戦後最大規模の死刑執行、世界に衝撃 非人道的と批判も
オウム真理教元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚ら教団元幹部7人の死刑執行を、海外の主要メディアも速報で伝えた。
地下鉄サリン事件について、英BBCは「治安の良さを誇りにしていた日本にショックを与えた」と伝えた。またAFP通信は「日本の首都機能を麻痺(まひ)させた。人々が空気を求めて地上に出てくる姿はまるで戦場だった」と振り返った。
一方で、死刑という手法には厳しいまなざしも向けられた。
独シュピーゲル電子版は「日本は死刑を堅持する数少ない先進国だ」としたうえで、「アサハラの死は、支持者には殉教と映り、新たな指導者を生みかねない」とする専門家の声を紹介した。
欧州連合(EU)加盟28カ国とアイスランド、ノルウェー、スイスは6日、今回の死刑執行を受けて「被害者やその家族には心から同情し、テロは厳しく非難するが、いかなる状況でも死刑執行には強く反対する。死刑は非人道的、残酷で犯罪の抑止効果もない」などとする共同声明を発表した。そのうえで「同じ価値観を持つ日本には、引き続き死刑制度の廃止を求めていく」とした。
EUは死刑を「基本的人権の侵害」と位置づける。EUによると、欧州で死刑を執行しているのは、ベラルーシだけだ。死刑廃止はEU加盟の条件になっている。加盟交渉中のトルコのエルドアン大統領が2017年、死刑制度復活の可能性に言及したことで、関係が急激に悪化したこともある。
法制度上は死刑があっても、死刑判決を出すのをやめたり、執行を中止していたりしている国もある。
ロシアでは、1996年に当時のエリツィン大統領が、人権擁護機関の欧州評議会に加盟するため、大統領令で死刑執行の猶予を宣言した。プーチン大統領もこれを引き継いだ。2009年には憲法裁判所が各裁判所に死刑判決を出すことを禁じた。
韓国では97年12月、23人に執行したのを最後に死刑は執行されていない。05年には国家人権委員会が死刑制度廃止を勧告した。
今回の死刑執行を伝えた米CNNは、日本の死刑執行室の写真をウェブに掲載。「日本では弁護士や死刑囚の家族に知らせないまま、秘密裏に死刑が執行される」と指摘した。またロイター通信は、「主要7カ国(G7)で死刑制度があるのは日本と米国の2カ国だけだ」と指摘。日本政府の15年の調査で、国民の80・3%が死刑を容認していると示す一方で、日弁連が20年までの死刑廃止を提言していることも報じた。
■98年以降は4人が最多
「午後、面会に行く予定だったのに......」。中川智正死刑囚(55)の一審の弁護人を務めた河原昭文弁護士(岡山弁護士会)は、執行に驚きを隠せなかった。朝、広島拘置所に行った支援者から「面会の受け付けをしたが、会えなかった」と聞かされた。「国会が閉会したら執行されるかもしれない」と思い、17日にも面会を約束していた。「あまりに早かった。残念だ」
戦後最大規模の執行だった。戦前には、社会主義者が弾圧された「大逆(たいぎゃく)事件」で1911年に12人が執行された例はある。48年にはA級戦犯7人が絞首刑になったが、連合国の裁判による死刑だった。現行刑法のもと、法務省が執行を公表するようになった98年以降は4人が最多。刑場が一つという東京拘置所では、午前中だけで松本死刑囚ら3人が立て続けに執行されたことになる。
(朝日新聞デジタル 2018年07月07日 09時31分)