倒された奴隷商人の銅像跡に、デモに参加した黒人女性の彫刻が置かれる

「この彫刻は私たちが誇れるもので、帰属感を与えてくれます。私たちはここに属しています。どこにもいきません」

イギリス西部の都市ブリストルで、奴隷商人だったエドワード・コルストンの像が人種差別抗議デモ「Black Lives Matter」の参加者によって倒されてから約1カ月。

像があった台座の上に、デモに参加していた黒人女性の彫刻が登場した。

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彫刻のモデルになったのはスタイリストのジェン・レイドさんだ。レイドさんは、コルストンの銅像が引きずり下ろされた後、空になった台座の上で拳を上げて立っている姿を撮影されていた。

彫刻のタイトルは「Surge of Power(ほとばしる力)」。彫刻を作ったアーティストのマーク・クインさんは、仲間とともに彫刻を7月15日の午前5時ごろに台座に据えた。ブリストル市の許可は取っていないという。

ブリストルのマーヴィン・リース市長は、コルストンの像が立っていた台座の使われ方について、協議した上で民主的に決めたいと話していた。

Ben Birchall - PA Images via Getty Images

彫刻が台座に置かれた後、レイドさんは彫刻の前に立って拳を突き上げた。そして、コルストンの像が引きずり下ろされた後に、台座に登って思わず拳を突き上げた時のことを、次のように語った。

「あの時は、身体中に電気が走ったように感じました」

「頭に浮かんだのは、コルストンの手によって亡くなった、奴隷にされた人たちのことでした。彼らに力をあげたいと思いました」

「ジョージ・フロイドさんにも力をあげたかった。不正義や不平等に苦しめられてきた私のような黒人にも力をあげたかった。その全ての人たちに、ほとばしる力をあげたかった」

彫刻「ほとばしる力(ジェン・レイド)」の前で、片手をあげるジョン・レイドさん
彫刻「ほとばしる力(ジェン・レイド)」の前で、片手をあげるジョン・レイドさん
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レイドさんは、こう続ける。

「この銅像は人種の正義と平等を推し進めるために、とても重要です。黒人の命は、いついかなる時も大切なのです」

「この彫刻は私の母のため、娘のため、そして私のような黒人のために闘います。黒人の子ども達が見上げることになるでしょう」

「この彫刻は私たちが誇れるもので、帰属感を与えてくれます。私たちはここに属しています。どこにもいきません」

1895年にブリストルの中心に立てられたコルストンの像は、抗議デモの参加者たちによって6月7日に引きずりおろされた。

そしてブリストルで生まれて、奴隷にされたペロ・ジョーンズさんに敬意を表して名付けられた「ペロの橋」から、川に投げ落とされた。

その後、ブリストル市議会は銅像を水中から引き上げ、Black Lives Matterの抗議デモプラカードと一緒に博物館に展示すると発表した。

クインさんは、Instagramに投稿された写真を見てレイドさんのことを知ったという。彼女の姿を彫刻にしたいと思い、ソーシャルメディアでレイドさんに連絡を取った。

「最初に頭に浮かんだのは、彼女の彫刻を作ったら素晴らしいだろうということでした」とクインさんは話す。

「このとても力強いイメージを形にして、永遠に残さなくちゃいけないと感じました。ソーシャルメディアでジェンにコンタクトを取り、彫刻のアイディアを相談しました。彼女は協力したいと言ってくれました」

「今の社会が直面しているもう一つのウイルスである人種差別と闘うために、エドワード・コルストンの台座が彫刻を置くのにふさわしい場所のように思えました」

クインさんにとって、彫刻はレイドさんの考えと経験を「体現し、拡大するもの」だという。クインさんはまた、彫刻が“恒久的な解決”としてここに置かれるわけではないと考えている。 

「私たちは、全ての人たちが考えなければいけない問題である、制度化されシステム化された人種差別に光を当て続けたいと思っています」

ハフポストUK版の記事を翻訳しました。

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