「いずも」型護衛艦で、アメリカの最新鋭ステルス戦闘機「F35B」が離発着できるかの調査を海上自衛隊が実施していたことが明らかになった。
3月2日の参院予算委員会で、共産党の小池晃氏の質問に小野寺五典防衛相が答えた。
小野寺防衛相は「護衛艦いずもに、F35Bを搭載するか否かは何ら決まっておりません」とした上で、ヘリコプター搭載型護衛艦「ひゅうが」型と「いずも」型について「最新の航空機のうちどのようなものが離発着可能なのかなど、現有艦艇の最大限の潜在能力を把握するために必要な基礎調査を実施している」と表明した。
具体的にはF35Bのほか、無人ヘリ「MQ-8C ファイアスカウト」、無人航空機「RQ-21 ブラックジャック」の離発着ができるか調査しているが、「自衛隊がこれらの機体を導入することを前提としているわけではない」としており、最終的な報告書はまだ作成途上だという。
続けて答弁した、安倍晋三首相は「護衛艦いずもについて、現在保有していない装備について調査研究するのは当然のことだと考えています」と強調した。
毎日新聞によると調査研究は、「いずも型」と「ひゅうが型」計4隻の航空運用能力向上が目的。海上自衛隊が公募し、製造業者のジャパンマリンユナイテッドに2017年度、378万円で委託していた。
■F35Bとは?
F35Bは、最新鋭ステルス戦闘機「F35 ライトニング II」のうち、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)ができるようにしたバージョンのことだ。在日米軍が山口県の岩国基地に配備している。
Responceによると、F35Bは艦上での運用を前提としているため、短距離離陸(STOL)ができる。また、搭載兵器を使い果たしたり、燃料を消費して機体が軽くなった状態では垂直着陸(VTOL)も可能になっている。
短距離離陸も、垂直着陸もできるため「STOVL機」などと称されている。共同通信によると防衛省が既に導入を決めた空軍仕様のF35A戦闘機のうち、一部をB型に変更する案、別に追加購入する案があり、2018年後半に見直す「防衛計画の大綱」に盛り込むことも想定しているという。
■「いずも」と「ひゅうが」とは?
自衛隊が配備する護衛艦「いずも」型は全長248mで、空母のように艦首から艦尾まで続く「全通甲板」を持ち、ヘリコプターを搭載できる。現在、同型護衛艦は「いずも」と「かが」の2隻ある。潜水艦を探知する哨戒ヘリコプターなどを9機運用できる。機関砲を移転するなど甲板を改装すれば、F35Bにも対応できると見られている。
また、コトバンクによると「ひゅうが」型はやや小ぶりで全長197mで、艦首から艦尾まで平らな「全通飛行甲板」は哨戒ヘリ3機の同時発着をほぼ可能とし、艦内の格納庫は最大11機のヘリを収容する。
■政府見解との整合性が焦点に
1988年4月の参議院予算委員会では、竹下内閣の瓦力(かわら・つとむ)防衛庁長官は「憲法第九条第二項で我が国が保持することが禁じられている戦力」について答弁した。
その際に、相手の国土を壊滅するために用いられるICBMや長距離戦略爆撃機などと並んで「攻撃型空母を自衛隊が保有することは許されず」と説明した。
これが政府見解として続いてきただけに、もし「いずも」型や「ひゅうが」型がF35Bを搭載して空母となった場合には整合性を問われることになりそうだ。
中国メディアの環球時報は「いずも」の進水時に「固定翼の戦闘機も搭載可能で、実際には軽空母だ」と主張した上で、「いずもを護衛艦と呼ぶのは、日本の高官が"私人の立場"と言って靖国神社に参拝するのと同じだ」と批判していた。