バニラアイスをチョコレートでコーティングしたアイスクリーム、「エスキモー・パイ」。
約100年の歴史があるこのアイスクリームの名称を変更すると、同製品を販売するドレイヤーズ・グランド・アイスクリーム社が発表した。
商品名変更の理由を、同社マーケティング部門トップのエリザベル・マルケス氏は「侮蔑的な名前だったから」と説明する。
「私たちの会社は、人種平等を実現するための取り組みをしています。そしてこの商品の名前が侮蔑的だったと認識しました」
「会社とブランドがお客様の価値観をきちんと反映しているか、私たちは広く見直しました。その結果、名称を変更することにしました」
■きっかけは、チョコとバニラで迷った男の子だった
エスキモーパイの歴史は古く、スミソニアンによると、1920年に菓子店を経営していたクリスチャン・ケント・ネルソン氏がアイディアを思いついた。
きっかけは、お店にきた男の子がチョコレートバーとアイスクリームのどちらを買うか、真剣に悩んでいたことだったという。
男の子は最初アイスクリームを買おうとしたが、チョコレートバーに変更した。ネルソン氏が両方買ったらどうかと勧めると、男の子は「もちろん両方欲しいけれど、5セントしかないんです」と答えたという。
その後ネルソン氏は試行錯誤を重ね、チョコレートを溶かしてアイスクリームにコーティングする方法を考えついた。
できあがったアイスクリームを「エスキモー・パイ」という名付けたのは、ビジネスパートナーのラッセル・ストーヴァー氏だったという。
エスキモーは、イヌイットやユピックなど、ベーリング海峡沿岸からグリーンランド東岸に至る極北地帯に住む先住民を指す言葉だ。
「エスキモー・パイ」という名前には、北の寒さとそこに住む先住民たちを連想させたいという思いが込められていたという。しかし「エスキモー」という言葉は近年、侮蔑的で偏見を助長すると非難されている。
その理由を「この言葉がイヌイット以外の人たちによって作られた言葉であり、『生肉を食べる人たち』という意味があると言われてきたから」とアラスカ・ネイティブ言語センターは説明する。
同センターによると、言語学者たちは最近「エスキモー」は「かんじき(雪上を歩くための靴)を編む」というオジブワ族(北米の先住民)の言葉から由来したと考えているが、それでもカナダやグリーンランドの人たちは「人々」を表す「イヌイット」を好んで使っているという。
■Black Lives Matterは、商品の名前を変えている
黒人男性のジョージ・フロイドさんが警察官に首を押さえつけられて亡くなったことに端を発して広がっている「Black Lives Matter(黒人の命を軽く見るな!)」ムーブメント。
人種差別をなくすよう訴えるこの抗議活動は、偏見を助長するような商品の名前やパッケージを変えるきっかけになっている。
6月17日には、大手食品会社のペプシコが、傘下企業クエーカー・フーズが販売しているパンケーキミックスやシロップ「アント・ジェマイマ」の名前とロゴを変えると発表した。
アント・ジェマイマのロゴは、ミンストレル・ショー(白人が顔を黒く塗って黒人を真似るショー)にちなんでつけられていた。
またコンアグラ・フーズ社も、人種的偏見を助長する可能性があるとして、シロップ「ミセス・バターワース」のパッケージを変更すると発表した。