『エミリー、パリへ行く』ノミネートの影に手厚い接待? ゴールデングローブ賞めぐる批判とは

主催団体のメンバーはパリに招待され、1泊料金が14万円以上もする5つ星ホテル、ペニンシュラパリに2泊していました。
『エミリー、パリへ行く』
『エミリー、パリへ行く』
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エミリー、パリへ行く』がなぜゴールデングローブ賞にノミネートされたのだろう思っていた人にとっては、驚きではなかったかもしれない。

ゴールデングローブ賞を主催する「ハリウッド外国人記者協会(HFPA)」のメンバー約30人が、パリにある『エミリー、パリへ行く』のセットを訪れ、制作会社から手厚い待遇を受けていたとロサンゼルスタイムズが報じた。

メンバーたちがパリに招待されたのはノミネートが発表される1年前の2019年で、1泊料金が1400ドル(約14万7000円)以上もする5つ星ホテル、ペニンシュラパリに2泊した。

また滞在中には番組の撮影地だった縁日博物館を訪れて、記者会見やランチに参加したという。

HFPAのメンバーのひとりはロサンゼルスタイムズに、「我々は王様や女王のように扱われました」と述べている。

ホテル代を払ったのは、2019年当時『エミリー、パリへ行く』を制作していたパラマウントネットワークだという。

選考基準への疑問視

HFPAはメンバーに対して、1プロジェクトにつき、125ドル(約1万3000円)以上の贈り物を受け取ることを禁止している。

公平な立場を保つべきHFPAが、制作会社からの「王様や女王様のような扱い」を受けていたことは、賞の公平性について疑問を投げかける。

2021年のゴールデングローブ賞のノミネートには、すでに当惑や不満の声が上がっていた。

『エミリー、パリへ行く』や歌手シーアの監督作品『ミュージック/Music』がノミネートされた一方で、性暴力とそのトラウマを描いて高い評価を受けたミカエラ・コール監督の『I May Destroy You(原題)』はノミネートされなかった。

また、アカデミー賞主要部門でのノミネートが確実視されているいくつかの黒人監督の映画『ザ・ファイブ・ブラッズ』や『マ・レイニーのブラックボトム』『Judas and the Black Messiah(原題)』も、ほとんどノミネートされなかった。

HFPAのメンバーは90人以下。アカデミー賞を選考する映画芸術科学アカデミーのメンバーが約1万人であることに比べると、かなり少ない。

ロサンゼルスタイムズは「HFPAのメンバーが特別な待遇で言いくるめられ、影響を受けているのは広く認識されていること」と報じている。

また、HFPAのコンサルタント業務を請け負う人物は、「メンバーである外国人ジャーナリストたちはターゲットになりやすい」と、匿名でロサンゼルスタイムズに語っている。

さらに、HFPAはメンバーに対して定期的に支払いをしており、様々な委員会への参加などでメンバーが2020年度に得た報酬は、200万ドル(約2億1000万円)にもなるという。

税の専門家たちの中には、HFPAの行為が国税庁のガイドラインに反していると指摘する人たちもいる。

会員になる権利をめぐる法廷闘争も

HFPAについては近年、会員になる権利を巡る法廷闘争も起きている。

同団体のメンバーになれなかったノルウェー出身の記者のシャスティ・フラー氏が2020年に、HFPAが独占禁止に反しているとして訴訟を起こした。

フラー氏は「HFPAがやっていることは実質的にカルテル行為である上に、同団体には買収の文化や倫理的な衝突が蔓延している」と主張。「メンバーは、暗黙の了解のうちに、映画制作会社や放送局から巨額の報酬を受け取っている」と批判した。

HFPAは不正行為を拒否し、訴訟は11月に却下された。

ロサンゼルスタイムズの取材に対し、HFPAの代表は「法廷でも、調査によっても主張は立証されませんでした。HFPAは昔から何度も、このような批判の矛先になっており、それはHFPAの多様なメンバーに対する無意識の偏見を反映したものです」と述べている。

第78回ゴールデングローブ賞の授賞式は2月28日夜(日本時間3月1日午前)に、ロサンゼルスで開催される。

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。

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