費される

国立衛生研究所で、数学的システムと生物学の研究を行っているケビン・ホール氏は、食べる量が同じでも、炭水化物より脂肪の摂取量が多い人のほうが、1日あたり100カロリー以上多く消費することを発見した。1年に換算すると、運動量を増やさずにおよそ10ポンド(約4.5キログラム)体重を減らせる計算になる。

また、より多くの脂肪を摂ると脳の空腹中枢が遮断されることもわかった。良質な脂肪を摂ると、食べ方や味の好み、さらには代謝まで改善されるのだ。

つまり、脂肪はカロリー消費の仕組みに良い作用を与えるのだ。驚いた方もいるだろう。

体重増加の本当の原因が何なのか、私はずっと考えてきた。道行く人々に尋ねれば、食べ過ぎとか、脂肪の摂り過ぎという答えが返ってくるだろう。

だが、アメリカ医学会の学術誌「ジャーナル・オブ・アメリカン・メディカル・アソシエーション」に掲載された論文では、ハーバード大のデビッド・ルドウィグ博士が、全く異なる見解を発表している。

ルドウィグ博士によれば、太る原因は食べ過ぎと運動不足ではない。むしろその逆で、太っているからより食べたくなるし運動もしなくなる。そして脂肪細胞が食べ物を欲しがるため、つい食べ過ぎてしまうのだ。

体重が増えるのは、お腹を空かせた脂肪細胞のせい

太るプロセスはこうだ。

糖分を摂取すると(パンなどの加工された炭水化物も、体内で糖に変わる)インスリンが分泌される。

この時点ではまだ太る心配はない。しかしインスリンは血中の糖を次々に脂肪細胞へ、特に内臓脂肪やお腹回りの脂肪に多く送り込んでくる。これが脳を刺激し、人を食べ物へと駆り立てる。

また、カロリー摂取を抑えて運動をしようとすると、体は飢えへの恐怖から警戒態勢を敷く。疲労を感じさせて運動量を少なくし、省エネモードに入るのだ。その結果、空腹感を覚え、たくさん食べてしまうことになる。

人類の進化の歴史を考えれば、これは当然のプロセスだ。食べ物にありつけるまで代謝を押さえることで、体は死を避けようとする。そうしなければいけない時代も過去にはあった。しかし現代にはあわない。私たちは飽食の時代に生きているのだから。

「食事減らして、運動増やす」減量法では、ほとんどの人はうまくいかない。少しの効果はあっても、リバウンドして元に戻るのがオチだ。

実際、減量してもその後1年間体重を維持できる人は10%にも満たない。お腹をすかせ、疲れた状態で活動するのをいつまでも続けるのはつらい。そして満足に食べられない状態が続くと、体は飢餓モードへと突入する。

そしてさらに驚きの事実がある。ある種の食物を摂ることでも、人は飢餓状態になるのだ。具体的には、砂糖や加工された炭水化物を多く摂ると、体は飢餓状態にあると認識するというのだ。

矛盾したように聞こえるかもしれない。充分なカロリーを摂れているというのに、なぜ体は飢えている時のような反応をするのだろう?

それは、砂糖や加工された炭水化物、その他血糖値を上げる食べ物を摂取すると、脂肪を貯蔵するホルモンであるインスリンの量が急上昇するからだ。そうすると空腹になり、食べ物がほしくなる。そして食べ過ぎるという悪循環に陥るのだ。

高脂肪食品で代謝スピードを上げる

ある実験で、高脂肪の食品を摂ったグループのほうが低脂肪・高炭水化物の食事を摂ったグループより代謝がはるかに速かった。低脂肪・高炭水化物の食事を摂ったグループはインスリン量が急増し、代謝が鈍ったのだ。同じカロリーを摂取しても、高脂肪食品を食べた方が、代謝スピードは上がる。

ルードウィグ博士たちも、高脂肪・低炭水化物食のグループと高炭水化物・低脂肪食のグループを比較する研究を行い、高脂肪のグループの方がよい結果を出した。

ルードウィグ博士たちは、クロスオーバー試験と呼ばれる実験も実施している。前半にグループの半数が高脂肪・低炭水化物食を摂り、残りは低脂肪・高炭水化物食を摂る。そして後半で食事を交代するという実験だ。

この実験だと、食事の種類による代謝の違いを同一人物で確認できるため、食事効果の全体像をより正確に把握し、効果的な食事プランを立てられる。

結果は驚くべきものだった。両グループは、主要栄養素が違う同じカロリーの食事を摂取したが、高脂肪食グループは、低脂肪食グループより1日300カロリーも多く消費していた。また高脂肪グループは、トリグリセリド(中性脂肪の1種)やLDL、PIA-1(血栓や炎症が起こりにくいことを示す)が低下するなど、コレステロール値に大きな改善が見られた。また、インスリン抵抗性や血糖値も大きく改善していた。

研究から、脂肪細胞の活動は食べ物のタイプによって決まるということがわかる。だからこそ、私たちは上質な脂肪を口にするべきなのだ。精製されていない食べ物や血糖値を急上昇させない食品、それに食物繊維を多く含んだ食べ物を摂取しよう。アボカドやココナッツオイル、オリーブオイル、ナッツやシード類、卵といった良質な脂肪は日々の食事に積極的に取り入れてよいのだ。

上質の脂肪を取り入れて、減量や体質改善を目指す食生活を新刊「Eat Fat, Get Thin」に書いた。脂肪に関する間違った考えや偏見を正し、健康な生活を送るためにはどんな脂肪を摂取すればいいのかを紹介している。

ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。

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