この地球のほかに、生命が生存できる星が宇宙に存在しているのか。その目安として水の存在が重視されていますが、水があっても地球型の生命が存続できそうにない環境があるとする研究論文が発表されています。
フランス国立科学研究センターに属する微生物多様性の研究者ロペス・ガルシア博士は、イギリスの総合学術雑誌ネイチャーに論文を発表。2016年から2018年にかけてエチオピア・ダナキル砂漠にあるダロル火山を何度か訪れ、無数のサンプルを集めた結果を報告しています。
ダロル火山の付近一帯は食塩泉や酸性泉が湧き、硫黄を含む鉱物や致死性のガスが混ざり合う、世界で最も過酷な環境と呼ばれています。すなわち地球外生命体を探す科学者たちが宇宙に出ることなく、極端な環境下での微生物の存在を確かめられる、擬似的な火星や異世界と見立てられているわけです。
ガルシア博士のチームは、様々な温度や塩分、酸性度の水たまりから古細菌のサンプルを回収したとのこと。古細菌とは細菌とは違った存在であり、高熱・高塩濃度などを好む原核生物の総称。要は、地球上で最も過酷な環境に適した生物群です。
その結果、極度の塩分と強酸性がそろった環境では、どの古細菌も生き延びられなかったそうです。さらに、そうした環境下でも、極小の細胞に似た「バイオモルフ」と呼ばれる生命の偽物が見つかったとのこと。ガルシア博士は、宇宙から探査ロボットが持ち帰った岩石のサンプルの中にこれらが含まれていたなら、研究者たちは生命の痕跡を見つけたと思い込んでしまう危険があると警告しています。
こうした環境下でも生命が発生する可能性が排除されたわけではなく、ただ地球型の生命らしい手がかりを見つけたとしても「解釈に注意を要する」ということです。もしかしたら、我々とは異なる過程や組成で発生し、地球の生命にとっては致死の環境で繁栄している異星人がいるのかもしれません。
2019年11月4日Engadget 日本版「水がある星でも地球外生命体が生きられるとは限らない?微生物学者が研究報告」より転載
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