Facebookは、マーク・ザッカーバーグCEOが「(iPhoneではなく)Androidだけを使え」と経営陣に命じたとのNew York Timesの報道を否定する声明を発表しました。
先の報道では、ザッカーバーグ氏がアップルのティム・クックCEOの発言に激怒したことがきっかけだと伝えられていましたが、同社はこうした事実関係を否定。Facebook社内では以前からAndroidデバイスの使用を推奨しており、新しい方針ではないとしています。
New York Timesの記事は過去2年間にわたるFacebookのあり方を全般的に批判しており、2016年の大統領選でのロシアの介入や、大統領候補だったトランプ氏による反イスラム発言の容認など多岐にわたった内容でした。今回のFacebookの声明は、それら全ての論点に対して、逐一反論したものです。
そのうち、クック氏の批判にザッカーバーグ氏が激怒して「Androidだけを使え」と命じたとすることへの言及は次のとおりです。
「ティム・クックは一貫して我々のビジネスモデルを批判しており、それにマークが同意していないことは周知の事実です。だから、今さら言う必要はありません。長年にわたって従業員や役員にAndroidの使用を推奨しているのは、世界中で最も人気のあるOSだからです」
とはいえ、約5000万人分の個人情報が無断流用されていたCambridge Analytica(CA)事件が発覚した当時、クック氏とザッカーバーグ氏の間に激しいやり取りが交わされたことは事実です。
クック氏が米MSNCのインタビューにて「わが社にとってプライバシーとは人権であり、市民の自由だ」「我々は顧客を商品と思っていない」としてFacebookを批判した話には続きがあります。
もし、あなたがザッカーバーグと同じ立場にいたら? その質問に、クック氏は「こんな事態にはなってなかったでしょうね」と答え、観衆の爆笑と拍手喝采を浴びていたわけです。
こうしたクック氏の発言に対して、当時のザッカーバーグ氏は痛烈な反論を返しています。
「あの発言は、カネを支払わない人を大切にできないということだと受け取ったよ。それは上っ面もいいところだし、そこに真実はなにもない」
「もしも金持ちだけに限定されないサービスを作りたいなら、人々が恩恵を受けやすいようにしないといけない。誰もがストックホルム症候群(誘拐・監禁の犯人と長時間をともに過ごすことで、犯人に好意や共感を覚えてしまう症状)にかかって、より多額の金を払わせようとする会社に利用者を大切にしていますと納得させられないことが大事だ。馬鹿げたことだと思うから」
巨大かつ多機能で充実したサービスであれば必然的に莫大なコストもかかり、どこかで誰かに何らかのかたちで負担を求めることは避けられません。
そのコストを「高価なデバイスが買える顧客」のみとするか、「対価の支払いで排除せず、広く薄く個人情報を収集」により賄うか。これら2つは相容れにくい両極のビジネスモデルであり、クック氏とザッカーバーグ氏が互いに和解するのは難しそうです。
2018年11月18日Engadget日本版「Facebookが「ザッカーバーグ、アップルのクックCEOに激怒」記事を否定「Androidは前から推奨」」より転載)
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