「私、みんなに愛されたかったんですよね」
野邉まほろさん
まほろさんがイベントで漏らした一言が刺さった。
6年間摂食障害に苦しんだ経験を持つ彼女が、やせていたかった理由のひとつだ。
私にも心当たりがある。
みんなにもっとかわいいって言われたいから、やせたい。
細くなれば人気で「モテてる」あの子みたいになれるかも。
たぶんあの頃の私も、今摂食障害を抱えるあなたも、最初はそんな望みや期待がきっかけだったのかもしれない。
でも、いつのまにか「やせて」いないことで、自分の価値がなくなっちゃうんじゃないかって、みんなに嫌われちゃうんじゃないかって気がしてこわくなってるんじゃないかな。
でもちょっと待って。少し考えてみてほしいことがある。
やせてほめられる→それって「モテてる」の?
今のあなたやちょっと昔のあなたは、街を歩くと「ほそーい」って言われたかもしれない。学校では「いいなー」って羨ましがられたかもしれない。
だからこそ、たくさん食べちゃったあとは泣きたくて吐き出したくてたまらなくなるんだよね。
でも思い出してみて。そんなふうにほめられて本当に嬉しかった? 心から満足できた?
「私、体重減っても、ちっとも自分のことが好きになれなかったんですよ」
摂食障害に悩んでいたときのことを、まほろさんはこう話してた。
やせることで自分を好きになれるはずだったのに、どうして嫌な自分のままなんだろう?
気付いてるかもしれないけれど、「やせてるねー」っていうあの声は、すっごくつらい思いをして必死に努力したあなたをほめているわけじゃない。周りに合わせて作った見た目が評価されただけ。
どんなにやせても不安なのは、外見だけで判断されているな、本当の自分ってからっぽだな、イケてないなあって心のどこかで感じちゃうから。
みんなの望む「自分」を作っても満足できなかった。
クラスの子の目や周りの評価に心や体を合わせても「愛され」なかった。
じゃあ、イケてる自分にはどうやったらなれるんだろう。
あの子みたいにやせてる私=イケてる。じゃない!
「こんな私はもういや。どうしたら治りますか?」
イベントの後、たくさんの女の子に聞かれた。みんな目にいっぱい涙をためてた。
「将来のことよりも毎日のご飯がこわい」って、「食べ物以外のことが考えられない」って泣きながらそっと教えてくれた。
摂食障害になると「今の自分」のことしか見えなくなっちゃうよね。
「〇〇になりたい」なんて考えてる余裕ない。
でも、イケてる自分を見つけるには、人に「どうしよう」って聞くより、自分に「どうしたい?」って話しかけてみなきゃわからない。
まほろさんは「イケてる自分になりたい」といって、ほんのちょっと勇気を出した。
食事や体重にこだわるのをとりあえずお休みして、ネイルだったり、ファッションだったり、自分が「幸せ」って感じられることをしてみた。これが、まほろさんなりの「イケてる」自分に近づく手段だった。
自分だけの「幸せ」を見つけることって、逃げや甘えじゃない。
「私にはやせてる体しかないのに」「摂食障害しかないのに」って感じるときがあると思う。私もずっとそう思い込んで、息苦しかった。
でも信じてほしい。そんなことは絶対にない。ただ今は見つけにくくなっちゃってるだけ。
人に決めてもらったほうがラクだけど。
「どんな自分になりたい?」なんて考えるのって意外と難しいし、ちょっと怖くもある。
人に決めてもらったほうがラク、ってなることもあると思う。
でも、SNSやクラスの人たちが口にする「評価」や「理想」ってものすごく不確かだ。
しかも所属しているグループや、時代、人によってころころ変わる。
正しいとか間違っているかを決めるのもムリだ。
だから、そんなよくわからないものをあなたの「イケてる」基準にしなくていい。
どんなあなたになりたいのかは、あなた自身で決めていい。
みんなのいう「イケてる」と私の「イケてる」は違うんだ、これが私の生き方なんだって思えるようになったらすごい。
「私は私でしかないんだ」って気付いたとき、初めて満足できる自分になれるんだと思う。
つらいときは「助けて!」っていおう
とはいってもいきなり勇気なんてでない。周りの目だって気になっちゃうよね。
特に摂食障害の症状のことってなかなか他の人に伝え辛いし、言ってもわかってもらえないことのほうが多い。だから一人で抱え込みやすい。
でも、だからこそ大切なのは誰かに「助けて!」って伝えることだと思うんだ。
もちろん友達とかに話して「嫌われたくない!」って思うのもわかるし、実際嫌われることもある。あなたのつらさを本当に理解してくれる人なんていない。
何より「イケてない」自分を見せるのって恥ずかしいよね。
でも、ダメな時のあなたを見ても一緒にいてくれる人がいると、生きるのがちょっとラクになる。
自分のことを伝えると、あなたが大変そうなときに助けてくれたり、ひとりになりたいって思っているときにそっとしておいてくれたりする人も増える。
もし話してみて「しんどい」って言われたら、その人から距離を置けばいいし、嫌なことされたらその人からは迷わず逃げよう。たぶんそういう人たちは、あなたが摂食障害じゃなくてもきっとあなたを傷つける。
あなたのことが大好きな人たちは、あなたのことをもっと知りたいと思ってるんだよ。
摂食障害を手放して、自分に向き合うのには時間がかかる。
もちろん、ひとりでじっくり自分と付き合う日も必要だ。
ただ、自分の弱さを出すことで、寄り添ってくれる誰かがいることで、前に進めることもある。
だから、つらいときには「助けて!」っていってみよう。
ラクになるために、ちょっと勇気を出してみよう。
ちょっとずつでいい、使える手段を全部使っていろんなしがらみから解放されてみませんか?
今は不安かもしれない。
でも、いろんなものから自由になったとき、最高にイケてるあなたになれるって思うんだ。
イベント登壇者の大瀧彩乃さんと野邉まほろさん
ハフポスト日本版では、「女性のカラダについてもっとオープンに話せる社会になって欲しい」という思いから、『Ladies Be Open』を立ち上げました。
女性のカラダはデリケートで、一人ひとりがみんな違う。だからこそ、その声を形にしたい。そして、みんなが話しやすい空気や会話できる場所を創っていきたいと思っています。
みなさんの「女性のカラダ」に関する体験や思いを聞かせてください。 ハッシュタグ #ladiesbeopen#もっと話そうカラダのこと も用意しました。 メールもお待ちしています。⇒ladiesbeopen@huffingtonpost.jp