「女性起業家の半数以上が、セクハラ被害の経験がある」。日本のセクハラの実態に関する研究論文が、国際学術誌に掲載

論文はオープンアクセス(無料公開)で全世界へ発信され、早期の実務・政策対策を促進するためのクラウドファンディングが3月1日まで実施されている。

日本のジェンダーギャップ指数(GGI)は、2024年時点で146か国中118位。

経済分野での男女格差が大きいことも指摘されている中、政府は企業における女性管理職比率を2030年までに30%以上にすることを目標として掲げた。こういった女性活躍の推進やジェンダー格差を是正する取り組みは、各領域で進んでいる。

ただ、資金提供やメンタリングを受ける投資家・支援者との権力差により、女性起業家がセクシュアル・ハラスメント(以下、セクハラ)被害を拒否しづらいという実情は根強く、迅速に是正すべき課題となっている。

日本のセクハラの実態を調査した研究論文が、国際学術誌に掲載

過去1年にセクシュアル・ハラスメントを受けた経験がある女性起業家の割合
過去1年にセクシュアル・ハラスメントを受けた経験がある女性起業家の割合
Eirene University

そうした中、Eirene Universityが運営する教育・研究機関「アイリーニ・マネジメント・スクール」のファウンダー・柏野尊徳さんによる、日本の女性起業家が投資家や顧客など複数のステークホルダーから受けているセクハラの実態を調査した研究論文「Sexual Harassment by Multiple Stakeholders in Entrepreneurship: The Case of Japan」が、国際学術誌 Journal of Business Venturing Insights(2025年6月号)に掲載されることが発表された。

本研究では匿名オンライン調査(回答者197人、うち女性起業家105人)を実施し、女性起業家の半数以上(52.4%)が過去1年の間に、複数のステークホルダーからセクハラ被害を受けていることが明らかになったという。

論文はオープンアクセス(無料公開)で全世界に発信され、早期の実務・政策対策を促進するためのクラウドファンディングが3月1日まで実施されている。支援金は主に学術誌へのオープンアクセス費用に充当され、研究成果を世界中の研究者・実務家・政策担当者へ、自由に閲覧可能な形で公開する費用の支援となる。

オープンアクセス化により期待されること

イメージ画像:セクシュアル・ハラスメント
イメージ画像:セクシュアル・ハラスメント
Mary Long via Getty Images

論文をオープン・アクセス化することで、セクハラ防止策を導入・強化するきっかけになることが期待されるほか、法整備や独立機関の設立などの具体的なアクションの促進、次世代の起業家への啓発の推進、さらに他国との比較・長期的追跡調査が可能になる。これにより、包括的な国際的連携や対策の推進につながることが期待されている。

今後の展望として、メディア報道・国際ネットワークへの発信強化や、被害防止と事業成長が両立するエコシステムの構築なども目指していくという。

柏野さんは研究結果について「起業家が置かれている厳しい状況を可視化する重要な一歩です。近年、メディア報道などを通じて社会全体の認知は徐々に高まっていますが、依然として問題は解決しないままです。こうした課題を乗り越えてこそ、国内のビジネス環境が真に持続可能で、イノベーションを生むものになると信じています。本論文のオープンアクセス化により、より多くの方々と知見を共有し、具体的な対策を社会の隅々まで行き渡らせたいと考えています」とコメントを発表。

さらに「ぜひ皆さまのお力をお借りしながら、セクハラ・ゼロの環境を目指して、共に前進していきましょう」と呼びかけた。

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