運動が体に良いとわかってはいても、時間をみつけるのは難しい。そんな人には嬉しいニュースかもしれない。
1日30分体を動かせば、健康を大幅に改善できるという研究結果が医学雑誌『ランセット』で発表された。
この研究によると、一週間に5回、30分運動することで、寿命が伸び心臓病のリスクが減る可能性がある。また、それにより世界で12人に1人の死を防げるという。
カナダのサイモンフレーザー大学を中心にした研究グループが運動量の目安としたのは、「1週間で150分の中等度の有酸素運動をする」というWHOが推奨する運動のガイドライン。
研究者たちは、17カ国13万人の運動量と健康を調べた。
また社会経済的な背景と運動の関係も調べるため、参加者たちを国の経済レベルによって、4グループに分けた。
・高所得国(カナダ、スウェーデン、アラブ首長国連邦)、
・高中所得国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、ポーランド、トルコ、マレーシア、南アフリカ)
・中低所得国(中国、コロンビア、イラン)、
・低所得国(バングラデシュ、インド、パキスタン、ジンバブエ)
研究者たちは、参加者たちの普段の運動量や、運動の種類、頻度を記録した後、6〜9年にわたって参加者の死亡率を調べた。同時に、心臓病と脳卒中による死亡率も詳しく分析した。
その結果、WHOのガイドラインにそった運動、もしくはそれ以上の運動をした人は、しなかった人に比べて大幅に死亡率が低かった。それは、所得の低い国でも変わらなかった。
イギリス心臓病支援基金メディカル副所長のメティン・アヴキリン教授はこの研究について以下のようにコメントしている。
「これまでの研究からも、運動不足が心臓病のリスクを高め、6人に1人の死の原因となっていることがわかっていました」
「今回の研究は、さらにその裏付けとなる結果になりました。定期的な運動は心臓病のリスクを低め、社会経済的な環境が異なる国でも寿命が伸ばす可能性があります」
「西洋の諸国では、毎日の生活が忙しくなる一方で、座りっぱなしの生活をしています。だからこそ、毎日の生活で運動を取り入れることが、これまで以上に大切です」
「また、お金をほとんどかけずにできるので、心臓病の割合が高い低所得の国でも大きな利益があります。運動は健康を改善するだけでなく、生活全体の質をあげます。」
今回、研究者たちが使ったWHOのガイドラインは下記の通り。対象は18〜64歳の大人だ。
1. 1週間で最低150分の中強度の有酸素運動、もしくは75分の強強度の有酸素運動。あるいは中強度と強強度の運動を組み合わせた運動をする。
2. 有酸素運動は、少なくとも10分間継続する。
3. さらに健康効果を上げたい場合は、中強度の有酸素運動を1週間で最低300分、もしくは強強度の有酸素運動を150分する。あるいはそれと同量の中強度と強強度の運動を組み合わせた運動をする。
4. 筋力を高めるためには、主要筋群を使う運動を、1週間に2日以上する
運動の方法としては、一般的なエクササイズだけではなく、レクレーションや移動(ウォーキングや自転車)、仕事、家事、遊び、ゲーム、スポーツなども含まれる。
呼吸循環器や筋肉、骨を健康にするだけでなく、非感染症の疾患とうつのリスクを減らす効果があるという。
1週間に5日、30分の時間をみつけることで、長期的に大きな健康効果が得られるかもしれない。